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プルトン・バルバストル様。国内有数の公爵位を持ち、国王陛下の信頼も厚く、たとえ王子殿下であっても簡単には口出しできないほどの御方。
私の虫除けにはこれ以上ないお相手であることには間違いないけれど、家格も違ければ歳も離れている。
たまにお顔を拝見することはあれど、このように面と向かって話をするのはもちろん初めてだった。
公爵邸はうちとは比べるまでもないほど広く壮麗なお邸で、その応接室も、家具や調度品は古いながらもよく手入れを施されていた。豪華絢爛というわけではないけれど、どしりと構え、どこか厳格な雰囲気を感じさせる。
アリスの紹介とはいえ、こんな小娘が1人で乗り込んだところで相手にされないかもしれないと不安もあったが、予想外にもすんなりとこの部屋へ通され、渋みのあるお茶をすすりながら、家具以上に重圧を放つ邸の主と対面することが叶ったわけだ。
こほっこほっと乾いた咳をして、失礼、と澄ました顔には疲れが見える。
私は速まる鼓動を手で抑え、ここへ来る前に言われたアリスの言葉を思い出した。
”好きだなんだという色感情は無視なさい。これはビジネスよ、ビジネス。”
呼吸を整えながら、頭の中で繰り返す。愛の告白ではないわ、ビジネスよ、ビジネス。
「公爵閣下、面会の機会を頂き感謝申し上げます。私はフローラ・アルヴィエと申します。」
ひび割れた薄い唇が静かに開き、重々しい低音が空気を振るわせる。
「私に面会というのも珍しいことですし、次期王子妃となられるレディ・アリスの紹介ですから。それで、何か重要なお話でもおありですかな、レディ・フローラ?」
重厚な声で名を呼ばれ、心臓が飛び出しそうになったのを必死でこらえる。落ち着いて、私の心臓、これはビジネスよビジネス。
「面会が、珍しいのですか?」
どうにか絞り出した言葉に、閣下は表情を変えることなく頷いた。
「アルヴィエ家のお嬢さんであれば、私の噂も御存知でしょう。好ましい呼ばれ方をしていないことも。」
死神公爵の異名のことだろうか。
私も詳しくは知らないが、この異名は、公爵夫人が公爵と結婚したことで呪いにかかり死んでしまったことから、そう呼ばれるようになったと聞いたことがあった。
呪いなどバカバカしい。信じている貴族たちの方がよほど変だ。
もし呪いなんてものが本当にあったら、幼馴染の男尊女卑丸出し男爵令息はとっくの子供の頃に死んでいる。
10歳のアリスが「呪い袋を買ってみたわ。」と笑顔で見せてきて、笑顔で男爵令息に渡していた。お守りよ、と。だが奴は今ものうのうとメイドにちょっかいを出しているに違いない。
「噂というものはあてになりません。9割嘘か、誇張されて事実が捻じ曲げられたものですから。」
心なしか、閣下の瞼が僅かに持ち上がったように見えた。
「では、どのような御用がおありで?」
私はなるべく堂々と胸を張り、真っ直ぐに閣下の黒い瞳を見つめた。頭の中でアリスの言葉を呪文のように唱える。
「不躾ではございますが、単刀直入に申し上げます。後継者にお困りではございませんか?」
今は亡き公爵夫人と閣下の間には子がいない。今のところ養子を迎えていない事も調査済み。閣下は御年43歳。公爵位を引き継ぐ後継者が必要不可欠なはずだ。
「それについて、私が貴女に話す必要が?」
閣下は眉1つ動かさない。
けれど、私もここまで来て引くつもりは毛頭ない。これはアリスと王子の間に波風を立てない為の妙策なのだ。
「私が産んで差し上げます。」
覚悟を決めて言い放った。はっきりと、こんな恥ずかしいことを訊き返されることのないように。
だが、こんな言葉を聞けば困惑するのも当然だ。だから少しくらいの沈黙には耐えられる。震える手でカップの取っ手を摘み、苦いお茶を啜って、またテーブルに戻す。その間の沈黙くらい、なんてことはない。
「それは、どういう意味でしょう。」
表情を崩さない閣下に負けじと、私も懸命に心を落ち着かせなければならなかった。
「言葉の通りです。私と結婚して頂けませんか?いえ、お嫌だと仰るのなら恋人のふりでも構いません。そのかわり、私が閣下のお子を産んで差し上げます!」
閣下は軽く握った拳を顎に充て、首を僅かに傾けた。左右に分けた真っ黒な重たい前髪がゆらりと揺れる。
「目的は?」
怒鳴られても仕方のない無礼な申し出をしたにも関わらず、閣下は相変わらず落ち着いている。その様子がアリスと重なり、おかげで余計な力が抜けた気がした。
「お話し致します。」
王子殿下の顔を思い出すと、自然とため息が出る。
「マーセル王子殿下のことなのです。私は殿下の婚約者であるアリス・ブロンドーと、子供の頃から仲良くさせてもらっているのですが、少し困ったことになりまして。」
その、と言葉に詰まった。故意ではなかったにせよ、やはりどこか後ろめたい。
「これは…ここだけの話にして頂きたいのですが…。」
「分かりました、決して口外しないとお約束しましょう。続けてください。」
「実は…どうやら殿下が、私に心を寄せていらっしゃるようなのです。」
ちらりと閣下を伺うがその表情は相も変わらない。静かに耳を傾けている。
「まさか婚約破棄なんことはなさらないと思いますが、アリスも良い気分ではないでしょうし、それに、アリスの親友としては、彼女だけを大切にして欲しいという思いもあります。変な噂が立っては、私も殿下もアリスも、皆が名誉に傷を負うはめになるでしょう。」
そうなる前に、と一拍置いて、咳払いを挟んだ。
「殿下には私のことを諦めてもらいたいのです。ぜひお力添え頂けませんか?」
「なるほど。」
閣下の細い指先で顎を撫でる仕草に、つい見入ってしまう色っぽさがある。
思いのほか真摯に聞いてくれる様子に多少安堵するものの、断られたらどうしようという不安は募るばかりだ。こちらのカードは多くはないし、決して強くもない。
こんなに若くて可愛い嫁を貰えるのよ、喜ばない男はいないわ。アリスはそう言ってくれたが、これで拒絶されたらショックで立ち直れる気がしない。
もし良い返事が貰えなかったら、お父様に頼んで領地に引きこもらせてもらおうと決めていた。それがアリスの為にできる私なりの応援だった。
閣下の口が開いた。
「事情は分かりました。ただ、殿下への牽制役として、私では不適切かと思います。」
「そんなことはありません!」
咄嗟に首を横に振る。
「中途半端な御方では、きっと殿下を諦めさせる抑止力としては足りないでしょう。その点、閣下には殿下も強く出られませんよね?認めざるを得なくなるはずです。」
「そうでしょうか。私と貴女では、誰の目にも不自然に映ると思いますが。」
至極真っ当な意見だが、私のハートにはひびが入った。割れずに済んだのは、これはビジネスと何度も頭の中で唱えたおかげかもしれない。
閣下は顔が良いばかりでなく、とても優しい人なのだろう。がくりと項垂れた私を心配するように、レディ・フローラ?と声をかけてくれた。
私の膝に置いた手が力無く震えた。でも大丈夫。まだハートはブレイクしていない。
親友の為ですもの。砕け散るまで当たってみせるわ。
「私などでは、閣下に釣り合わないことは重々承知しております…。」
閣下は首を傾ける。
「それでも、並んで恥ずかしくない淑女になれるよう、精いっぱい努力致します。この身も心も、閣下に捧げる覚悟はできています。」
「待ってください。」
鉄仮面だった閣下の表情が初めて崩れた。眉をしかめ、片手で頭を支えながらふぅと息を吐く。
「そういう意味で言ったのではありません。」
今度は私が首を傾げた。
「貴女が劣っているという意味ではありません。逆です。貴女ほど若くて可愛らしい方が、こんな死神と呼ばれる年配者に嫁ぐということが不自然ではないかと言っているのです。」
可愛らしい。
「それに、先ほど名誉に傷が付くことを避けたいと述べていたのに、私と恋仲、しいては結婚ともなれば、それなりに良からぬ噂が立つことが予測されます。矛盾してはいませんか?」
私は勝手に上がる口角を手で抑え、視線を横に逸らした。
「…なぜ顔を赤らめているのです?」
「…可愛らしいと、仰って頂けた、ので。」
「貴女ほどのレディなら言われて慣れているのでは?」
「そんなことはありません。」
他の誰にそう言われようが、こんなにときめいたことは無かった。
暫しの沈黙。顔の熱がなかなか引かず、手で軽く顔を扇いだ。
私の虫除けにはこれ以上ないお相手であることには間違いないけれど、家格も違ければ歳も離れている。
たまにお顔を拝見することはあれど、このように面と向かって話をするのはもちろん初めてだった。
公爵邸はうちとは比べるまでもないほど広く壮麗なお邸で、その応接室も、家具や調度品は古いながらもよく手入れを施されていた。豪華絢爛というわけではないけれど、どしりと構え、どこか厳格な雰囲気を感じさせる。
アリスの紹介とはいえ、こんな小娘が1人で乗り込んだところで相手にされないかもしれないと不安もあったが、予想外にもすんなりとこの部屋へ通され、渋みのあるお茶をすすりながら、家具以上に重圧を放つ邸の主と対面することが叶ったわけだ。
こほっこほっと乾いた咳をして、失礼、と澄ました顔には疲れが見える。
私は速まる鼓動を手で抑え、ここへ来る前に言われたアリスの言葉を思い出した。
”好きだなんだという色感情は無視なさい。これはビジネスよ、ビジネス。”
呼吸を整えながら、頭の中で繰り返す。愛の告白ではないわ、ビジネスよ、ビジネス。
「公爵閣下、面会の機会を頂き感謝申し上げます。私はフローラ・アルヴィエと申します。」
ひび割れた薄い唇が静かに開き、重々しい低音が空気を振るわせる。
「私に面会というのも珍しいことですし、次期王子妃となられるレディ・アリスの紹介ですから。それで、何か重要なお話でもおありですかな、レディ・フローラ?」
重厚な声で名を呼ばれ、心臓が飛び出しそうになったのを必死でこらえる。落ち着いて、私の心臓、これはビジネスよビジネス。
「面会が、珍しいのですか?」
どうにか絞り出した言葉に、閣下は表情を変えることなく頷いた。
「アルヴィエ家のお嬢さんであれば、私の噂も御存知でしょう。好ましい呼ばれ方をしていないことも。」
死神公爵の異名のことだろうか。
私も詳しくは知らないが、この異名は、公爵夫人が公爵と結婚したことで呪いにかかり死んでしまったことから、そう呼ばれるようになったと聞いたことがあった。
呪いなどバカバカしい。信じている貴族たちの方がよほど変だ。
もし呪いなんてものが本当にあったら、幼馴染の男尊女卑丸出し男爵令息はとっくの子供の頃に死んでいる。
10歳のアリスが「呪い袋を買ってみたわ。」と笑顔で見せてきて、笑顔で男爵令息に渡していた。お守りよ、と。だが奴は今ものうのうとメイドにちょっかいを出しているに違いない。
「噂というものはあてになりません。9割嘘か、誇張されて事実が捻じ曲げられたものですから。」
心なしか、閣下の瞼が僅かに持ち上がったように見えた。
「では、どのような御用がおありで?」
私はなるべく堂々と胸を張り、真っ直ぐに閣下の黒い瞳を見つめた。頭の中でアリスの言葉を呪文のように唱える。
「不躾ではございますが、単刀直入に申し上げます。後継者にお困りではございませんか?」
今は亡き公爵夫人と閣下の間には子がいない。今のところ養子を迎えていない事も調査済み。閣下は御年43歳。公爵位を引き継ぐ後継者が必要不可欠なはずだ。
「それについて、私が貴女に話す必要が?」
閣下は眉1つ動かさない。
けれど、私もここまで来て引くつもりは毛頭ない。これはアリスと王子の間に波風を立てない為の妙策なのだ。
「私が産んで差し上げます。」
覚悟を決めて言い放った。はっきりと、こんな恥ずかしいことを訊き返されることのないように。
だが、こんな言葉を聞けば困惑するのも当然だ。だから少しくらいの沈黙には耐えられる。震える手でカップの取っ手を摘み、苦いお茶を啜って、またテーブルに戻す。その間の沈黙くらい、なんてことはない。
「それは、どういう意味でしょう。」
表情を崩さない閣下に負けじと、私も懸命に心を落ち着かせなければならなかった。
「言葉の通りです。私と結婚して頂けませんか?いえ、お嫌だと仰るのなら恋人のふりでも構いません。そのかわり、私が閣下のお子を産んで差し上げます!」
閣下は軽く握った拳を顎に充て、首を僅かに傾けた。左右に分けた真っ黒な重たい前髪がゆらりと揺れる。
「目的は?」
怒鳴られても仕方のない無礼な申し出をしたにも関わらず、閣下は相変わらず落ち着いている。その様子がアリスと重なり、おかげで余計な力が抜けた気がした。
「お話し致します。」
王子殿下の顔を思い出すと、自然とため息が出る。
「マーセル王子殿下のことなのです。私は殿下の婚約者であるアリス・ブロンドーと、子供の頃から仲良くさせてもらっているのですが、少し困ったことになりまして。」
その、と言葉に詰まった。故意ではなかったにせよ、やはりどこか後ろめたい。
「これは…ここだけの話にして頂きたいのですが…。」
「分かりました、決して口外しないとお約束しましょう。続けてください。」
「実は…どうやら殿下が、私に心を寄せていらっしゃるようなのです。」
ちらりと閣下を伺うがその表情は相も変わらない。静かに耳を傾けている。
「まさか婚約破棄なんことはなさらないと思いますが、アリスも良い気分ではないでしょうし、それに、アリスの親友としては、彼女だけを大切にして欲しいという思いもあります。変な噂が立っては、私も殿下もアリスも、皆が名誉に傷を負うはめになるでしょう。」
そうなる前に、と一拍置いて、咳払いを挟んだ。
「殿下には私のことを諦めてもらいたいのです。ぜひお力添え頂けませんか?」
「なるほど。」
閣下の細い指先で顎を撫でる仕草に、つい見入ってしまう色っぽさがある。
思いのほか真摯に聞いてくれる様子に多少安堵するものの、断られたらどうしようという不安は募るばかりだ。こちらのカードは多くはないし、決して強くもない。
こんなに若くて可愛い嫁を貰えるのよ、喜ばない男はいないわ。アリスはそう言ってくれたが、これで拒絶されたらショックで立ち直れる気がしない。
もし良い返事が貰えなかったら、お父様に頼んで領地に引きこもらせてもらおうと決めていた。それがアリスの為にできる私なりの応援だった。
閣下の口が開いた。
「事情は分かりました。ただ、殿下への牽制役として、私では不適切かと思います。」
「そんなことはありません!」
咄嗟に首を横に振る。
「中途半端な御方では、きっと殿下を諦めさせる抑止力としては足りないでしょう。その点、閣下には殿下も強く出られませんよね?認めざるを得なくなるはずです。」
「そうでしょうか。私と貴女では、誰の目にも不自然に映ると思いますが。」
至極真っ当な意見だが、私のハートにはひびが入った。割れずに済んだのは、これはビジネスと何度も頭の中で唱えたおかげかもしれない。
閣下は顔が良いばかりでなく、とても優しい人なのだろう。がくりと項垂れた私を心配するように、レディ・フローラ?と声をかけてくれた。
私の膝に置いた手が力無く震えた。でも大丈夫。まだハートはブレイクしていない。
親友の為ですもの。砕け散るまで当たってみせるわ。
「私などでは、閣下に釣り合わないことは重々承知しております…。」
閣下は首を傾ける。
「それでも、並んで恥ずかしくない淑女になれるよう、精いっぱい努力致します。この身も心も、閣下に捧げる覚悟はできています。」
「待ってください。」
鉄仮面だった閣下の表情が初めて崩れた。眉をしかめ、片手で頭を支えながらふぅと息を吐く。
「そういう意味で言ったのではありません。」
今度は私が首を傾げた。
「貴女が劣っているという意味ではありません。逆です。貴女ほど若くて可愛らしい方が、こんな死神と呼ばれる年配者に嫁ぐということが不自然ではないかと言っているのです。」
可愛らしい。
「それに、先ほど名誉に傷が付くことを避けたいと述べていたのに、私と恋仲、しいては結婚ともなれば、それなりに良からぬ噂が立つことが予測されます。矛盾してはいませんか?」
私は勝手に上がる口角を手で抑え、視線を横に逸らした。
「…なぜ顔を赤らめているのです?」
「…可愛らしいと、仰って頂けた、ので。」
「貴女ほどのレディなら言われて慣れているのでは?」
「そんなことはありません。」
他の誰にそう言われようが、こんなにときめいたことは無かった。
暫しの沈黙。顔の熱がなかなか引かず、手で軽く顔を扇いだ。
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