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第二章〜フューズ王国〜
第35話 拠点
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「いらっしゃいませ! ささっ、こちらへどうぞ」
次の日、俺たちはクランの拠点となる物件を探しに王都で一番大きな不動産屋に来ていた。リアンにも相談してみたが、やはりクランともなると拠点の一つや二つは持っているのが一般的らしい。
拠点がないところは資金もなくまともな装備も揃えられないんじゃないか、と思われるらしい。
もうすぐ長期遠征でこの町をしばらく離れてはしまうが一応拠点があったほうがいいだろう。
「いやーあなた方の噂はかねがね聞いておりますよ。なんでもその若さにして皆さんBランク冒険者であり、先日クランを設立なさったと。今日いらっしゃったのは、クランの拠点探しでしょうか?」
「ええ、まあそんなところです」
「申し遅れました、私はロレンスと申します」
「ご存じかもしれませんが、ストレリチアのクランリーダーのトウマと申します」
クランの拠点で真っ先に思いつくのは漫画の中で見たような建物だな。扉を開けると正面にはバーカウンターらしき場所があり、フロアには無数のテーブルや椅子が置いてあって、ちっちゃい最強滅竜魔導士のマスターがいる……久しぶりに続きが読みたくなってきたな。
「ご希望はございますでしょうか?」
「リアン頼む」
「私がかわりに要望を述べさせてもらうわね。まず、住むための設備が整っているというのが最低条件ね。後は中心部からある程度離れた場所がいいわ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
もうすぐ、学園の寮も使えなくなるのでこれを機に住居も兼ねてしまおうというわけだ。中心部からある程度離れた場所がいいというのは、夜にうるさいと鬱陶しいからだ。
睡眠は大事。
「それでは、この辺りはいかがでしょうか?」
ロレンスさんはそういうと、三枚の紙を見せてきた。
「まず、一軒目はこちらの物件です。クランの拠点としてはやや小さいかも知れませんが、値段は紹介するなかで一番お値打ちです。中心部からも程よく距離がありなかなかの優良物件となっております」
確かに結構立地もいいし、値段も一番安い。ただ欠点としては少しクランの拠点っぽくないことだな。イラストを見る限り少し大きめの家といった雰囲気だ。
お金があまりなかったら、ここに決めてしまっていただろうが、幸い辺境伯に貰ったお金がまだだいぶ残っている。
「次にこの物件です。この拠点三つの中で一番大きい建物となります。しかし、五十年以上前に作られた建物なので下水道が完備されておらず、やや不便なため値段が少し安いです」
ちなみに王都はこの世界では珍しく下水道があるため、町が悪臭で包まれていない。なんでも過去の転移者が下水道の設置を行ったらしい。王都で生活をしていると、よく転移者がらみの事柄を見つけるな。
前食べたパンケーキ然り、王都では結構過去の転移者の影響を受けているようだ。
「最後にこちらの物件です。こちらはクランの拠点用に作られた大きい建物でして、厨房も完備されております。数年前にできたばかりの建物なので紹介する三軒の中では一番オススメの物件です。難点といいますと少しお値段が張ることでしょうか……」
なるほど、三軒三様といったところか。具体的な値段も聞いてみたいな。ちなみに予算は3500万ゴールドだ。
「ロレンスさん、三軒それぞれのお値段を聞かせてもらっても?」
「はい、一軒目が購入でしたら1080万ゴールド、賃貸契約でしたら月20万ゴールドとなります」
あ、購入だけじゃなくて賃貸契約という選択肢もあるのか。借りるというのは考えてなかったな。
「二軒目は賃貸契約は行えないので、購入のみになります。購入ですと1760万ゴールドになります」
賃貸契約が行えない物件もあるのか。まあそれもそうか。
「三軒目は購入ですと4750万ゴールド、賃貸契約でしたら月90万ゴールドとなります」
ひえっ、少し値が張るとかのレベルじゃねぇだろ! 一軒目の五倍近いじゃねーか。
せいぜい二倍程度と思っていたのにまさかそんなするとは思ってなかったな。
うーん、悩むな。値段抜きで決めるなら三軒目がいいんだけど、流石に高すぎるかなぁ。賃貸契約という選択肢もなくはないといったところか……。
一軒目も決して安くはないのに安く見えてくるから怖いな。三軒目を買いたくなるように誘導してきている感じもしなくはない。ここは他の三人にも意見聞いてみるか。
「三人は何軒目がいいと思った?」
「私は二軒目がいいと思うわ」
二軒目か、俺は自然と選択肢から外していたな。どういうところで判断したんだろうか?
「やはりクランの拠点としては大きめの建物のほうがいいわね。それに下水道の問題も私たちは魔術でなんとかなるわ」
「確かにそうだな」
確かに些細な問題は魔術で解決してしまうな。
「私は三軒目の厨房が気になります!」
そういえばカンナは料理が好きだったな。それなら料理がしやすい環境がいいというのも頷ける。
値段がもう少し安ければ俺も三軒目を推すんだがな……。
「実際に見てみたらどうです? 気づかなかった良い点や問題点も出てくるかもです♪」
確かにノアの言う通り、口頭だけの説明では伝わらない部分もあるだろう。実際に見てみるのも良いかもしれない。
「ということで、見学させてもらってもいいですか?」
「ええ、かまいませんよ。では、少し準備をしてきますのでしばらくお待ちください」
「分かりました」
ロレンスさんは何やら準備があるようで裏へと下がっていった。
「皆は賃貸という選択肢はどう思う?」
「ないわね」
「ないです!」
「ここはもう買っちゃいましょう♪」
「お、おう」
どうやら三人には賃貸契約という選択肢はないらしい。
「クランの拠点が賃貸なんて買わないのと同じようなものじゃない」
「確かにそうだな」
「それに賃貸だと数年で買うのと同じ値段まで膨れ上がるわ。それだったら買ってしまったほうがお得よ」
確かにそうだな。三軒目の物件で言うならば五年借りるだけで買う値段を超えてしまう。年1080万ゴールドとかそれはそれできついな。
「では、馬車の用意ができましたので、出発いたします」
思えば、馬車に乗るのは二回目だな。やはり、こういう大きな店や貴族などは移動で馬車を使うものなのだろう。
最初にあった貴族はチンピラを引き連れて徒歩だったけど……。
俺たちは馬車に乗車し、まずは一軒目の物件に向かった。
「思ったより大きいな」
比較的小さいとは言うが日本で言うならば普通の家の三倍ほどの大きさがある。いわゆる豪邸並みの大きさだ。
内装は宿屋のような感じだ。一回に受付と飲み食いをするテーブルがあり、二階は寝泊まりをするための部屋が8つある。今いるメンバーでも大きいような家だろう。
続いて二軒目だ。こちらはさらに大きな建物でもう屋敷といっても過言ではない。なんでも十年以上前に大商人だった人が住んでいたらしいが、破産したとかなんとかで差し押さえされた物件らしい。
人が死んで幽霊屋敷的な要素があるとでも思っていたがそんなことはなかった。
下水道はないので、古き良き汲み取り式トイレだ。ぼっとん便所ともいうな。
俺の京都の親戚の家のトイレはぼっとん便所だったので、懐かしさもあるな。
最後に三軒目だ。
こちらもなかなかの豪邸だ。一階から二階にかけてはシンデレラ階段が伸びており、吹き抜けのような感じになっている。
伝わりにくいかもしれないが、俺のイメージでいうとお高いホテルにありそうな感じだ。
だが、結婚式場やホテルほど照明で煌びやかというわけではなく、落ち着いた感じだ。
この屋敷自慢の厨房を覗いてみると、そこで窯を見つけた。
「おお、立派な窯ですね!」
「窯があればカンナの料理のレパートリーも増えそうか?」
「もちろんですよ! 任せてください!」
やはり三軒の中では三軒目の物件が一番良いだろう。俺としては一軒目でも十分な気がしたが、リアンたちはあまり反応がよろしくなかった。
「さて、いかがでしょうか?」
「そうですね。どの物件も素晴らしく迷いましたが、やはり三軒目が一番いいですね」
「では、三軒目を購入なさると?」
「そう致したいところですが、少し値段のほうがですね……」
俺はそういうとリアンのほうをチラリとみる。
「私ももう少し安くければ三軒目でいいと思うのだけれど」
「そうですね……では、今後ともご贔屓にしてもらうということで4500万ゴールドならいかがでしょう?」
「お、に、い、さん? もう少しやすくならない?」
「うっ」
いや、可愛いんだけれども、あざとっ!
「4200万ゴールドでいかがでしょうか……」
「もう少し安くならないかしら? 私たち3000万ゴールドまでなら今日全額払えるわよ?」
「いや、流石に3000万は私が首にされてしまいますよ」
「流石に3000万ゴールドで売ってくれるとは思ってないわ。お兄さんに知ってもらいたいのは確実に3000万は入り、リスクが減るということよ」
「なるほど……」
リアンの言っていることを詳しく説明すると、この世界でも建物を買う時などにローンなどを組むことがよくあるが冒険者はいつ死ぬかわからないため、基礎料金が高めに設定されている。つまりは商人などが買うより高めに売られるということだ。これは冒険者が死んで払ってもらえなくなるというリスクがあるため仕方がないことだと思う。生命保険で言うと基礎疾患持ちの人は基本料金が高いとかそんな感じだな。
だが、俺たちは3000万ゴールド、いや本当は3500万ゴールドなんだが……今日即日で払うことができる。つまりは不動産側のリスクが減るというわけだ。
俺たちはすぐにまとまったお金が払えるということをカードとして、値下げをしてもらおうというのだ。
「それでしたら4000万ゴールドでいかがでしょうか?」
「3400万でどうかしら? 見た感じ建物内はきちんと清掃されていてきれいだけれど、広い庭園は手入れがそこまで行き届いてないように見えたわ。整えるために結構なお金がかかりそうですね」
「うっ、それなら3800万でいかがでしょう?」
「3500万はどうかしら? 出来て数年たちまだ購入者が現れないということで、ロレンスさんもさらに物件の価値が下がらないうちに売りたいのではないですか? この物件を買えるような商人や貴族は中心部に店や屋敷を構えますし、クランの拠点を探している冒険者も次は何年後に現れるかわかりませんよ? それに私たちは自分で言うのもなんですが、これから私たちが活躍し名前が売れたときいい宣伝にもなりますよ」
「わ、分かりました……3500万ゴールドでいかがですか……?」
「買います!」
こうして俺たちはめでたく自分たちの拠点を持つこととなった。それにしてもリアンの口撃えぐかったな。
本人曰く、貴族社会で身についた交渉術らしい。ケンカした場合はあんなに鋭くズバズバ言われるのだろうか。考えるだけでも恐ろしいな。
次の日、俺たちはクランの拠点となる物件を探しに王都で一番大きな不動産屋に来ていた。リアンにも相談してみたが、やはりクランともなると拠点の一つや二つは持っているのが一般的らしい。
拠点がないところは資金もなくまともな装備も揃えられないんじゃないか、と思われるらしい。
もうすぐ長期遠征でこの町をしばらく離れてはしまうが一応拠点があったほうがいいだろう。
「いやーあなた方の噂はかねがね聞いておりますよ。なんでもその若さにして皆さんBランク冒険者であり、先日クランを設立なさったと。今日いらっしゃったのは、クランの拠点探しでしょうか?」
「ええ、まあそんなところです」
「申し遅れました、私はロレンスと申します」
「ご存じかもしれませんが、ストレリチアのクランリーダーのトウマと申します」
クランの拠点で真っ先に思いつくのは漫画の中で見たような建物だな。扉を開けると正面にはバーカウンターらしき場所があり、フロアには無数のテーブルや椅子が置いてあって、ちっちゃい最強滅竜魔導士のマスターがいる……久しぶりに続きが読みたくなってきたな。
「ご希望はございますでしょうか?」
「リアン頼む」
「私がかわりに要望を述べさせてもらうわね。まず、住むための設備が整っているというのが最低条件ね。後は中心部からある程度離れた場所がいいわ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
もうすぐ、学園の寮も使えなくなるのでこれを機に住居も兼ねてしまおうというわけだ。中心部からある程度離れた場所がいいというのは、夜にうるさいと鬱陶しいからだ。
睡眠は大事。
「それでは、この辺りはいかがでしょうか?」
ロレンスさんはそういうと、三枚の紙を見せてきた。
「まず、一軒目はこちらの物件です。クランの拠点としてはやや小さいかも知れませんが、値段は紹介するなかで一番お値打ちです。中心部からも程よく距離がありなかなかの優良物件となっております」
確かに結構立地もいいし、値段も一番安い。ただ欠点としては少しクランの拠点っぽくないことだな。イラストを見る限り少し大きめの家といった雰囲気だ。
お金があまりなかったら、ここに決めてしまっていただろうが、幸い辺境伯に貰ったお金がまだだいぶ残っている。
「次にこの物件です。この拠点三つの中で一番大きい建物となります。しかし、五十年以上前に作られた建物なので下水道が完備されておらず、やや不便なため値段が少し安いです」
ちなみに王都はこの世界では珍しく下水道があるため、町が悪臭で包まれていない。なんでも過去の転移者が下水道の設置を行ったらしい。王都で生活をしていると、よく転移者がらみの事柄を見つけるな。
前食べたパンケーキ然り、王都では結構過去の転移者の影響を受けているようだ。
「最後にこちらの物件です。こちらはクランの拠点用に作られた大きい建物でして、厨房も完備されております。数年前にできたばかりの建物なので紹介する三軒の中では一番オススメの物件です。難点といいますと少しお値段が張ることでしょうか……」
なるほど、三軒三様といったところか。具体的な値段も聞いてみたいな。ちなみに予算は3500万ゴールドだ。
「ロレンスさん、三軒それぞれのお値段を聞かせてもらっても?」
「はい、一軒目が購入でしたら1080万ゴールド、賃貸契約でしたら月20万ゴールドとなります」
あ、購入だけじゃなくて賃貸契約という選択肢もあるのか。借りるというのは考えてなかったな。
「二軒目は賃貸契約は行えないので、購入のみになります。購入ですと1760万ゴールドになります」
賃貸契約が行えない物件もあるのか。まあそれもそうか。
「三軒目は購入ですと4750万ゴールド、賃貸契約でしたら月90万ゴールドとなります」
ひえっ、少し値が張るとかのレベルじゃねぇだろ! 一軒目の五倍近いじゃねーか。
せいぜい二倍程度と思っていたのにまさかそんなするとは思ってなかったな。
うーん、悩むな。値段抜きで決めるなら三軒目がいいんだけど、流石に高すぎるかなぁ。賃貸契約という選択肢もなくはないといったところか……。
一軒目も決して安くはないのに安く見えてくるから怖いな。三軒目を買いたくなるように誘導してきている感じもしなくはない。ここは他の三人にも意見聞いてみるか。
「三人は何軒目がいいと思った?」
「私は二軒目がいいと思うわ」
二軒目か、俺は自然と選択肢から外していたな。どういうところで判断したんだろうか?
「やはりクランの拠点としては大きめの建物のほうがいいわね。それに下水道の問題も私たちは魔術でなんとかなるわ」
「確かにそうだな」
確かに些細な問題は魔術で解決してしまうな。
「私は三軒目の厨房が気になります!」
そういえばカンナは料理が好きだったな。それなら料理がしやすい環境がいいというのも頷ける。
値段がもう少し安ければ俺も三軒目を推すんだがな……。
「実際に見てみたらどうです? 気づかなかった良い点や問題点も出てくるかもです♪」
確かにノアの言う通り、口頭だけの説明では伝わらない部分もあるだろう。実際に見てみるのも良いかもしれない。
「ということで、見学させてもらってもいいですか?」
「ええ、かまいませんよ。では、少し準備をしてきますのでしばらくお待ちください」
「分かりました」
ロレンスさんは何やら準備があるようで裏へと下がっていった。
「皆は賃貸という選択肢はどう思う?」
「ないわね」
「ないです!」
「ここはもう買っちゃいましょう♪」
「お、おう」
どうやら三人には賃貸契約という選択肢はないらしい。
「クランの拠点が賃貸なんて買わないのと同じようなものじゃない」
「確かにそうだな」
「それに賃貸だと数年で買うのと同じ値段まで膨れ上がるわ。それだったら買ってしまったほうがお得よ」
確かにそうだな。三軒目の物件で言うならば五年借りるだけで買う値段を超えてしまう。年1080万ゴールドとかそれはそれできついな。
「では、馬車の用意ができましたので、出発いたします」
思えば、馬車に乗るのは二回目だな。やはり、こういう大きな店や貴族などは移動で馬車を使うものなのだろう。
最初にあった貴族はチンピラを引き連れて徒歩だったけど……。
俺たちは馬車に乗車し、まずは一軒目の物件に向かった。
「思ったより大きいな」
比較的小さいとは言うが日本で言うならば普通の家の三倍ほどの大きさがある。いわゆる豪邸並みの大きさだ。
内装は宿屋のような感じだ。一回に受付と飲み食いをするテーブルがあり、二階は寝泊まりをするための部屋が8つある。今いるメンバーでも大きいような家だろう。
続いて二軒目だ。こちらはさらに大きな建物でもう屋敷といっても過言ではない。なんでも十年以上前に大商人だった人が住んでいたらしいが、破産したとかなんとかで差し押さえされた物件らしい。
人が死んで幽霊屋敷的な要素があるとでも思っていたがそんなことはなかった。
下水道はないので、古き良き汲み取り式トイレだ。ぼっとん便所ともいうな。
俺の京都の親戚の家のトイレはぼっとん便所だったので、懐かしさもあるな。
最後に三軒目だ。
こちらもなかなかの豪邸だ。一階から二階にかけてはシンデレラ階段が伸びており、吹き抜けのような感じになっている。
伝わりにくいかもしれないが、俺のイメージでいうとお高いホテルにありそうな感じだ。
だが、結婚式場やホテルほど照明で煌びやかというわけではなく、落ち着いた感じだ。
この屋敷自慢の厨房を覗いてみると、そこで窯を見つけた。
「おお、立派な窯ですね!」
「窯があればカンナの料理のレパートリーも増えそうか?」
「もちろんですよ! 任せてください!」
やはり三軒の中では三軒目の物件が一番良いだろう。俺としては一軒目でも十分な気がしたが、リアンたちはあまり反応がよろしくなかった。
「さて、いかがでしょうか?」
「そうですね。どの物件も素晴らしく迷いましたが、やはり三軒目が一番いいですね」
「では、三軒目を購入なさると?」
「そう致したいところですが、少し値段のほうがですね……」
俺はそういうとリアンのほうをチラリとみる。
「私ももう少し安くければ三軒目でいいと思うのだけれど」
「そうですね……では、今後ともご贔屓にしてもらうということで4500万ゴールドならいかがでしょう?」
「お、に、い、さん? もう少しやすくならない?」
「うっ」
いや、可愛いんだけれども、あざとっ!
「4200万ゴールドでいかがでしょうか……」
「もう少し安くならないかしら? 私たち3000万ゴールドまでなら今日全額払えるわよ?」
「いや、流石に3000万は私が首にされてしまいますよ」
「流石に3000万ゴールドで売ってくれるとは思ってないわ。お兄さんに知ってもらいたいのは確実に3000万は入り、リスクが減るということよ」
「なるほど……」
リアンの言っていることを詳しく説明すると、この世界でも建物を買う時などにローンなどを組むことがよくあるが冒険者はいつ死ぬかわからないため、基礎料金が高めに設定されている。つまりは商人などが買うより高めに売られるということだ。これは冒険者が死んで払ってもらえなくなるというリスクがあるため仕方がないことだと思う。生命保険で言うと基礎疾患持ちの人は基本料金が高いとかそんな感じだな。
だが、俺たちは3000万ゴールド、いや本当は3500万ゴールドなんだが……今日即日で払うことができる。つまりは不動産側のリスクが減るというわけだ。
俺たちはすぐにまとまったお金が払えるということをカードとして、値下げをしてもらおうというのだ。
「それでしたら4000万ゴールドでいかがでしょうか?」
「3400万でどうかしら? 見た感じ建物内はきちんと清掃されていてきれいだけれど、広い庭園は手入れがそこまで行き届いてないように見えたわ。整えるために結構なお金がかかりそうですね」
「うっ、それなら3800万でいかがでしょう?」
「3500万はどうかしら? 出来て数年たちまだ購入者が現れないということで、ロレンスさんもさらに物件の価値が下がらないうちに売りたいのではないですか? この物件を買えるような商人や貴族は中心部に店や屋敷を構えますし、クランの拠点を探している冒険者も次は何年後に現れるかわかりませんよ? それに私たちは自分で言うのもなんですが、これから私たちが活躍し名前が売れたときいい宣伝にもなりますよ」
「わ、分かりました……3500万ゴールドでいかがですか……?」
「買います!」
こうして俺たちはめでたく自分たちの拠点を持つこととなった。それにしてもリアンの口撃えぐかったな。
本人曰く、貴族社会で身についた交渉術らしい。ケンカした場合はあんなに鋭くズバズバ言われるのだろうか。考えるだけでも恐ろしいな。
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