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第一章〜エルガレフト神国〜

第5話 血のピクニック

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「あの餓鬼たちは欲まみれで動かしやすいですな」

「うむ、持ち上げられていい気になっておる。所詮勇者と言っても人の子よ」

「報告ですが追い出した元勇者ですが、冒険者になったようですぞ。しかも、絶世の美女を従えているらしく巷の噂になっているらしいですぞ」

「ふむ、ちと面倒臭いのう。大人しく暮らしておれば見逃してやったものを。目立ったばかりに殺されてしまうとはなんと憐れな。神が直々に導いてくれるでしょうな」

「はは、そうですな。調子に乗った餓鬼は教育するのが1番です。まあ次の人生に向けての教育ですがな」

「ははは、面白いことを言うな。では、暗部に命じてあの餓鬼を殺ってこい。ついでに女のほうはつれてこい」

「は!」


* * * *


 絡まれたあと、俺たちは武器屋に来ていた。割と冒険者ギルドから近く、多くの冒険者がいた。

「らっしゃ……」

 店主であろうゴツイおっさんは完全にカンナに見惚れている。行くとこどこで毎回絡まれてたらキリがねぇな。ゴツイおっさんが頬を赤らめてもきしょいだけだぞ!
 は、っと我に返ったのか、こちらによってきた。目をらんらんとさせてるのが怖いんだが。

「どんな武器探してんだ?」

「えっと、僕と彼女の剣をですね探してるんです」

 日本にいた頃の癖で自然と敬語になっちゃうな。この世界で冒険者をやって行くなら舐められるし、敬語を使わずに喋れるようにならないとな。

「予算はいくらだ?」

「えっと…2000ゴールドです」

「2000ゴールドか…ちと厳しいな。鉄くずみたいなやつしか買えねーぞ?」

「武器になりそうなものだったらなんでもいいです」

「おいおい、自分の命を預ける武器をそんな適当に決めてはダメだぞ。それに坊主はこの可愛いお嬢ちゃんを危険に晒すつもりか?」

 思わず俺は黙り込んでしまう。確かに武器は命を預ける大事なものだし、このおっさんの言うことはもっともだ。だがなにもないよりはマシだし、金がないからもっと良いのを買うことも出来ない。

「…ったく、じゃあ分割払いってのはどうだ?」

「分割払いですか?」

「ああ、先に2000ゴールドだけ払ってもらってあとで足りない分を払えばいいんだ」

 分割払いか。その考えはなかった。しかし、いつ命を落とすかも分からない冒険者に一括払いではなく、分割払いをすすめるのはなんでなんだ?なんか怪しい。

「僕達はいつ死ぬかも分かりませんよ? そんな存在にあとで支払ってもらうつもりでもし死んで、払えなかったらどうするんですか?」

「まあ、そこら辺の冒険者にゃこんなこと話せんが、純粋にそこのかわいいお嬢ちゃんに死んで欲しくないんだ。まあ冒険者をやめろとかそんなん部外者が喋れることでもないから、少しでも生存率をあげて欲しいからいい武器を使って欲しいんだ」

「……うちのカンナは渡しませんよ?」

「ガハハ、取る気はねーよ。ただ可愛いお嬢ちゃんを見れるだけで眼福なんだよ。ほら、特別サービスしたら贔屓にしてもらいやすくなるだろ?」

 ただ単純にカンナに釣られただけのようだ。でもカンナはやらんぞ?

「ほら、これ持ってけ」

 そうやって渡された2本の剣は見るからにお高そうな武器だった。鑑定してみたが、性能もいい。

「これ絶対高くないですか?」

「まーまーな。まあ払えるくらいには値引きしてやるから安心しろ」

「ちなみにおいくらですか?」

「そーだな、普通だったら2本合わせて4万ゴールドなんだが、2万ゴールドでどうだ?」

 半額か、それでも結構高いけど命に関わる物だしなぁ。こんな好条件他ではないだろう。よし買うか。

「わかりました。買います」

「毎度あり!また来てくれよ」

 そうおっさんに言われながら俺たちは店をでた。なぜか武器屋なのに八百屋みたいなことを言ってて少し笑ってしまった。まあこの世界の人からしたら、武器屋も八百屋と同じように身近なものなのかも知れないが。ちなみに武器の性能はこれだ。


 名称:鋼鉄の剣

 希少級レア

 攻撃力80 耐久値:500/500

 効果:サビ防止、攻撃力小上昇


 希少級レアというのがまたいい。なんかお得した気分になる。そんな訳で武器を揃えたので、ゴブリンの狩場である近くの森に移動することにした。

「身分証明になるものをお見せ下さい」

 森に行くためには街を囲っている塀にある門みたいなのを通るのだが身分証明になるものがいるらしい。やっぱ取っといてよかったなギルドカード。俺とカンナは衛兵さんにギルドカードを渡して門をくぐる。
あ、ちなみに衛兵も言葉はちゃんと喋れてたけど、顔がめっちゃニヤニヤしてたよ。道行く人にも見られるし、有名人ってこういう感じなのかな?まあ見られてるのはカンナなんだけど。

 森までは歩いて15分くらいということなので徒歩で移動する。まあ徒歩以外の移動方法もないのだが。森につくまではカンナと喋ったりした。やっぱり、記憶はないらしい。でも、好きな食べ物や、苦手な物とかはあるらしい。
記憶がないのにそれがわかるのは不自然だが、何故か一般常識的なことはわかる仕様なのかな?まあ記憶喪失とかでも、そういうのは知ってることが多いので、まあそんなもんなのかな。そうこう喋ってるうちに森についた。

 うわー、なんか薄暗くて不気味だな。見通しも若干悪い。そうこうしてると緑色のあやつを見つけた。そうファンタジーの定番のゴブリンだ! リアルゴブリンは結構キモい。人間でたとえると、ブスが更に整形で失敗して顔が変形したみたいな感じだ。布みたいなのを肩から膝ぐらいまでにつけているな。ローマ人スタイルみたいだ。手には……ん? 木の枝? そこはナイフとかじゃねーのか? まあ大人なら誰でも倒せるレベルらしいからそんな強くないんだろうね。一応鑑定してみるか。



 名称:ゴブリン

 種族:ゴブリン族

 状態:平常

 ステータス レベル:1

 HP:23 MP:2 腕力:17 体力:11 敏捷:13 知力:16 魔力:3 器用:18

 スキル
 棒術Lv1


 よっわ。てか木の枝って棒扱いなのか。まあこれなら余裕で勝てそうだな。問題は殺したらグロい事だな。さあどうするか。まあこの世界に生きるなら慣れないと行けないことなんだけどな。まあ海外のゾンビドラマをご飯中に流す親のもとで育ったから多少耐性はあると思うんだけどな。海外のって日本のと比にならないくらいグロいんだよな。ちなみにつけてたのは〇ォー〇ング・〇ッドってやつだぞ!


 んー最初だし、どうしようかなぁ。カンナの強さも見てみたいかな。

「カンナ」

「はい!ご主人様。なんですか?」

「あそこにいるゴブリンを殺ってくれないか?カンナがどのくらい戦えるのか見てみたいんだ」

 リョーカイです。と敬礼みたいに手をおでこにあててカンナは言った。は、可愛いかよ。因みに結構ゴブリンは遠いので気づいていない。

「いってきます!」

「ギャアアォ」

 カンナがそういった瞬間、ゴブリンの体と頭が永遠の別れを告げた。首からは血が滴れてる。まあ血といっても赤くないんだが、ゴブリンの血ってなんか虫を潰したときにでる、緑色の汁みたいな色をしている。まさかゴブリンって虫の亜種だったのか? にしても強すぎる。残像しか見えなかった。こりゃ余程の強敵と会わない限りは安全そうだな。まあそこそこ強かったらカンナとの戦闘の余波でおさらばしちゃうかもだが。
 カンナは解体のスキルも持っているようなのでゴブリンを解体してもらう。まあ解体するっていっても魔石を取り出すのと、ゴブリンの耳を削ぎ落とすだけなのだが。魔物にはどの個体にも魔石があり、魔道具に使ったり、魔力に変換したり出来るようだ。まあ魔力の変換はロスが凄いのであんまいい使い方ではないようだが。ちなみにこの情報はカウンターのお姉さんに聞いた。

「ご主人様っ」

「ん? なんだ?」

「そこ、誰かいます。しかも結構人数多いです。明らかについてきてるです」

 なにやらカンナがこしょこしょ声で言ってくる。ああ、耳が幸せだ。って、そんなこと言っている場合じゃない。なぜストーカーさんがいるんだ? カンナが可愛すぎてストーカーしに来たのか?

「おい、そこ、出てこい。隠れているのは分かってるんだぞ」

 取り敢えず見えないけどそこに声をかけてみる。これで居なかったら恥ずいぞ俺。

「ッチ、なんでばれたんだよ」

 おうおう、結構な数の人間が出てきたぜぇ。なんかみんな暗殺者みたいな格好してるな。なんかこう全体暗めな感じ? 6人か…てかよくそんな上手く木に隠れてたな。

「お前達はなんなんだ?」

「教えてやる義理はねーよ」

 そう言いながら、6人がこちらに走ってくる。咄嗟に俺は先頭を走るリーダーであろう人間に鑑定をかける。


 名称:オルゾ 年齢:28歳

 種族:人族

 職業:暗殺者

 状態:精神不安定

 ステータス レベル:16

 HP:260 MP:215 腕力:211 体力:241 敏捷:320 知力:120 魔力:231 器用:176

 スキル
 短剣術Lv2、暗殺術Lv3、追跡Lv2、気配遮断Lv2、恐慌Lv2、毒薬知識Lv1


 称号
 教会の暗部


 完全に暗殺者タイプだな。てか称号に教会の暗部とあるじゃないか。完全にこれ俺を召喚して追い出しやがった教会の仕業だわ。ステータスは若干俺じゃ相手するには辛いな。女の子に手を染めさせるのは男として情けないが、ここで意地張ると死ぬのでここはカンナにやってもらうか。


「カンナ、1番前のリーダー格のやつは無力化して、あとは全員殺っていい」

「分かりましたご主人様!」

 そういうとカンナはなにやら呪文を唱えながら走る。1番前のリーダー格らしき男の腕を切り落とし、腱を切った。まあ見えなかったからあとから聞いた話なんだけどね。そのまま男が崩れる。うわ、グロっ。

「ファイヤーアロー!!」

 そうカンナが叫ぶと5本の火の矢が現れ、凄い速さで残りの男達の眉間にぶっ刺さった。あれじゃ多分即死だろう。

 〘レベルアップしました〙テッテレー

 頭になにか響いた。レベルアップ? 男たちを殺したことでレベルが上がったのか?てか、魔物を倒した時にだけ経験値が入ると思っていたのだが、PK…プレイヤーキルでも経験値って入るものなのか? でもなんで俺がレベルアップするんだ?倒したのはカンナだろ?


「カンナ、なんか俺のレベルが上がったっぽいんだが、カンナはレベル上がったか?」

「んー、上がってないです」


 顎に手をあてながらカンナがいった。うーんポーズは絵になるのに視界に入る血だらけの男がなぁ。サイコパス感が凄い。まあ、レベルアップの話は置いておいてこの暗殺者から話を聞き出すとでもするか。


「ギャァァァ」


 出血多量で死なないように傷口を焼いたんだが相当痛いらしいな。暗殺者が叫んでいる。まあそりゃいてーか。さて、話を聞くか。勿論平和的にね。
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