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第一章〜エルガレフト神国〜

第1話 異世界召喚と追放

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「ここは……どこだ?」
 さっきまで俺は学校で授業を受けていたはずだ。
 なのに何故か見知らぬ建物の中にいる。

「寝落ちして夢を見てるのか?」

 しかし、夢にしては少々リアルすぎる。
 これが明晰夢というやつなのだろうか。
 下はひんやりとして冷たい。大理石かなんかか? やけにリアルだな。
 とりあえず、起き上がって周りを見渡してみる。

「え?」

 なんで夢の中にさっきまで一緒に授業を受けていた奴らがいるんだ?
 ヨボヨボのジジイ教師までいる。あいつの授業眠たいんだよなぁ……っと、ジジイのことはどうでもいい。
 とりあえず状況を理解しないとな。
 流石にここまでリアルでさっきまで授業を一緒に受けていたクラスメイトがいる現状、夢というのはとても考えられにくい。
 だって、あんま絡みがなくて影薄いような奴までいるんだぜ。夢だったらそんな奴は出てこないと思う。

「周りの奴らは……」

 寝てる奴と起きてる奴が半々くらいか……
 起きてる奴も放心状態だったり、あからさまに動揺してたりだ。
 おい、そこ、また寝始めるな。
 さらに周りを確認してみると、白い修道服みたいなものを着ている人と兵士の様なのがいる。どうやらここは教会のようだ。
 このラノベ感満載な流れだと、聖女っぽいのが出てきて、説明されたりするんだっけ。

「皆さまお聞き下さい」

 いや、全然聖女とかじゃねーぞあいつ。ジジイじゃん、結構ドスの効いた声してんなぁ……

「私はエルガレフト神国の枢機卿のカルロス・ラソフスと申します。ここは皆さまがいた世界とは違う別の世界オスベルトと言います。古来より伝わる勇者召喚の儀式によって皆さまを召喚いたしました。
 本来なら召喚の儀式をした聖女様から説明がなされるところですが、聖女様は魔力を限界近くまで使用し、とても衰弱されているので、代理として私の方から説明させて頂きます」

 なんだ、ちゃんと聖女いるじゃないか。
 説明か、ラノベだったら勇者になって魔王を倒せやら、邪神を倒せやら言われるんだよな。

「皆さまには、ぜひ魔王を倒しこの国を救って欲しいのです!」

 はい、フラグ回収っと。俺はラノベで状況の理解はしやすいけど他の人はどうだろうか?

「どういうことだ! 早く俺たちを元の世界に戻せ!」

 そうだそうだ! という声が聞こえてくる。そりゃいきなり連れてこられて魔王倒してこいとかいい迷惑だよな。
  
「こちらの都合で皆さまを召喚してしまったことについては申し訳ありませんでした。しかし、この国を救うため勇者召喚という手以外の選択肢がなかったのです」

 ってことは俺らは勇者ってことか。
 ラノベの勇者ってだいたい特殊能力があったよなぁ。
 あんまめんどくさい能力はやだな。修行とかしたくない。
 このあと枢機卿からの説明が長々と続けられた。
 正直眠い。家に帰ってゴロゴロしたい。

「……と言うわけです」

 やっと、説明が終わった。30分くらい喋ってたんじゃないか?
 長かったので纏めてみると
 ・この世界には魔法というものがある
 ・魔王は人族を滅ぼそうとしている、その足掛かりとしてこの国を滅ぼそうとしているとのこと。
 ・クラスにいた40人近い人が全員勇者として召喚されたらしい。
 過去にも勇者を召喚したことがあるそうだが、こんな大人数ではなかったそうだ。
 ・勇者には1人1つ特殊能力がついている。
 ・元の世界に帰る方法は不明、伝承では魔王を倒して帰れるらしいが、詳しくは不明。
 ・これから特殊能力の把握と魔王と戦えるよう訓練をするらしい、勿論反対の声も多かったが、魔王を倒したらできる限りの範囲で皆さまの望みを叶えます。と言ったあたりで皆が静かになった。いやチョロすぎだろ。

 なんか胡散臭いんだよなぁ。
 国の滅亡の危機とかいいながら、服や今いる神殿らしき建物は贅を尽くしている感じがする。
 うん、これダメなパターンの異世界召喚だわ。とりあえず動こうにも動けないから大人しく従っておくか。

「では、今から各自のスキルと職業を確認致しますので、ついてきてください」

 どうやらステータスを見ることが出来るような宝物があるらしい、鑑定スキルでみるとかじゃないのか。
 皆は丸い水晶のようなものに手をあてている。あれでステータスが浮かび上がるらしい。それを横の書記さんらしき人がせっせと紙に写している。
 時々「おお!」という驚いたような声も聞こえる。俺にはどんな特殊能力があるんだろ。

「では、次の方お願いします」

 修道院のシスターみたいな格好の人に水晶みたいなやつに手をかざすよう言われた。ドキドキするなぁ。俺のステータスが浮かび上がっていく。


 名称:楠木くすのき斗真 とうま 年齢:17歳

 種族:人族

 職業:召喚士

 状態:平常

 ステータス レベル:1

 HP:30 MP:40 腕力:20    体力:30 敏捷:30 知力:20 魔力:70 器 
  用:50

 スキル
 召喚術Lv1

 称号
 異世界人

 装備なし
         

 んーこれって高いのか低いのかわからないなぁ。
 召喚士か、面倒臭いことしたくないって思ってたから、それに合うように召喚した奴を戦わせるこの職業にでもなったのかね。性格も職業にかかわってくるのかなぁ。

「こ、これは」
  
 ん? どうした? めっちゃ驚いているように見えるんだが……嫌な予感がする。

「勇者の称号がないだと!?」

 あっ、確かに俺には異世界人という称号はついてるのに勇者という称号はついていない……でもそんなのそんな重要なのか?

「至急、カルロス様にお伝えしろ!」

 どうやら、勇者の称号がないのは前例がないらしい、それに職業もステータスも一般的な範囲だそうだ。

「なんと、異世界から来て勇者の称号がないとは、もしや、この者は元の世界で犯罪を犯していたのかもしれぬ」

 書記さんとカルロスさんがコソコソと喋っているのが聞こえる。 犯罪者扱いとか酷い未来しか見えない。

「斗真殿、ちょっとこっちに来て下され」

 カルロスさんが手招きをしている。正直悪い予感しかないから行きたくない。
 しかし、行かないわけにはいかないので、素直に従う。

「斗真殿は、過去に犯罪を犯したことがありますか?」

 答えは勿論Noだ。身に覚えがない。
 誤解が解けてくれるといいんだけどな。

「皆さま、斗真殿は犯罪を犯しているのですか?」
  
「犯罪をしたってのは聞いた事はないが、時々不審な行動をしてるから、その可能性もあるかもしれない」

 おい、ちょっと待てよ。適当なこといいやがって。
 あいつは……クラスのリーダー的なやつ海堂真か。そういえば前あいつが好きだったやつが俺に告ってきたんだよなぁ。それで逆恨みでもされてるのか?
  
「確かに、不審なことも多いな。 あんまり人と喋らなかったり、薄暗い路地に入って行ったり」

 あんまり喋んないのは人間関係がめんどくせえからだよ! 路地に入るのはそこに子猫がいたからだ!
 真の取り巻きのメガネも真の援護射撃でもするかのように俺に対して言ってきた。 
 そんな大したことでもねーだろ!
 私も見たことある……などの声も聞こえてくるぞ。これやばいな。

「あんまり喋んないのは人間関係が面倒臭いからだよ! 路地に入っていたのは子猫の世話をしていたからだよ!」

 そう反論する。なんで何もやってないのに追い出されそうになってるんですかねぇ。

「ではなぜ、勇者の称号がつかぬのじゃ! 子猫を助けていたのなら勇者に相応しく称号も貰えるはずじゃ!」

 おい、さっきまでの丁寧口調どこいったんだよ。そんなの俺にも分かんねーよ!

「やはり、こいつは犯罪を犯しているのじゃ! 即刻ここから追い出せ!」

 うわ、これもう話し聞いてくれないやつだ。人を犯罪者とか決めつけるなよ。
 俺は何度も反論したが、聞く耳を持ってくれなかった。
 クラスの奴らも助けてくれない。なんて奴らだ。
 結局俺は神殿を追い出されてしまった。餞別とかいう大銀貨1枚だけを握らされて。

「まじかよ」

 なんでこうなったのか自分でもわからない。頭の中がくしゃくしゃでどうにかなりそうだ。
 とりあえずこの世界で生きていかないといけない。
 もう、今更どうにもならないし、覚悟を決めよう。俺も過去に色々あったが、ちゃんと乗り切ることが出来た。今回もきっと大丈夫だ。そう自分に言い聞かせることで、少し時間が掛かったが気持ちの整理をつけ、この世界で生き抜く覚悟を決めることが出来た。

「これからどうするかな……」

 とりあえず、暗くなって来て、お腹も空いてきたので宿屋を探してご飯を食べることにした。人間どんな状況でも腹はすくものだ。
 しばらく歩いていると、宿屋を見つけた。
 宿の扉をあけると、カウンターらしき場所で14才くらいの少女が受付をしていた。

「いらっしゃいませ! 宿の泊まりですか?それともお食事ですか?」

 どうやらここの店は宿に泊まる以外に、ご飯だけを食べることも出来るそうだ。
 1階は酒場みたいな感じだな。2階と3階で寝泊まりをする感じか。良かった。ちゃんと言葉が通じて。

「両方お願いします」

「分かりました。宿代が1泊2000ゴールドで、ご飯代が1食500ゴールドです」

 あ、やべぇ全然通貨の価値とかわかんねぇ。大銀貨って1枚なんゴールドなんだ?怪しまれるかもだけど聞いておこう。

「あのー、僕最近田舎から引っ越してきまして、田舎では自給自足の物々交換な生活だったので通貨の単位がわかんないんです……できれば教えてくれませんか?」

「お金を使わない地域なんてあるんですか……? まあ……いいです。教えてあげましょう!」

 若干怪しまれたが、なんとか教えて貰えた。
 まあ確かに普通はどんな田舎でもお金くらい使うよなぁ。なんとか誤魔化せてよかった。ドヤ顔で胸を張りながら教えてくれる姿は微笑ましい。

 ゴールドの価値は日本と同じくらいと考えていいかも知れない。
 若干宿屋が安いのは利用する人が多く、冒険者でも泊まれるようにしたからだろう。

 白金貨1000万ゴールド
 大金貨100万ゴールド
 金貨10万ゴールド
 大銀貨1万ゴールド
 銀貨1000ゴールド
 大銅貨100ゴールド
 銅貨10ゴールド
 鉄貨1ゴールド
  
 俺が餞別で貰ったのは大銀貨だから1万ゴールドになるってことか。

「1泊と朝夕2食分これでお願いします」

「お金の単位は知らないのにお金を持ってるって不思議な人ですね……」

「いや、……これは親に外の世界を知ってこいってこのお金と食料だけ持たされて追い出されたんですよ」

「そうなんでしたか。では、確認させて頂きます。お釣りの7000ゴールドです」

 あぶない、あぶない。なんとか誤魔化すことが出来た。
 結構苦しい言い訳だったしな。もうちょっとでボロが出るところだったな……
 そう思いながら、お釣りの銀貨7枚を受け取る。

「では、ご飯の用意が出来ましたら呼ばせて頂きますので、しばし部屋にてお待ちください」

 とりあえず疲れたので部屋でくつろぐことにした。
 どうやらお風呂はなさそうだな。
 ラノベとかだと貴族とかしか入れないっぽいからな。体を拭けるものでもないか。聞いてみるか。
 そう思いながら、固めのベッドに寝転んだ。
 どんどんまぶたが重くなっていく。疲れていた俺は寝てしまったようだ。
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