20 / 20
二章 聖女という存在について
8 聖女から見た聖女の話
しおりを挟む
優秀な……人間、か。
そういえば聖女を始めてからクロード以外の人ににそういう事を言われたのって初めてかもしれない。
いや、かもしれないじゃない……初めてだ、うん。初めて。
そしてどこか報われたような気分の私に視線を向けたまま、ユイは思考を巡らせるように間を空けてから言う。
「しっかし……アンタは聖女を辞めたんすよね? なんというか……良く辞められたっすね」
「聞いただけで意味わからねえ位にブラックな扱いみてえだからな。そんな扱いをしていた国家がこれだけの人材を手放すとは思えねえ。多分無理矢理にでも引き留めてくるだろ」
これだけの人材……。
なんだろう、一度に複数人からそんな事を言われると夢でも見てるんじゃないかなって思ってしまう。
まあありがたい事に夢じゃないんだけどね。
本当にありがたい事に……元居た国の人達とは全然違う。
「辞められたっていうか、辞めさせられたんだ。解任されて国外追放って感じ」
「辞めさせられた!? 国外追放……は? ちょっとどういう事っすか!?」
「し、失礼なのは重々承知だが、お前何かやったのか!?」
驚く二人に私は言う。
「何かやったというか、やるべき事をやれていなかったんだ……私は無能扱いされてたから」
「無能扱いって……一人で聖結界を維持してたんすよね!?」
「だけど月に1匹2匹ペースで魔物が侵入してきて、少しだけ瘴気も沸いてたから」
「その程度の事っすよね!? それを無能って……」
本当に驚いたように、理解できないようにそう言ったユイは立ち上がり歩み寄ってきて、私の両手を握って言う。
言ってくれる。
「同じ……なんて言っていいかは分かんないっすけど、同じ聖女として言わせて欲しいっす! アンタは無能なんかじゃない! そんな訳の分からない所で使い潰されなくて本当に良かった!」
ほんの少しだけ、涙を流して。
────────
お知らせ
別作品で次世代ファンタジーカップにエントリー中です。
作者ページから飛べるので、更新を待ってくれている間、お時間がありましたら読んでみて頂けると嬉しいです。
劣化の最強魔術師 ~学園最弱の魔術師がゴミスキル『劣化コピー』で人知を超えた魔術をコピーした結果~
そういえば聖女を始めてからクロード以外の人ににそういう事を言われたのって初めてかもしれない。
いや、かもしれないじゃない……初めてだ、うん。初めて。
そしてどこか報われたような気分の私に視線を向けたまま、ユイは思考を巡らせるように間を空けてから言う。
「しっかし……アンタは聖女を辞めたんすよね? なんというか……良く辞められたっすね」
「聞いただけで意味わからねえ位にブラックな扱いみてえだからな。そんな扱いをしていた国家がこれだけの人材を手放すとは思えねえ。多分無理矢理にでも引き留めてくるだろ」
これだけの人材……。
なんだろう、一度に複数人からそんな事を言われると夢でも見てるんじゃないかなって思ってしまう。
まあありがたい事に夢じゃないんだけどね。
本当にありがたい事に……元居た国の人達とは全然違う。
「辞められたっていうか、辞めさせられたんだ。解任されて国外追放って感じ」
「辞めさせられた!? 国外追放……は? ちょっとどういう事っすか!?」
「し、失礼なのは重々承知だが、お前何かやったのか!?」
驚く二人に私は言う。
「何かやったというか、やるべき事をやれていなかったんだ……私は無能扱いされてたから」
「無能扱いって……一人で聖結界を維持してたんすよね!?」
「だけど月に1匹2匹ペースで魔物が侵入してきて、少しだけ瘴気も沸いてたから」
「その程度の事っすよね!? それを無能って……」
本当に驚いたように、理解できないようにそう言ったユイは立ち上がり歩み寄ってきて、私の両手を握って言う。
言ってくれる。
「同じ……なんて言っていいかは分かんないっすけど、同じ聖女として言わせて欲しいっす! アンタは無能なんかじゃない! そんな訳の分からない所で使い潰されなくて本当に良かった!」
ほんの少しだけ、涙を流して。
────────
お知らせ
別作品で次世代ファンタジーカップにエントリー中です。
作者ページから飛べるので、更新を待ってくれている間、お時間がありましたら読んでみて頂けると嬉しいです。
劣化の最強魔術師 ~学園最弱の魔術師がゴミスキル『劣化コピー』で人知を超えた魔術をコピーした結果~
0
お気に入りに追加
745
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)
蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。
聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。
愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。
いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。
ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。
それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。
心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)
深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。
そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。
この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。
聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。
ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
隠された山の麓で
みみみ
恋愛
人の寄り付く事のない森の中の山の麓の小さな家に、怪我をし記憶を失った若い男はたどり着いた。
そこに住む若い女アナリーに介抱され暫く世話になる。やがて2人は恋に落ち結ばれる。だが…
一つの目的の為に、小さな息子と王都に辿り着いたアナリーそこに待ち受けていたものは…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
こんにちは…
先程見つけてあらすじを読んだら誤字を発見…
変わりの聖女→代わりの聖女ですよね?
それでは、本編読みに行ってきますね🤗
ご指摘ありがとうございます。
後程修正させていただきます!