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二章 聖女という存在について

7 おとぎ話のような現実

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「……」

 それを言われて思わず押し黙る。
 とてもじゃないけど、嘘を言っているようには思えなかったから。

 おとぎ話みたいな話。
 だけどそれは私達にとってはつい昨日までの現実だったから。

「えーっと……どうしたっすか?」

 私もクロードも随分困惑した表情を浮かべていたんじゃないかな。
 ユイがどこか心配するようにそう問いかけてくる。

 だけど私達はその問いにすぐ答える事が出来ない。

 ユイ達が嘘をついていないんだとしたら……自分の中の価値観がぐちゃぐちゃになる程の衝撃的な話だから。
 色んな疑問が脳内をぐるぐるして、思考が追い付かなくなる。

「……これはどうかしてる感じっすね」

「だな」

 そんな私達を見て二人はそんなやり取りを交わした後、ユイが口元に手を当て一拍空けてから言う。

「……こんな当たり前な事に衝撃を受けている、応急処置なんて言葉で済ませられない程に完璧な聖結界を使う女の子。これは……もしかすると、もしかするかもしれないっすね。だとしたら今度はウチ達が鏡写しみたいな反応をしそうっすけど」

 そして改めて一拍空けてから、ユイは尋ねてくる。

「……アンタ達は、ウチらが常識だと思っているような事が非常識だと思えるような場所から来た。そういう事になるんじゃないっすかね?」

「まあ、そうなるね……うん」

 今度は返事を返した私は、そのまま勢いで素性を明かす事にした。

「私は昨日までそういう環境で聖女をやっていたんだ」

「一人で……っすか?」

「うん。一人で結界を維持したりする。聖女ってそういう役割なんじゃないのってのが私の……ううん。私達の居た国の価値観」

 私の発言に驚愕の表情を浮かべた二人は、確認するようにクロードに視線を向ける。

「ええ、それがルドルク王国の価値観であり、国防システムの要でした。複数人で分担するなんていう発想すらありませんでしたよ」

「それが本当なら……とんでもねえ話だな」

「ええ、そうっすね。ウチ達はとんでもない現実を目の前にしてるっすよ」

 そして一拍空けてから、ユイは言う。

「それができるとんでもなく優秀な人が実際にいて、そしてそれをさせるろくでもない国が実際にあるって事なんすから」
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