19 / 20
二章 聖女という存在について
7 おとぎ話のような現実
しおりを挟む
「……」
それを言われて思わず押し黙る。
とてもじゃないけど、嘘を言っているようには思えなかったから。
おとぎ話みたいな話。
だけどそれは私達にとってはつい昨日までの現実だったから。
「えーっと……どうしたっすか?」
私もクロードも随分困惑した表情を浮かべていたんじゃないかな。
ユイがどこか心配するようにそう問いかけてくる。
だけど私達はその問いにすぐ答える事が出来ない。
ユイ達が嘘をついていないんだとしたら……自分の中の価値観がぐちゃぐちゃになる程の衝撃的な話だから。
色んな疑問が脳内をぐるぐるして、思考が追い付かなくなる。
「……これはどうかしてる感じっすね」
「だな」
そんな私達を見て二人はそんなやり取りを交わした後、ユイが口元に手を当て一拍空けてから言う。
「……こんな当たり前な事に衝撃を受けている、応急処置なんて言葉で済ませられない程に完璧な聖結界を使う女の子。これは……もしかすると、もしかするかもしれないっすね。だとしたら今度はウチ達が鏡写しみたいな反応をしそうっすけど」
そして改めて一拍空けてから、ユイは尋ねてくる。
「……アンタ達は、ウチらが常識だと思っているような事が非常識だと思えるような場所から来た。そういう事になるんじゃないっすかね?」
「まあ、そうなるね……うん」
今度は返事を返した私は、そのまま勢いで素性を明かす事にした。
「私は昨日までそういう環境で聖女をやっていたんだ」
「一人で……っすか?」
「うん。一人で結界を維持したりする。聖女ってそういう役割なんじゃないのってのが私の……ううん。私達の居た国の価値観」
私の発言に驚愕の表情を浮かべた二人は、確認するようにクロードに視線を向ける。
「ええ、それがルドルク王国の価値観であり、国防システムの要でした。複数人で分担するなんていう発想すらありませんでしたよ」
「それが本当なら……とんでもねえ話だな」
「ええ、そうっすね。ウチ達はとんでもない現実を目の前にしてるっすよ」
そして一拍空けてから、ユイは言う。
「それができるとんでもなく優秀な人が実際にいて、そしてそれをさせるろくでもない国が実際にあるって事なんすから」
それを言われて思わず押し黙る。
とてもじゃないけど、嘘を言っているようには思えなかったから。
おとぎ話みたいな話。
だけどそれは私達にとってはつい昨日までの現実だったから。
「えーっと……どうしたっすか?」
私もクロードも随分困惑した表情を浮かべていたんじゃないかな。
ユイがどこか心配するようにそう問いかけてくる。
だけど私達はその問いにすぐ答える事が出来ない。
ユイ達が嘘をついていないんだとしたら……自分の中の価値観がぐちゃぐちゃになる程の衝撃的な話だから。
色んな疑問が脳内をぐるぐるして、思考が追い付かなくなる。
「……これはどうかしてる感じっすね」
「だな」
そんな私達を見て二人はそんなやり取りを交わした後、ユイが口元に手を当て一拍空けてから言う。
「……こんな当たり前な事に衝撃を受けている、応急処置なんて言葉で済ませられない程に完璧な聖結界を使う女の子。これは……もしかすると、もしかするかもしれないっすね。だとしたら今度はウチ達が鏡写しみたいな反応をしそうっすけど」
そして改めて一拍空けてから、ユイは尋ねてくる。
「……アンタ達は、ウチらが常識だと思っているような事が非常識だと思えるような場所から来た。そういう事になるんじゃないっすかね?」
「まあ、そうなるね……うん」
今度は返事を返した私は、そのまま勢いで素性を明かす事にした。
「私は昨日までそういう環境で聖女をやっていたんだ」
「一人で……っすか?」
「うん。一人で結界を維持したりする。聖女ってそういう役割なんじゃないのってのが私の……ううん。私達の居た国の価値観」
私の発言に驚愕の表情を浮かべた二人は、確認するようにクロードに視線を向ける。
「ええ、それがルドルク王国の価値観であり、国防システムの要でした。複数人で分担するなんていう発想すらありませんでしたよ」
「それが本当なら……とんでもねえ話だな」
「ええ、そうっすね。ウチ達はとんでもない現実を目の前にしてるっすよ」
そして一拍空けてから、ユイは言う。
「それができるとんでもなく優秀な人が実際にいて、そしてそれをさせるろくでもない国が実際にあるって事なんすから」
0
お気に入りに追加
742
あなたにおすすめの小説
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
殿下、妃殿下。貴方がたに言われた通り、前世の怨みを晴らしに来ましたよ
柚木ゆず
恋愛
「そんなに許せないのなら、復讐しに来るといいですわ。来世で」
「その日を楽しみに待っているぞ、はははははははははっ!」
濡れ衣をかけられ婚約者ヴィクトルと共に処刑されてしまった、ミリヤ・アリネス。
やがてミリヤは伯爵家令嬢サーヤとして生まれ変わり、自分達を嵌めた2人への復讐を始めるのでした。
来世はあなたと結ばれませんように【再掲載】
倉世モナカ
恋愛
病弱だった私のために毎日昼夜問わず看病してくれた夫が過労により先に他界。私のせいで死んでしまった夫。来世は私なんかよりもっと素敵な女性と結ばれてほしい。それから私も後を追うようにこの世を去った。
時は来世に代わり、私は城に仕えるメイド、夫はそこに住んでいる王子へと転生していた。前世の記憶を持っている私は、夫だった王子と距離をとっていたが、あれよあれという間に彼が私に近づいてくる。それでも私はあなたとは結ばれませんから!
再投稿です。ご迷惑おかけします。
この作品は、カクヨム、小説家になろうにも掲載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる