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二章 聖女という存在について

4 愉快な人達

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 ユイと呼ばれていた赤髪の少女に連れられてやって来たのは、落ち着いた雰囲気の小さな喫茶店だった。
 此処で話をするのかな?
 ……中に普通にお客さん居るみたいだけど。

「えーっと、あまり他の人に聞かれたくないような話なんじゃないの?」

「だから場所を移したんですよね?」

 私とクロードはそういう指摘をするけど、ユイは大丈夫というように笑みを浮かべて言う。

「大丈夫。此処私の実家っすから。あ、お父さんただいま。ちょっと込み入った話あるからこの人達家に上げるねー」

 そう言いながらバックヤードに消えていくユイ。

「そういう事なんで、お邪魔します」

 ライアンって呼ばれていたスーツの人も、カウンターに居たマスターに軽く会釈してそう告げ、ユイを追うようにバックヤードに消えていく。

「俺達も行きますか」

「そ、そうだね……あ、お邪魔します」

「お邪魔します」

 私達もマスターに会釈しながらバックヤードへと入り、案内されるまま階段を上る。
 そうして案内されたのは、なんの変哲もない一般住宅のリビングだ。

「まあ適当に座って欲しいっす。ちょっとウチは、お父さんにコーヒー淹れて貰ってくるんで。あ、お金は別に良いっすよ。サービスっす!」

「あ、ちょ……」

 お構いなくって言おうとしたけど、そのままユイは部屋を出て行ってしまい、部屋の中には私達と、ライアンさんが残される。
 ……正直今この瞬間にも色々聞きたいことはあるんだけど、多分話の主導権を握ると思うユイが席を外している間は中々誰も話し出す事が出来なかった。
 だから私とクロードはひとまずソファーに腰を沈め、ライアンさんは壁に背を預け、ユイを待つことにした。

 そしてしばらく会話も無く待っていた所で。

「お待たせっす!」

 コーヒーを淹れたユイが部屋へと戻ってきた。
 そして私達の前にコーヒーとスティックシュガーが用意される。
 とりあえずそれはありがたかった。
 ブラックは頑張らないと飲めないしね。

 ……まあそれは良いとして。

 そういった準備を終えたユイが私達の対面に座る。

「いや、改めて着いて来てくれてありがとうっす。さっきも言ったっすけど、自己紹介すら公衆の面前ではできないんでウチは」

「どうやらこの国では誰が聖女をやっているかは公にはされていないようですね」

「そ、お兄さんの言う通り公にはしていないっすね……って話をしてくるって事は、ウチが聖女やってるって事、どうやら滅茶苦茶バレてるみたいっすよライアンさん! ウチさっきは一応誤魔化したのに!」

「マジか……マジかぁ……」

 二人して頭を抱える。

 ぎゃ、逆にバレていないとでも思っていたのだろうか?
 む、無理があると思うよさっきの流れで隠し通すの。
 ま……まあとにかくこれで確定。

「なあこれ大丈夫か? バレちゃいけねえ相手にも知らねえうちにお前が聖女ってバレたりしてるんじゃねえか!?」

「うわー最悪っすよぉッ!」

 目の前の愉快な少女はこの国の聖女だ。
 ……私の思っている聖女っぽさからは、あまりにかけ離れているけど。
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