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一章 聖女追放の日

12 目覚めと出発

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 いつもの様に。
 いつも以上に眠りは浅く。
 それでも今までよりは少しだけ清々しい気分で朝を迎えられた。

 ……うん、だってそうだ。
 聖女になってからは目を覚ますと嫌な事が一杯待っていた。
 正直味方してくれていたクロードと二人で過ごしていた時間以外の全てが億劫だったと言っても良い。

 だからこれから何が待っているのかは分からなくても、それでも自分が察する事のできる嫌な事ではないという事だけで中々に希望に満ち溢れた朝に感じる。

「おはようございます、お嬢」

 ……クロードの存在がそう感じさせてくれる。

「うん。おはよ、クロード。昨日はちゃんと寝た?」

 私よりも先に起きてコーヒーを飲んでいたクロードにそう問いかける。

「ええ。流石にあの後は爆睡でしたよ。あ、お嬢もコーヒー飲みますか?」

「あ、うん。飲む。いつもの感じで」

 そう答えるとクロードはすぐに私の分のコーヒーも入れてくれた。
 うん、濃さとか砂糖の量とか絶妙なんだよね。
 ……すっごく落ち着く。

「ちなみにクロードはまたブラック?」

「そりゃまあコーヒーはブラック以外は邪道ですよ……っとすみません失言でした」

「その失言ほぼ毎回してるよね」

「まあこれだけは譲れないんで」

 とか言いながらクロードには譲れない事が一杯あるのをそれなりに長い付き合いになったから知っている。
 正直に見せてくれる。
 ……そういう所もクロードの事を信頼できる理由の一つなんだと思う。

 ちゃんとそういう一面も見せてくれるから……良くも悪くもクロードっていう人間の事が良く分かるし、言ってくれる事ややってくれる事が本物なんだって強く思える。
 ……例え何も分からなくても味方してくれれば嬉しいし心強いんだろうけど。
 それでもきっと全然違うんだと思う。
 
「……どうかしました? もしかして苦かったですか?」

 ぼんやりとそんな事を考えていると、クロードにそんな事を聞かれた。

「ううん。凄い私好みに甘めな感じ」

 絶妙に甘い。
 ……本当に居心地が良いんだ。





 そしてそれから流れで朝食を簡素に済ませた私達は再び動き出す事にした。

「じゃあ此処からは昨日と同じで。もし魔物と戦いになったらお嬢は飛び出してこないでください。俺がなんとかしますんで」

「もし、ね。大丈夫。昨晩も一晩魔物を寄せ付けなかったし、このまま危ない事無しでクロウフィールまで行けるよ」

「……無理はしないでくださいよ」

「クロードもね」

 そんなやり取りを交わしながら馬車は動き出す。
 目的地は隣国のクロウフィール王国。

 そこで何があるのか。
 何もないのか。
 それは分からないけれど。

 ……クロードとならうまくやっていける。
 うまくやっていきたいって、そう思うよ。
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