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七章 白と黒の追跡者
ex 醜悪の塊
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(……ボクの勝ちだ、ルミア)
今の一撃でルミアを殺害できたかどうかは分からない。
だけどまず間違いなく、決定的な一撃は入れる事ができた。
仮に生きていても、もはや戦闘を続行できる状態ではない筈。
そして結論。
「……こんな、大怪我負うの……多分初めて……だなぁ」
視界の先、ルミア・マルティネスはまだ立っていた。
シオンの一撃を辛うじて防ぎ切ったのだ……そう、辛うじて。
(殺しきれなかったか……でも戦闘能力は大幅に削った)
ルミアは五体満足なものの全身血塗れで、なんとか気合で立っていると言っても過言ではないという状態だった。
……少なくともある程度怪我の治療を行わなければ、元の様には動けない。
そしてそれを待つ義理も無く、元より終わらせるつもりだったのだから新たに言葉を紡ぐつもりも無い。
追撃。
次の攻撃でトドメを刺す。
そう考えてシオンが精霊術と魔術を構築し始めた次の瞬間だった。
突然天井付近から轟音が鳴り響く。
(……なんだ?)
意識のいくらかをその音と衝撃の方に割く。
次の瞬間、天井の一部が砕かれ何かが降ってきた。
そして視界の先、これからトドメを刺そうとしていたルミアは静かに笑みを浮かべる。
「……いや、なんかいい手は無いかって思ったけど、そうだこれが有ったよ。こんなゴミは今の私達の足元にも及ばないけど……シオン君には効果抜群だよね」
そんな言葉と共に、落下してきた何かは床に着地する。
「……ッ!」
その何かは人の形をしていた。
否、精霊の形をしていた。
ただその姿は、一目見ただけで嫌悪感で吐きそうになるような物だった。
「ああ、冷静に考えたらシオン君を殺すのが今で良かった。これはシオン君に見てもらわないとね」
「ルミア……お前……!」
その精霊は、酷く歪だった。
繋がった四肢それぞれが、明らかに一個人の物ではない。
それどころか全身、少なくとも目視できるだけでも別の何かが組み合わせられているように思えた。
そしてそんな存在が一体何なのかを、シオン・クロウリーは知っている。
「お前自分が何をやったのか分かっているのか!」
「ん? 分かってるよ。精霊のキメラを作ったんだ」
そんな事を……そんな吐き気を催す程不快な事を、ルミアは平然と笑って言って。
それから……どうしようもない程に至極真っ当な言葉をシオンに投げかける。
「で、シオン君はなんで第三者みたいな反応をしているのかな? それは通らないでしょ、キミは加害者側だよ」
そして楽しそうに、本当に楽しそうにルミアは言う。
「この私でも頭おかしいって思うような研究を99パーセント。完成間近まで進めていたのはキミだよね……シオン・クロウリー君」
今の一撃でルミアを殺害できたかどうかは分からない。
だけどまず間違いなく、決定的な一撃は入れる事ができた。
仮に生きていても、もはや戦闘を続行できる状態ではない筈。
そして結論。
「……こんな、大怪我負うの……多分初めて……だなぁ」
視界の先、ルミア・マルティネスはまだ立っていた。
シオンの一撃を辛うじて防ぎ切ったのだ……そう、辛うじて。
(殺しきれなかったか……でも戦闘能力は大幅に削った)
ルミアは五体満足なものの全身血塗れで、なんとか気合で立っていると言っても過言ではないという状態だった。
……少なくともある程度怪我の治療を行わなければ、元の様には動けない。
そしてそれを待つ義理も無く、元より終わらせるつもりだったのだから新たに言葉を紡ぐつもりも無い。
追撃。
次の攻撃でトドメを刺す。
そう考えてシオンが精霊術と魔術を構築し始めた次の瞬間だった。
突然天井付近から轟音が鳴り響く。
(……なんだ?)
意識のいくらかをその音と衝撃の方に割く。
次の瞬間、天井の一部が砕かれ何かが降ってきた。
そして視界の先、これからトドメを刺そうとしていたルミアは静かに笑みを浮かべる。
「……いや、なんかいい手は無いかって思ったけど、そうだこれが有ったよ。こんなゴミは今の私達の足元にも及ばないけど……シオン君には効果抜群だよね」
そんな言葉と共に、落下してきた何かは床に着地する。
「……ッ!」
その何かは人の形をしていた。
否、精霊の形をしていた。
ただその姿は、一目見ただけで嫌悪感で吐きそうになるような物だった。
「ああ、冷静に考えたらシオン君を殺すのが今で良かった。これはシオン君に見てもらわないとね」
「ルミア……お前……!」
その精霊は、酷く歪だった。
繋がった四肢それぞれが、明らかに一個人の物ではない。
それどころか全身、少なくとも目視できるだけでも別の何かが組み合わせられているように思えた。
そしてそんな存在が一体何なのかを、シオン・クロウリーは知っている。
「お前自分が何をやったのか分かっているのか!」
「ん? 分かってるよ。精霊のキメラを作ったんだ」
そんな事を……そんな吐き気を催す程不快な事を、ルミアは平然と笑って言って。
それから……どうしようもない程に至極真っ当な言葉をシオンに投げかける。
「で、シオン君はなんで第三者みたいな反応をしているのかな? それは通らないでしょ、キミは加害者側だよ」
そして楽しそうに、本当に楽しそうにルミアは言う。
「この私でも頭おかしいって思うような研究を99パーセント。完成間近まで進めていたのはキミだよね……シオン・クロウリー君」
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