427 / 431
七章 白と黒の追跡者
ex 頂上決戦
しおりを挟む
レベッカが離脱したのを確認しつつ、前方に。
否、全方向。今自分が居る空間のあらゆる要素に注意を向ける。
レベッカに言った通り、今ので殺せている筈が無い。
あの程度で殺せる相手なら、今こうして対峙していない。
「生きてるんだろルミア!」
シオンは視界の先の土煙の中にいるであろうルミアに対してそう叫ぶ。
するとシオンの言葉に反応するように、土煙が風のような力で一気に晴れる。
そこに立っているのは……未だ無傷で立つ、霊装の槍を手にしたルミア・マルティネス。
「やあやあシオン君。待ちわびたよ」
「結構本気で殺しに掛かってきた癖に良く言うよ」
「そりゃまあシオン君で遊ぶのはもういいかなって思ったら殺そうとするよ。ただキミがその度に偶然か必然か生き残って私の考えを狂わせてくれる。まだ遊べる。だから今となっては殺さなくて良かったなって思うよ。だからほんと……うん。ちゃんと面白い対象のまま無事此処まで来てくれて良かった。待ちわびたよ本当に」
「悪いけど僕はあんまりキミとは関わりたくないんだ。待たせてしまって申し訳ないんだけど、早々と幕を下ろさせてもらうよ」
シオンがそう言うと、ルミアは一拍空けて笑みを浮かべる。
「そういう意味でも本当に待ちわびたよ。これは同業者としての言葉だけどさ……キミがそういう事を言える領域にまで到達するのを待ってたんだ。いや、達するというか……おかえりって言うべきなのかな」
そう言ったルミアは軽く槍を構える。
「そういうキミを倒して初めて私は、心の底から人生を謳歌できる!」
そう叫んだルミアはその場で勢いよく槍を振るい、衝撃波を発生させる。
超高速の衝撃波。
それ以外の何物でもない衝撃波。
「……」
それをシオンは横に飛んで躱した。
その表情に一切の焦りは無い。
「キミにしてはえらく単調な攻撃だね。キミならもっと一癖も二癖もある攻撃をしてきそうなものだけど」
そうやって煽る余裕すらある。
対するルミアの表情は、どこまで本気なのかは分からないが、あまり余裕が見られない。
「良く言うよ。そういうの考えなしに放ったらキミの思う壺じゃん」
そう言ってルミアが再び放った衝撃波も、再びシオンは軽く身を捻り回避。
回避しながら、改めて目の前の敵の化物染みた力量に驚かされる。
(……たった一度で全部お察しか)
たった一度こちらの手の内を見せただけで。
触れてもいない相手の精霊術のコントロールを奪うという秘策を一度見せただけで。
起きた現象を。
こちらに起こすことが可能な現象を。
それを正確に理解し、それに合わせ行動を最適化し始めている。
……本当に恐ろしい。
紛れもなく天才だとシオンは思う。
だけど此処までは想定内。
そして事がせめて表面上だけでも想定内に進んでいる時点で、この戦いには今度こそ勝機があるのだと。
そう、確信する事ができた。
否、全方向。今自分が居る空間のあらゆる要素に注意を向ける。
レベッカに言った通り、今ので殺せている筈が無い。
あの程度で殺せる相手なら、今こうして対峙していない。
「生きてるんだろルミア!」
シオンは視界の先の土煙の中にいるであろうルミアに対してそう叫ぶ。
するとシオンの言葉に反応するように、土煙が風のような力で一気に晴れる。
そこに立っているのは……未だ無傷で立つ、霊装の槍を手にしたルミア・マルティネス。
「やあやあシオン君。待ちわびたよ」
「結構本気で殺しに掛かってきた癖に良く言うよ」
「そりゃまあシオン君で遊ぶのはもういいかなって思ったら殺そうとするよ。ただキミがその度に偶然か必然か生き残って私の考えを狂わせてくれる。まだ遊べる。だから今となっては殺さなくて良かったなって思うよ。だからほんと……うん。ちゃんと面白い対象のまま無事此処まで来てくれて良かった。待ちわびたよ本当に」
「悪いけど僕はあんまりキミとは関わりたくないんだ。待たせてしまって申し訳ないんだけど、早々と幕を下ろさせてもらうよ」
シオンがそう言うと、ルミアは一拍空けて笑みを浮かべる。
「そういう意味でも本当に待ちわびたよ。これは同業者としての言葉だけどさ……キミがそういう事を言える領域にまで到達するのを待ってたんだ。いや、達するというか……おかえりって言うべきなのかな」
そう言ったルミアは軽く槍を構える。
「そういうキミを倒して初めて私は、心の底から人生を謳歌できる!」
そう叫んだルミアはその場で勢いよく槍を振るい、衝撃波を発生させる。
超高速の衝撃波。
それ以外の何物でもない衝撃波。
「……」
それをシオンは横に飛んで躱した。
その表情に一切の焦りは無い。
「キミにしてはえらく単調な攻撃だね。キミならもっと一癖も二癖もある攻撃をしてきそうなものだけど」
そうやって煽る余裕すらある。
対するルミアの表情は、どこまで本気なのかは分からないが、あまり余裕が見られない。
「良く言うよ。そういうの考えなしに放ったらキミの思う壺じゃん」
そう言ってルミアが再び放った衝撃波も、再びシオンは軽く身を捻り回避。
回避しながら、改めて目の前の敵の化物染みた力量に驚かされる。
(……たった一度で全部お察しか)
たった一度こちらの手の内を見せただけで。
触れてもいない相手の精霊術のコントロールを奪うという秘策を一度見せただけで。
起きた現象を。
こちらに起こすことが可能な現象を。
それを正確に理解し、それに合わせ行動を最適化し始めている。
……本当に恐ろしい。
紛れもなく天才だとシオンは思う。
だけど此処までは想定内。
そして事がせめて表面上だけでも想定内に進んでいる時点で、この戦いには今度こそ勝機があるのだと。
そう、確信する事ができた。
0
お気に入りに追加
372
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる