人の身にして精霊王

山外大河

文字の大きさ
上 下
397 / 431
七章 白と黒の追跡者

ex ウォーミングアップ

しおりを挟む
「うっわ、成程そう来るかー。枷付けてるのに精霊術使うとか……うーん。うまいこと出力形式変えてきた感じかなぁ。で、それがエルちゃんの特異性っと。何にしても私行かなくて良かったー嫌な予感してたし」

 手にしていた宝石のような物を眺めながら、何処かに移動中のルミアはそんな考察を展開する。

 彼女が手にしていたのは自信が開発した新型の枷のコントローラーだ。
 精霊の精霊術を押さえるだけでなく、枷を嵌めた精霊の精霊術を70%近い精度、出力で再現する、自分やシオン、そして極一部の研究者と違って、契約した精霊以外の精霊術を低クオリティーですら使えない才能の無い頭の悪い一般人に向けた新技術。
 精霊を武器に加工する技術と同等かそれ以上の価値のある精霊学の結晶。
 それでシオンの契約精霊とエルの精霊術を、先程までルミアは一時的に使える様になっていた。
 引き出せば理論上精霊側に激痛が走るのだが、そんな事はルミアにはどうでも良くて。寧ろ嗜虐心が満たされて。とにかくそんな状態でエルという精霊のおおよそのスペックを調べたり、シオンの位置情報を調べたりしていた訳だ。

 その反応が消えた。消える前に異質な反応を示した事から、おそらくそれが報告にあった力なのだろうと察する。

「……っと、そうなっちゃったらほんとやる事手早くやっちゃおう。ゆっくり待ってる場合じゃ無くなった」

 そして軽く走り出したルミアは立ち止まると、神経を集中させるように瞼を閉じる。
 それが大体30秒程続いたところで、目を開いた。

「よーしやる事終わり! いやーこれが簡単にできるあたり私ってほんと天才だわー」

 そう言って笑ったルミアは、どこか楽しそうに言う。

「いや、駄目だね。慢心は良くないよ、ほんと良くない。慢心してドヤって馬鹿みたいに惨めに負けたシオン君みたいになりたくないしねー」

 と、そこまで言って、尚も楽しそうに笑うルミアは、そのまま少し気合いを入れるように言う。

「よし、じゃあゆっくり待つ予定から変更して、私から動きますか」

 そう言って体を伸ばしたルミアは歩き出し、そして言う。
 本当に楽しそうに。

「さぁ、ウォーミングアップだ。待っててね、エルちゃん」

 純粋な悪意の塊が動き出す。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

処理中です...