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六章 君ガ為のカタストロフィ
7 実戦訓練 下
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決まり手は一本背負いだった。
あの後も中距離からの攻撃の打ち合いや至近距離の殴り合いを続けた中で、自分でここだと思えるタイミングが訪れた。
そこで風の塊を作り出し一気に加速して拳を振るったが、それに辛うじてという様な表情で対応され、殴りかかった腕を掴まれ一本背負い。俺が纏っていた推進力と誠一の腕の力が合わさった状態で地面に叩き付けられた。
だけどまあそれだけで戦闘不能に陥っていれば多分俺はこの世界に戻ってくる前にどこかで死んでいた訳で、だから流石にそれで意識を失ったりはしなかったが、それでもそれでチェックメイト一歩手前だ。ほぼ決まり手と言っていい。
誠一は次の瞬間に魔術を使って手に何かを纏わせ、倒れている俺に殴りかかってきたのだ。
そしてそこから数発の連撃で意識を失い、気が付けばシュミレータを使っていた部屋へと戻ってきていた。シュミレータが強制終了したのだろう。
「とりあえず俺の勝ちだな」
俺が気を失ったのを確認してからシュミレータを中止して戻ってきた誠一が、シュミレータ使用の為に転がっていたベッドから体を起こして立ち上がりながらそう言ってくる。
「……完敗だ」
やはり手も足も出なかったわけでは無かったが、それでもまともな戦い方を知っていて、出力だって体感上今の俺と同じ位はある誠一には適わない。多分十回やって一回勝てれば御の字だ。
だけど俺の言葉は否定する。
「そうでもねえさ。そこまで言えるほど余裕ねえよこっちも。それにあれだ。随分良くなってるがまだまだ発展途上だしな。まあそれは俺にも言える話だが。でもまあとりあえず今でも充分ウチの組織の中では強い方だって言えると思うぜ?」
「それは元の出力が高いからだ。でなけりゃ下の方だろ」
俺がこの世界に辿り着いた直後、対策局の人間が数人がかりでアイラと戦っていた。
俺はそのアイラの攻撃を一応は一人で止められた。だけどそれは俺の技能でもどうにかなるレベルにまで身体能力や動体視力が強化されていたからに過ぎない。
そしてそれらは全て契約によってエルに依存して得ている力だ。
それを考慮しなければ俺はまだまだ下の下といった所だと思う。
「だとしても数回の訓練の結果にしちゃ十分だと思うがな。呑み込みが早い。良い感じに成長してる」
そこまで言った所でふと思いだしたように誠一は言う。
「それにだ。シュミレータだから肉体的な成長はない筈なんだがな、心なしか出力の方も上がってる気もするしな」
「……え?」
まったく考えていなかった事を指摘されて思わずそんな言葉が出てくる。
「特訓の中でうまく効率よく使う術を身に着けたって事なんじゃねえかと思う。だとすりゃ結果オーライだがお前の実力だよそれは。お前が戦い方を覚えてっている証拠だ」
「……いや、多分気のせいだろ」
俺の成長であるならばそれは嬉しい事なのだろうけど、俺は誠一の言葉を否定する。
「コントロールはともかく精霊術は力を出す事に関しては単純だ。それに肉体強化に関して言えば、できる事っていえば精々出力をセーブする位。これ以上何かやろうと思えば、多分もっと違う精霊術を重ね掛けでもするか……エルの力が強くなりでもしねえ限りは変わらねえよ。基本この力はエルに依存してるからな。それに前にエルに聞いたが、使い込んだからといって精霊の力の強さは変わらないらしいし。だからそれは変わらねえんだ。変わっていたらそれこそ何かがおかしい」
もしも精霊術が単純に使い込む事によって強くなる様な力なら、多分もう少しくらいは精霊は人間に抵抗で来ている。それ相応の力を携えている。
「なるほどな。まあだとすれば俺の勘違いか。悪い、変な事言った」
「いや、いいよ。そういう方向は端から期待してねえことだし。糠喜びなんかしねえよ」
「そうか。ならいいが……まあそういう事なら話進めっか。とりあえず今の実践踏まえて俺から言える事はだな――」
そして誠一が指導として上げたのはこういう事だった。
純粋な格闘技術や立ち回り。客観的に見た風の使い方の発案。
基本的にはそういう事だ。
例えば俺が魔術師であれば他にも指導内容は色々と増えたのだろう。だけど俺は魔術師じゃない。使う力は精霊の力だ。
誠一達が魔術の補助として使っている呪符や、剣や対戦車ライフルなどの武器。誠一の場合は指ぬきグローブみたいな装備は、あくまで魔術を補助する道具だ。このシュミレータを扱えているという訳で精霊術と魔術はある程度近い存在なのかもしれないが、厳密に魔術を使うための道具を魔術じゃない力で扱うのは無理な話だった。
そして魔術そのものも俺には使えない。誠一達も覚えさせる事ができないし、今後も覚えることはないだろう。
それは別に俺に魔術の才能がないとかそういう事ではなく、誠一曰く本来人間ならば活動している筈の魔術を使うための魔力を生成する器官が閉じてしまっているらしい。
考えられる原因としては精霊術という力を使っているからだろうか。現に俺の中には魔力ではなく精霊の力が流れている。
この状態で魔術を使おうとすれば、それこそ無理矢理にでもその魔力を生成する器官をこじ開けでもしない限りは無理だそうだ。
だから誠一や他の対策局の人間から教えてもらえるのは、強化された身体能力での根本的な戦い方や俺の力を考察して俺の手札を増やす為の発案などになる。
「――まあこんなところだな。その辺を改善していけばいいと思う。つーわけで、それを改善する為の特訓をこれからもう一回シュミレータ内でやるわけだが……どうする、小休憩するか?」
「いや、大丈夫だ。時間が惜しい。続きをやろう」
「ところがどっこい俺が疲れた。五分休もう」
「……そのつもりなら聞くなよ」
「まあいいじゃねえの」
「悪くはねえけどさ」
まあ確かにいい事はいい。どうもあのシュミレータは頭が疲れる。そりゃ脳をフル稼働させるような事をしているんのだし当然だとは思うが。
そしてお互い買っておいたスポーツドリンクを飲み始める。激しい運動で汗をかいた気がするが、実際の体は結構快適空間にいたわけで、本当にただの水分補給だ。でも感覚的には運動後のソレなので不思議な気分だ。
そんな気分に浸っていると部屋の中が静寂に包まれる。そしてしばらくして俺の中で一つの疑問が生まれる。こうして実戦をしたあとだからかもしれない。
「なあ、誠一。ちょっと聞いてもいいか?」
「どした?」
俺は実戦訓練を始める前の誠一の兄貴との会話を思い返しながら、誠一に問う。
「天野宗谷ってっ人だっけか。その人が此処で一番強いんだよな」
「ああ、そうだ」
「実際どの位強いんだ?」
その人は精霊に対して嫌悪感を持つ人間の中だと聞いたから、その辺りはどうしても気になる。
もしかすると対峙するような事になるかも知れないから。
「そうだな……」
誠一は一拍開けたあと、軽くため息を付いてから言う。
「俺とお前が二人掛かりでぶつかっても勝てない位には強いぞ」
その言葉に多分だとかおそらくだとか、そういった曖昧な表現は使われない。
「二人掛かりでもか」
「ああ無理だ。次元がちげえよあの人は」
断言だ。明確に実力差がある事を突きつけてくる。
「次元が違う……か」
その言葉を聞いて脳裏に浮かべるのがエルの剣化だ。
あれは確かに別次元の力だ。戦いの素人が大人数相手に立ち回れる程の力。例えばあの力と対峙すれば二人掛かりではどうにもならないだろう。
もしも仮に天野宗也という魔術師があれだけの力を持っていたとすれば……そんな相手と対峙するような事になったら、一体どうなるのだろうか。
……その結果は碌な事になっていないだろう。
「だからこそあの人には気を付けたほうがいい。もしそういう事になったら、少なくとも今の俺達にどうこうできる可能性は薄いからな。どうやってもあの手段を使う事になる」
「……ああ、そうなるな」
あの手段。あまり使いたくない手段。
それがまさに今まで俺を無茶な戦いで生き残らせ続けてきたエルの剣化だ。
それを使う様な展開には極力したくない。俺が単独で戦う為の特訓をしている理由の一つがそれだ。
エルを戦いに巻き込むような真似はしたくない。
できる事ならエルを直接巻き込む前に事を終わらせる。そういう風になりたいんだ。
エルには普通の生活を送ってもらいたいんだ。
だから今はエルの剣化は最後の手段。そうしなければどうにもならない様な最悪な状況のみ頼る様な手段だ。
そして多分件の相手と戦う様な状況になれば、どうやってもエルの剣化無しでは太刀打ちできないだろう。次元が違う強さの相手がエルを狙う様な事があれば。エルに感づかれる前に俺だけの力で食い止めるなんてのは無理な話だ。だから結局エルの力を頼らざるを得ない。
つまりは戦わなければならない様な状況に陥った時点で最悪な展開だという事だ。
「ま、そうならないようにうまくやろうぜ。俺らも協力するからよ」
結局の所それが一番大事だ。
そういう事にならないようにうまくやる。それがうまく行けば何も起きないし、寧ろ俺が一番伸ばすべきなのは戦う事より、そういう風にうまくやりすごせる様な対人能力なのかもしれない。
「ああ、頼む」
「おう……っと、そろそろ五分か……さて、そろそろはじめっか」
誠一がそう言いながら手にしていたペットボトルをベッドに備え付けられていたドリンクホルダーに差し込む。
「ああ、やろう」
今からまた特訓が始まる。
この特訓で剣の練習はできない。エルを連れて来れば可能だろうが、そうでなければ難しいらしい。
だから再び拳を握る。
ここでこうして学んだことはその最後の手段を運用している際にもある程度反映できるだろう。
だからしっかりと特訓の全てを吸収しよう。
いずれ来るかもしれない厄災からエルを守るために。
エルと戦う様な事になった時に、エルと一緒に生き残るために。
……エルの為に。
もっともっと強くなろう。
あの後も中距離からの攻撃の打ち合いや至近距離の殴り合いを続けた中で、自分でここだと思えるタイミングが訪れた。
そこで風の塊を作り出し一気に加速して拳を振るったが、それに辛うじてという様な表情で対応され、殴りかかった腕を掴まれ一本背負い。俺が纏っていた推進力と誠一の腕の力が合わさった状態で地面に叩き付けられた。
だけどまあそれだけで戦闘不能に陥っていれば多分俺はこの世界に戻ってくる前にどこかで死んでいた訳で、だから流石にそれで意識を失ったりはしなかったが、それでもそれでチェックメイト一歩手前だ。ほぼ決まり手と言っていい。
誠一は次の瞬間に魔術を使って手に何かを纏わせ、倒れている俺に殴りかかってきたのだ。
そしてそこから数発の連撃で意識を失い、気が付けばシュミレータを使っていた部屋へと戻ってきていた。シュミレータが強制終了したのだろう。
「とりあえず俺の勝ちだな」
俺が気を失ったのを確認してからシュミレータを中止して戻ってきた誠一が、シュミレータ使用の為に転がっていたベッドから体を起こして立ち上がりながらそう言ってくる。
「……完敗だ」
やはり手も足も出なかったわけでは無かったが、それでもまともな戦い方を知っていて、出力だって体感上今の俺と同じ位はある誠一には適わない。多分十回やって一回勝てれば御の字だ。
だけど俺の言葉は否定する。
「そうでもねえさ。そこまで言えるほど余裕ねえよこっちも。それにあれだ。随分良くなってるがまだまだ発展途上だしな。まあそれは俺にも言える話だが。でもまあとりあえず今でも充分ウチの組織の中では強い方だって言えると思うぜ?」
「それは元の出力が高いからだ。でなけりゃ下の方だろ」
俺がこの世界に辿り着いた直後、対策局の人間が数人がかりでアイラと戦っていた。
俺はそのアイラの攻撃を一応は一人で止められた。だけどそれは俺の技能でもどうにかなるレベルにまで身体能力や動体視力が強化されていたからに過ぎない。
そしてそれらは全て契約によってエルに依存して得ている力だ。
それを考慮しなければ俺はまだまだ下の下といった所だと思う。
「だとしても数回の訓練の結果にしちゃ十分だと思うがな。呑み込みが早い。良い感じに成長してる」
そこまで言った所でふと思いだしたように誠一は言う。
「それにだ。シュミレータだから肉体的な成長はない筈なんだがな、心なしか出力の方も上がってる気もするしな」
「……え?」
まったく考えていなかった事を指摘されて思わずそんな言葉が出てくる。
「特訓の中でうまく効率よく使う術を身に着けたって事なんじゃねえかと思う。だとすりゃ結果オーライだがお前の実力だよそれは。お前が戦い方を覚えてっている証拠だ」
「……いや、多分気のせいだろ」
俺の成長であるならばそれは嬉しい事なのだろうけど、俺は誠一の言葉を否定する。
「コントロールはともかく精霊術は力を出す事に関しては単純だ。それに肉体強化に関して言えば、できる事っていえば精々出力をセーブする位。これ以上何かやろうと思えば、多分もっと違う精霊術を重ね掛けでもするか……エルの力が強くなりでもしねえ限りは変わらねえよ。基本この力はエルに依存してるからな。それに前にエルに聞いたが、使い込んだからといって精霊の力の強さは変わらないらしいし。だからそれは変わらねえんだ。変わっていたらそれこそ何かがおかしい」
もしも精霊術が単純に使い込む事によって強くなる様な力なら、多分もう少しくらいは精霊は人間に抵抗で来ている。それ相応の力を携えている。
「なるほどな。まあだとすれば俺の勘違いか。悪い、変な事言った」
「いや、いいよ。そういう方向は端から期待してねえことだし。糠喜びなんかしねえよ」
「そうか。ならいいが……まあそういう事なら話進めっか。とりあえず今の実践踏まえて俺から言える事はだな――」
そして誠一が指導として上げたのはこういう事だった。
純粋な格闘技術や立ち回り。客観的に見た風の使い方の発案。
基本的にはそういう事だ。
例えば俺が魔術師であれば他にも指導内容は色々と増えたのだろう。だけど俺は魔術師じゃない。使う力は精霊の力だ。
誠一達が魔術の補助として使っている呪符や、剣や対戦車ライフルなどの武器。誠一の場合は指ぬきグローブみたいな装備は、あくまで魔術を補助する道具だ。このシュミレータを扱えているという訳で精霊術と魔術はある程度近い存在なのかもしれないが、厳密に魔術を使うための道具を魔術じゃない力で扱うのは無理な話だった。
そして魔術そのものも俺には使えない。誠一達も覚えさせる事ができないし、今後も覚えることはないだろう。
それは別に俺に魔術の才能がないとかそういう事ではなく、誠一曰く本来人間ならば活動している筈の魔術を使うための魔力を生成する器官が閉じてしまっているらしい。
考えられる原因としては精霊術という力を使っているからだろうか。現に俺の中には魔力ではなく精霊の力が流れている。
この状態で魔術を使おうとすれば、それこそ無理矢理にでもその魔力を生成する器官をこじ開けでもしない限りは無理だそうだ。
だから誠一や他の対策局の人間から教えてもらえるのは、強化された身体能力での根本的な戦い方や俺の力を考察して俺の手札を増やす為の発案などになる。
「――まあこんなところだな。その辺を改善していけばいいと思う。つーわけで、それを改善する為の特訓をこれからもう一回シュミレータ内でやるわけだが……どうする、小休憩するか?」
「いや、大丈夫だ。時間が惜しい。続きをやろう」
「ところがどっこい俺が疲れた。五分休もう」
「……そのつもりなら聞くなよ」
「まあいいじゃねえの」
「悪くはねえけどさ」
まあ確かにいい事はいい。どうもあのシュミレータは頭が疲れる。そりゃ脳をフル稼働させるような事をしているんのだし当然だとは思うが。
そしてお互い買っておいたスポーツドリンクを飲み始める。激しい運動で汗をかいた気がするが、実際の体は結構快適空間にいたわけで、本当にただの水分補給だ。でも感覚的には運動後のソレなので不思議な気分だ。
そんな気分に浸っていると部屋の中が静寂に包まれる。そしてしばらくして俺の中で一つの疑問が生まれる。こうして実戦をしたあとだからかもしれない。
「なあ、誠一。ちょっと聞いてもいいか?」
「どした?」
俺は実戦訓練を始める前の誠一の兄貴との会話を思い返しながら、誠一に問う。
「天野宗谷ってっ人だっけか。その人が此処で一番強いんだよな」
「ああ、そうだ」
「実際どの位強いんだ?」
その人は精霊に対して嫌悪感を持つ人間の中だと聞いたから、その辺りはどうしても気になる。
もしかすると対峙するような事になるかも知れないから。
「そうだな……」
誠一は一拍開けたあと、軽くため息を付いてから言う。
「俺とお前が二人掛かりでぶつかっても勝てない位には強いぞ」
その言葉に多分だとかおそらくだとか、そういった曖昧な表現は使われない。
「二人掛かりでもか」
「ああ無理だ。次元がちげえよあの人は」
断言だ。明確に実力差がある事を突きつけてくる。
「次元が違う……か」
その言葉を聞いて脳裏に浮かべるのがエルの剣化だ。
あれは確かに別次元の力だ。戦いの素人が大人数相手に立ち回れる程の力。例えばあの力と対峙すれば二人掛かりではどうにもならないだろう。
もしも仮に天野宗也という魔術師があれだけの力を持っていたとすれば……そんな相手と対峙するような事になったら、一体どうなるのだろうか。
……その結果は碌な事になっていないだろう。
「だからこそあの人には気を付けたほうがいい。もしそういう事になったら、少なくとも今の俺達にどうこうできる可能性は薄いからな。どうやってもあの手段を使う事になる」
「……ああ、そうなるな」
あの手段。あまり使いたくない手段。
それがまさに今まで俺を無茶な戦いで生き残らせ続けてきたエルの剣化だ。
それを使う様な展開には極力したくない。俺が単独で戦う為の特訓をしている理由の一つがそれだ。
エルを戦いに巻き込むような真似はしたくない。
できる事ならエルを直接巻き込む前に事を終わらせる。そういう風になりたいんだ。
エルには普通の生活を送ってもらいたいんだ。
だから今はエルの剣化は最後の手段。そうしなければどうにもならない様な最悪な状況のみ頼る様な手段だ。
そして多分件の相手と戦う様な状況になれば、どうやってもエルの剣化無しでは太刀打ちできないだろう。次元が違う強さの相手がエルを狙う様な事があれば。エルに感づかれる前に俺だけの力で食い止めるなんてのは無理な話だ。だから結局エルの力を頼らざるを得ない。
つまりは戦わなければならない様な状況に陥った時点で最悪な展開だという事だ。
「ま、そうならないようにうまくやろうぜ。俺らも協力するからよ」
結局の所それが一番大事だ。
そういう事にならないようにうまくやる。それがうまく行けば何も起きないし、寧ろ俺が一番伸ばすべきなのは戦う事より、そういう風にうまくやりすごせる様な対人能力なのかもしれない。
「ああ、頼む」
「おう……っと、そろそろ五分か……さて、そろそろはじめっか」
誠一がそう言いながら手にしていたペットボトルをベッドに備え付けられていたドリンクホルダーに差し込む。
「ああ、やろう」
今からまた特訓が始まる。
この特訓で剣の練習はできない。エルを連れて来れば可能だろうが、そうでなければ難しいらしい。
だから再び拳を握る。
ここでこうして学んだことはその最後の手段を運用している際にもある程度反映できるだろう。
だからしっかりと特訓の全てを吸収しよう。
いずれ来るかもしれない厄災からエルを守るために。
エルと戦う様な事になった時に、エルと一緒に生き残るために。
……エルの為に。
もっともっと強くなろう。
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