人の身にして精霊王

山外大河

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三章 誇りに塗れた英雄譚

ex やはり彼女は知りえない

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 その日の晩、ふと目が覚めたエルは、気持ち良さそうに眠るエイジの寝顔を見ながら思う。
 どうしてエイジが自分を助けてくれたのか。
 エルにはイマイチそれが理解できていなかったが、今日星を見ながら何気なく語られたエイジの言葉で、それを知ることができた。

 ただそれが正しいと思ったから。文字通り本当にそれだけだったのだ。
 例えどうしようもない状況でも。助ける対象が自分を半殺しにした様な相手でも。それが正しいと思う事ができたのならば、それだけで彼は動き出す。
 その話を、動機を聞いて。彼がこれまで取ってきた行動を知って。それらが紛れも無く本当の事だと認識したと仮定して、果たしてその思考にどういう反応を示すだろうか。
 例えばエルはそうした行動を取るエイジをヒーローみたいだと評した。その言葉に嘘は無く、実際彼女の目にはそういう風に写っている。自分なんかを救い上げてくれたヒーローなんだと、そういう感情を抱いている。
 それ以外に何も無い。ただそれは誇るべき事と受けとめる。
 では第三者が同じ話を聞かされた場合、一体どう思うのだろうか?
 誇り云々の話は知らないにしても、行動理念を見聞きしている彼の親友と、彼と共闘した少年はその話を聞いた時に一体何を思っただろうか。
 何を思い、その先に何を見ただろうか。

 少し考えれば得られる解。その答えをやはり彼女は知り得ない。
 視線の先に見えるのは、自分にとって一番大切な人の寝顔。
 そんな寝顔を見て。
 ただ、目の前の幸せを噛みしめた。
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