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2-2 剣と銃
4 きっと自分の意思で
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「鉄平、缶コーヒー買ってきたのじゃ」
通話が終わった頃、自分の分の菓子パンとコーヒー牛乳と、鉄平の分の缶コーヒーを手にしたユイが車内に戻ってきた。
「……鉄平? どうした、顔色が悪いぞ」
シートベルトを取り付けながら、どこか心配そうにそう聞いて来るユイに静かに言葉を返す。
「……ああ、だろうな」
どうやら神崎との通話で得た情報は、極力平静を保とうとする自分の表情を変えるには十分すぎるものだったらしい。
「神崎さんからの電話じゃったよな? 今起きている事関連の話じゃろ? どうじゃった!?」
「現場に向かいながら話す。だけど……もしお前が行きたくないって途中で思ったら進路変更するからな」
「鉄平。もうその話は済んだじゃろ。だからこうしてコンビニで補給しているわけで」
「まあそれでも……落ち着いて聞いてくれ」
言いながら車を動かしコンビニを出る。
進路は一先ずは事が起きている現場。
……一先ずは。
***
それから、神崎から聞いた情報をそのままユイへと伝えた。
今回のアンノウンは最初に赤坂の前に出現し、その精神を乗っ取った。
そして彼女を救出すると同時に、かつて自分達の時に選んでくれたように、人間の姿を持つアンノウンの命を奪わない戦い方をしたそうだ。
具体的には赤坂とアンノウンを引き剝がす。
引き剥がしたとして赤坂の意識が真っ当である保障は無いが、赤坂が魔術師である以上、アンノウンの活用という手段を剥奪してしまえば同じ魔術師であるウィザードであれば、魔術師赤坂伊月を無力化できる。
そしてアンノウン側もユイがそうであるように、武器として使われていない間の戦闘能力は決して高くはない筈だ。
故に引き剥がせさえすればその後、半ば強引にでもどうにかできる。
どうにかできるというよりも、どうにかする。
そういう算段だったらしい。
だが誤算があった。
ユイという剣のアンノウンが近くに居たが故の誤算。
通常の手段では、人間とアンノウンのペアリングを切る事が出来ないという先入観。
結論を言えば、向こうがユイと同タイプなら勝てていた。
篠原が後衛でサポートし、柚子が前衛で近接戦闘を優位に運び、そして隙を突いて力尽くで銃の形態のアンノウンを引き剥がしたのだ。
ユイと同じならそれで終わり。
自分とユイで同じことをされれば、自分もユイもほぼ完全に無力化されるから。
だけどそうはならなかった。
きっとかつてのユイが鉄平にしたように。
今回のアンノウンが赤坂にしたように。
同じ事が柚子にも行われた。
そしてその柚子が篠原を戦闘不能に追い込んで今に至る。
……そこまで。
……そこまで話した所でユイが口を開く。
「鉄平……」
買ってきた菓子パンには殆ど口を付けず、血の気の引いた表情を浮かべていたユイは鉄平に問いかける。
「こんなの絶対どうにかしなくちゃいけないじゃろ……なのに、なのに鉄平」
どこか困惑した声音で。
「なんで……こんな状況でワシに配慮したのじゃ?」
それはコンビニを出る前にユイに言った、やりたくないなら進路変更するという事についてだろう。
何でも何も、理由はちゃんとある。
「なんでってお前……相手はお前と同じようなタイプのアンノウンで……」
それと戦わせる事が、ユイに対して精神的に大きな負担となる。
「……」
だからこそ。
だからこそだ。
だけど指摘されてようやく違和感に気付いた。
「違うじゃろ! いくらなんでも優先順位が……ッ!」
「……ッ!」
「鉄平がなんで気を使ってくれているのかは分かるのじゃ! だけど……柚子が乗っ取られて篠原さんも大怪我じゃ! 他の皆もどうなるか分からん。そんなの……ワシの状態がどうであれ、やれる事をやらないといけない時じゃ!」
「……」
「ワシの事を心配してくれてるのは嬉しい……でもそれは違うのじゃ鉄平!」
確かに、今のユイには少しでも負担を掛けたくはない。
だけど今は状況が状況で、流石に優先順位は変わってくる筈で。
いくらなんでもこれはユイに頭を下げてでも協力して貰わないといけないような状況な筈で。
「…………確かに、そうだな。悪い、俺もさっきは気が動転してたんだ」
「……今は?」
「大丈夫。やらねえといけねえ事はちゃんと見えている。俺達にやれる事をやるんだ」
「……うん。ワシらで皆を助けるんじゃ」
「おう」
言いながらこの先の戦いに向けて気合を乗せる。
そう、皆を救うのだ。
ユイがそうしたいと言っているなら。
(……いや、違う。そうじゃねえだろ。俺だって皆を……)
どこか、自分の思考にノイズが走っているように、一瞬考えが纏まらなくなる。
(……まあそんな事はどうでも良い。そんな場合じゃねえ)
纏める必要の無い事は纏めずに、この先へと意識を向ける。
勝つ為に。
救うために。
きっと自分の意思で。
通話が終わった頃、自分の分の菓子パンとコーヒー牛乳と、鉄平の分の缶コーヒーを手にしたユイが車内に戻ってきた。
「……鉄平? どうした、顔色が悪いぞ」
シートベルトを取り付けながら、どこか心配そうにそう聞いて来るユイに静かに言葉を返す。
「……ああ、だろうな」
どうやら神崎との通話で得た情報は、極力平静を保とうとする自分の表情を変えるには十分すぎるものだったらしい。
「神崎さんからの電話じゃったよな? 今起きている事関連の話じゃろ? どうじゃった!?」
「現場に向かいながら話す。だけど……もしお前が行きたくないって途中で思ったら進路変更するからな」
「鉄平。もうその話は済んだじゃろ。だからこうしてコンビニで補給しているわけで」
「まあそれでも……落ち着いて聞いてくれ」
言いながら車を動かしコンビニを出る。
進路は一先ずは事が起きている現場。
……一先ずは。
***
それから、神崎から聞いた情報をそのままユイへと伝えた。
今回のアンノウンは最初に赤坂の前に出現し、その精神を乗っ取った。
そして彼女を救出すると同時に、かつて自分達の時に選んでくれたように、人間の姿を持つアンノウンの命を奪わない戦い方をしたそうだ。
具体的には赤坂とアンノウンを引き剝がす。
引き剥がしたとして赤坂の意識が真っ当である保障は無いが、赤坂が魔術師である以上、アンノウンの活用という手段を剥奪してしまえば同じ魔術師であるウィザードであれば、魔術師赤坂伊月を無力化できる。
そしてアンノウン側もユイがそうであるように、武器として使われていない間の戦闘能力は決して高くはない筈だ。
故に引き剥がせさえすればその後、半ば強引にでもどうにかできる。
どうにかできるというよりも、どうにかする。
そういう算段だったらしい。
だが誤算があった。
ユイという剣のアンノウンが近くに居たが故の誤算。
通常の手段では、人間とアンノウンのペアリングを切る事が出来ないという先入観。
結論を言えば、向こうがユイと同タイプなら勝てていた。
篠原が後衛でサポートし、柚子が前衛で近接戦闘を優位に運び、そして隙を突いて力尽くで銃の形態のアンノウンを引き剥がしたのだ。
ユイと同じならそれで終わり。
自分とユイで同じことをされれば、自分もユイもほぼ完全に無力化されるから。
だけどそうはならなかった。
きっとかつてのユイが鉄平にしたように。
今回のアンノウンが赤坂にしたように。
同じ事が柚子にも行われた。
そしてその柚子が篠原を戦闘不能に追い込んで今に至る。
……そこまで。
……そこまで話した所でユイが口を開く。
「鉄平……」
買ってきた菓子パンには殆ど口を付けず、血の気の引いた表情を浮かべていたユイは鉄平に問いかける。
「こんなの絶対どうにかしなくちゃいけないじゃろ……なのに、なのに鉄平」
どこか困惑した声音で。
「なんで……こんな状況でワシに配慮したのじゃ?」
それはコンビニを出る前にユイに言った、やりたくないなら進路変更するという事についてだろう。
何でも何も、理由はちゃんとある。
「なんでってお前……相手はお前と同じようなタイプのアンノウンで……」
それと戦わせる事が、ユイに対して精神的に大きな負担となる。
「……」
だからこそ。
だからこそだ。
だけど指摘されてようやく違和感に気付いた。
「違うじゃろ! いくらなんでも優先順位が……ッ!」
「……ッ!」
「鉄平がなんで気を使ってくれているのかは分かるのじゃ! だけど……柚子が乗っ取られて篠原さんも大怪我じゃ! 他の皆もどうなるか分からん。そんなの……ワシの状態がどうであれ、やれる事をやらないといけない時じゃ!」
「……」
「ワシの事を心配してくれてるのは嬉しい……でもそれは違うのじゃ鉄平!」
確かに、今のユイには少しでも負担を掛けたくはない。
だけど今は状況が状況で、流石に優先順位は変わってくる筈で。
いくらなんでもこれはユイに頭を下げてでも協力して貰わないといけないような状況な筈で。
「…………確かに、そうだな。悪い、俺もさっきは気が動転してたんだ」
「……今は?」
「大丈夫。やらねえといけねえ事はちゃんと見えている。俺達にやれる事をやるんだ」
「……うん。ワシらで皆を助けるんじゃ」
「おう」
言いながらこの先の戦いに向けて気合を乗せる。
そう、皆を救うのだ。
ユイがそうしたいと言っているなら。
(……いや、違う。そうじゃねえだろ。俺だって皆を……)
どこか、自分の思考にノイズが走っているように、一瞬考えが纏まらなくなる。
(……まあそんな事はどうでも良い。そんな場合じゃねえ)
纏める必要の無い事は纏めずに、この先へと意識を向ける。
勝つ為に。
救うために。
きっと自分の意思で。
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