魔剣拾った。同居した。

山外大河

文字の大きさ
上 下
108 / 115
2-2 剣と銃

ex 精神汚染

しおりを挟む


青年は呆れた顔をした。
ちなみにマールも湯浴みを手伝った時に、女の子だと気付いている。

「そもそも気付くも何もそんな余裕などなかった……いや、赤ん坊の存在は知っていても間近で見る機会などロクに今まで……いや待てよ。かなり昔にみた事があるような? ……あぁそれに魔族の女はみな赤い髪にみどりの瞳であぁでも確かに人間の女といえば」

しどろもどろになる魔王の横で、黙って顔を伏せていたハクイがいきなり針と糸とを取り出す。
その妙な気迫にぎょっとしたのも束の間、針と糸が浮いて見え、物凄い勢いで赤ん坊の服に何かを縫いだす。
着たままの服に何を!と言う暇もなく、ハクイは手を止め糸を切った。

「く、わたくしとした事が、女の子をいつまでもほぼほぼ素っ裸のままに、なんと可哀想な事を……今はこの程度の事しか出来ませんが、今に、今に可愛さプラスで作ってみせましょう。えぇみせますとも」
「い、いや、あまり気合いをいれられても、多分直ぐに汚れてダメになるだろうしってあ、可愛い」

赤ん坊の服の端に、大きめの花と小さめの花の刺繍がぐるっとされていた。
更に凄い事に、赤ん坊になんの外傷もみられない。
いやあっては困るが。

「ところで魔王さまミルクは出来ました?」
「んん!?」

言われて思い出した魔王は手元を見る。
見事にお湯が哺乳瓶ではなく、魔王の手元に注がれていた。

「あつ!」

慌てて哺乳瓶を冷やす為にあった氷水を入れたボールに手をつっこむ。

「魔王さまオレやりますよ」

機転をきかせ、マールは魔王のかわりに粉ミルクの入った哺乳瓶に少しお湯をそそぐと、中に入った粉ミルクを溶かすため瓶をくるくると軽く振り、更にお湯をそそぐ。
魔王が氷水から手を引っ込めると、マールは哺乳瓶をそこに浸した。

「これは何をしている?」
「人肌まで冷ましているんです。でないと赤ちゃんが飲むときに焼けどしちゃうので」
「あ、あぁそうかそうか。そうだな、うん」

じぃっと見て、魔王の目にマールの手が目にはいる。
さっきの焦げた見た目と違い、今は綺麗に戻っていた。

「その手、ハクイに治して貰ったか?あれは《白の魔族》だからな、あの程度の外傷なら直ぐだっただろう」

するとマールは嬉しそうに「はい!」と答える。

「ハクイ様は凄いです! オレ、ハクイ様の事尊敬してます!」
「そうか、お前はハクイの事が大好きなのだな」
「はい! あ、もういいかな?」

素直な返答に魔王は「そうか、そうか」と傍にいたハクイをみた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活

ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。 「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。 現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。 ゆっくり更新です。はじめての投稿です。 誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

処理中です...