魔剣拾った。同居した。

山外大河

文字の大きさ
上 下
87 / 115
2-1 招かれざる客

ex 抱えられた爆弾

しおりを挟む
「……どうやら本当に安全に着陸してくれるみたいだね」

「そうみたいですね」

 上空のアンノウンを見上げながら風間杏が呟いた言葉に、他のウィザードへの指示を一通り行った後の神崎も頷く。

 あれから篠原達と連絡を取り合っていたが、ディルバインと名乗った男の案内通りに内部を進んだ結果本人の言う通り管制室があり、言われた通りマニュアルも置かれていたらしい。
 そして簡単な事さえ理解できれば素人でも最低限動かせるらしく、警察との打ち合わせの結果少し離れた海岸まで移動させそこに降ろす事となった。

 こうした段取りがトントン拍子に行える程度にはディルバインの言葉に虚偽は無く、そして彼に着いて行った篠原達、特にユイに対し危害を与えるような素振りも無かったらしい。

 更に言えばマニュアルを読ませる為にユイを元の姿に戻そうとした杉浦に対し、自分のような人間の前かつ敵陣の中で無防備になるなと叱責した上で、剣の状態のまま読ませるように勧めるなど、本当に直前まで戦っていた相手とは思えない支離滅裂さを見せている。

 もっとも戦っている段階からああり普通とは言える相手では無かったようだが。

「ほんと潔いというかなんというか……」

「その潔さに打算が全く無い訳じゃないと思うけど、果たして実際の所どうなんだろうね」

「まあ話聞けるだけ聞きますよ……俺達の管轄で扱える内は」

 神崎は今後の事を考え小さく溜息を吐く。

「あのディルバインって男、これからどうします?」

「どうって……私達の捕虜でしょ。このまま北陸支部に連れて帰ろう」

「それはそうですよ。俺が言いたいのはその後です」

 神崎は難しい表情を浮かべて言う。

「ユイのように意思疎通の取れるアンノウンではなく、異世界人の捕虜ですからね。流石に東京本部が俺達に一任してくれるかどうか微妙な所ですよ。それどころか俺達異界管理局はダンジョンの管理と打ち漏らしたアンノウンの討伐を行う為の行政機関だ。人間の捕虜を扱う事は想定されていない。場合によっては本部どころか防衛省や外務省が絡んでくるかもしれない」

「確かにね……まあでもそれが適切な判断なら別に良いんじゃないかな?」

 杏は一応そう言うが、それでも真剣な声音で言う。

「だけどマコっちゃん的にはそれは良くない事なんだよね」

「ええ。まあ俺がっていうよりは……杉浦やユイにとってって感じなんですがね」

「あの二人にとって?」

 イマイチピンと来ていない杏に神崎は言う。

「杏さんも聞きましたよね。プロリナっていう俺達が知らない世界の存在の事と、その世界がユイを奪還しにくるかもしれないって話」

「……うん」

「そして今日の一件ではっきりした。ディルバインも言っていましたけど、異世界の人間は条件付きでしょうけどダンジョンを突破できる技術を有している。つまりユイの奪還も現実的に考えられる事なんです」

「……そうだね。でもそれがディルバインの身元を預かる組織がどこになるのかって話と関係ある?」

「ありますよ。大有りなんです」

 神崎は言いにくそうに少し間を空けてから言った。

「……ユイの存在がプロリナという世界との火種に成りかねない事。そして終末兵器なんて大層な呼ばれ方をしたユイが敵国と言って差し支えない連中の元に戻る可能性があるという事。この情報を抱えた男が俺達の管轄以外に身を置くというのは、アイツらにとって洒落にならない爆弾ですよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

削除予定です

伊藤ほほほ
ファンタジー
削除します

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

処理中です...