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2-1 招かれざる客
19 それぞれの正義
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柚子が張った結界は強固だ。生半可な攻撃では出られないのは、過去に閉じ込められた事があるから知っている
だがその主目的は閉じ込める事には無い。
事が終わるその時まで相手を閉じ込めておく。
最終的に出られる事が前提となる結界だ。
「ナイス柚子」
一旦バックステップを踏み距離を取った鉄平がそう言うと、柚子は結界に右手を向け続けながら言う。
「まあ無事時間を稼いで貰ったっすから」
そんなやり取りを交わす二人に対し、ディルバインは結界に手を振れ言う
「捕縛用……いや、違うな。まあ何にしてもやる事は変わらない」
そして再び左手で右腕のガントレットをアップしたディルバインは、右手の光のブレードの形状を変化させて拳に纏わせ、勢い任せの右ストレートを叩き込む。
次の瞬間、柚子の結界が破壊された。
「……思ったより早く出て来たけどどうだ?」
「ああ、大丈夫っす。なんとか解析完了っすね」
そう言って柚子は構えを取る。
「向うは滅茶苦茶固いっす。少なくとも私の拳や杉浦さんの全力で一撃叩き込んでも即死って事はねえっすよ」
「了解。それ聞きたかった。マジでナイス柚子」
「へへへ、どういたしまして」
そう言って微かに笑みを浮かべる柚子が張っていた先程の結界の神髄は、敵の解析にある。
当然、短期間では得られる情報は少ない。
だが最低限、どの位の力なら相手が壊れないかの判断をする為の情報程度なら、この短期間でも得られる。
……つまり十分だ。
「成程、そういう仕様か……全く、勝てる事が前提の強者の立ち回りで参るね」
そう言ったディルバインは徒手空拳で構えを取る。
先程のブレードを出す様子は無い。
おそらく先程結界を破壊した際の攻撃で、一時的に使用できなくなっているのかもしれない。
使用できたとしても一対一で押せただろうが、今ならより優位に立てる。
そして此処からは二対一だ。
「「……」」
柚子と軽くアイコンタクトを交わし、二人同時に動いた。
僅かに素早くディルバインの前に到達した柚子が、放たれた右ストレートを躱して顎にアッパーを叩き込む。
「ぐ……ッ!」
苦悶の声を絞り出し、体が宙に浮いたディルバイン。
そこに追撃する。
「っらああああああッ!」
僅かに遅れて接近した鉄平がそこに飛び掛かり、無防備な腹部目掛けて全力でユイを振り抜いた。
次の瞬間、勢いよく弾き飛ばされたディルバインの肉体は壁に叩き付けられ、そのまま床に落下し倒れ込む。
「やったか!?」
『それやってないフラグじゃ! ……まあこれで終わってくれていた方が良いのじゃが。色んな意味で』
そう言ったユイの言葉とは裏腹に、ディルバインはゆっくりと立ちあがる。
「杉浦さんが妙なフラグ立てるからっすよ」
「俺の所為かこれ」
「関係ないさ、僕の気合だよ」
フラフラになりながら立ち上がったディルバインは再び左手でガントレットをタップする。
すると先程ブレードを出現させていたように、右手に巨大な回転式シリンダーが特徴の光の塊のような銃が装備される。
そしてその銃口をこちらに向けたその瞬間だった。
「……ッ!?」
その銃を、光の矢が弾き飛ばした。
(あれは……)
光の矢。そういう魔術を少し前にみたばかりだ。
そう考えながら飛んできた方角に視線を向けると、そこに彼女は居た。
「こっちの方がヤバそうな状況らしいから。戻ってきてあげたわ! このエリートが!」
こちらとしてはただでさえ優性だったのに戦力が増強され、ディルバインからしたらより窮地に陥られた形になる。
そして柚子と鉄平は構えながら言った。
「いやこっち私ら二人で大丈夫っすよ!」
「下戻ってください下!」
「その下がもう大体大丈夫な感じ。篠原さんと私である程度潰したし、それにあの準一級含めて他の連中もよくやってる……それに、アンタらの会話はアンタら通じて聞いてたけど、その特撮ヒーローっぽい奴が言うように、やり方が生温かった」
そしてこちらに歩み寄りながら、自身の周囲に光の矢を複数展開して言う。
「そんな訳だから下は統率が取れて連携ができる連中でやればいい。元々浮いてた駒の私はこっちでしょ」
「生温い……か。ちなみにそちらの死者は?」
「誰かが死んでたらこんな穏やかじゃないでしょ。今の所そういう報告は無い」
「……そうか」
どこか安堵するようにそう呟いたディルバインは、再び徒手空拳で構えを取る。
「本来の目的は完全に失敗。追加ミッションもより厳しくなったようだが……この程度では僕は折れないさ。なにせ学生時代ベースボールをやっていたからね!」
そしてディルバインは拳を握り絞めて力強く踏み出し、鉄平の方に飛び掛かってきた。
そこには光のブレードも無く、当然拳がそれを纏っている訳でもない。
それどころか鉄平と柚子のそれぞれの一撃でダメージが蓄積しているのか動きが鈍く、これだけは成し遂げるという強い意思だけが鋭い。
それでも力の出力、技量以前に意思の強さでも負けているつもりはないから。
「悪いな、此処は折れてくれ」
その拳を回避して、それから全力でユイを振り抜いた。
「ガ……ッ!?」
再び腹部への直撃。
それを喰らったディルバインはもう一度弾き飛ばされ壁へと叩き付けられる。
そして再び床へと倒れ伏せ……それでも今度は立ち上がって来る事は無い。
変身は解け元の人間の姿へと戻り、それが戦いの終わりを告げる。
「……アンタがより良い未来の為にマジになって頑張ってるのは分かったけどさ、俺だって負けられねえんだよ」
とにかく、この一連の戦いはこちらの勝ちだ。
……きっとその筈だ。
だがその主目的は閉じ込める事には無い。
事が終わるその時まで相手を閉じ込めておく。
最終的に出られる事が前提となる結界だ。
「ナイス柚子」
一旦バックステップを踏み距離を取った鉄平がそう言うと、柚子は結界に右手を向け続けながら言う。
「まあ無事時間を稼いで貰ったっすから」
そんなやり取りを交わす二人に対し、ディルバインは結界に手を振れ言う
「捕縛用……いや、違うな。まあ何にしてもやる事は変わらない」
そして再び左手で右腕のガントレットをアップしたディルバインは、右手の光のブレードの形状を変化させて拳に纏わせ、勢い任せの右ストレートを叩き込む。
次の瞬間、柚子の結界が破壊された。
「……思ったより早く出て来たけどどうだ?」
「ああ、大丈夫っす。なんとか解析完了っすね」
そう言って柚子は構えを取る。
「向うは滅茶苦茶固いっす。少なくとも私の拳や杉浦さんの全力で一撃叩き込んでも即死って事はねえっすよ」
「了解。それ聞きたかった。マジでナイス柚子」
「へへへ、どういたしまして」
そう言って微かに笑みを浮かべる柚子が張っていた先程の結界の神髄は、敵の解析にある。
当然、短期間では得られる情報は少ない。
だが最低限、どの位の力なら相手が壊れないかの判断をする為の情報程度なら、この短期間でも得られる。
……つまり十分だ。
「成程、そういう仕様か……全く、勝てる事が前提の強者の立ち回りで参るね」
そう言ったディルバインは徒手空拳で構えを取る。
先程のブレードを出す様子は無い。
おそらく先程結界を破壊した際の攻撃で、一時的に使用できなくなっているのかもしれない。
使用できたとしても一対一で押せただろうが、今ならより優位に立てる。
そして此処からは二対一だ。
「「……」」
柚子と軽くアイコンタクトを交わし、二人同時に動いた。
僅かに素早くディルバインの前に到達した柚子が、放たれた右ストレートを躱して顎にアッパーを叩き込む。
「ぐ……ッ!」
苦悶の声を絞り出し、体が宙に浮いたディルバイン。
そこに追撃する。
「っらああああああッ!」
僅かに遅れて接近した鉄平がそこに飛び掛かり、無防備な腹部目掛けて全力でユイを振り抜いた。
次の瞬間、勢いよく弾き飛ばされたディルバインの肉体は壁に叩き付けられ、そのまま床に落下し倒れ込む。
「やったか!?」
『それやってないフラグじゃ! ……まあこれで終わってくれていた方が良いのじゃが。色んな意味で』
そう言ったユイの言葉とは裏腹に、ディルバインはゆっくりと立ちあがる。
「杉浦さんが妙なフラグ立てるからっすよ」
「俺の所為かこれ」
「関係ないさ、僕の気合だよ」
フラフラになりながら立ち上がったディルバインは再び左手でガントレットをタップする。
すると先程ブレードを出現させていたように、右手に巨大な回転式シリンダーが特徴の光の塊のような銃が装備される。
そしてその銃口をこちらに向けたその瞬間だった。
「……ッ!?」
その銃を、光の矢が弾き飛ばした。
(あれは……)
光の矢。そういう魔術を少し前にみたばかりだ。
そう考えながら飛んできた方角に視線を向けると、そこに彼女は居た。
「こっちの方がヤバそうな状況らしいから。戻ってきてあげたわ! このエリートが!」
こちらとしてはただでさえ優性だったのに戦力が増強され、ディルバインからしたらより窮地に陥られた形になる。
そして柚子と鉄平は構えながら言った。
「いやこっち私ら二人で大丈夫っすよ!」
「下戻ってください下!」
「その下がもう大体大丈夫な感じ。篠原さんと私である程度潰したし、それにあの準一級含めて他の連中もよくやってる……それに、アンタらの会話はアンタら通じて聞いてたけど、その特撮ヒーローっぽい奴が言うように、やり方が生温かった」
そしてこちらに歩み寄りながら、自身の周囲に光の矢を複数展開して言う。
「そんな訳だから下は統率が取れて連携ができる連中でやればいい。元々浮いてた駒の私はこっちでしょ」
「生温い……か。ちなみにそちらの死者は?」
「誰かが死んでたらこんな穏やかじゃないでしょ。今の所そういう報告は無い」
「……そうか」
どこか安堵するようにそう呟いたディルバインは、再び徒手空拳で構えを取る。
「本来の目的は完全に失敗。追加ミッションもより厳しくなったようだが……この程度では僕は折れないさ。なにせ学生時代ベースボールをやっていたからね!」
そしてディルバインは拳を握り絞めて力強く踏み出し、鉄平の方に飛び掛かってきた。
そこには光のブレードも無く、当然拳がそれを纏っている訳でもない。
それどころか鉄平と柚子のそれぞれの一撃でダメージが蓄積しているのか動きが鈍く、これだけは成し遂げるという強い意思だけが鋭い。
それでも力の出力、技量以前に意思の強さでも負けているつもりはないから。
「悪いな、此処は折れてくれ」
その拳を回避して、それから全力でユイを振り抜いた。
「ガ……ッ!?」
再び腹部への直撃。
それを喰らったディルバインはもう一度弾き飛ばされ壁へと叩き付けられる。
そして再び床へと倒れ伏せ……それでも今度は立ち上がって来る事は無い。
変身は解け元の人間の姿へと戻り、それが戦いの終わりを告げる。
「……アンタがより良い未来の為にマジになって頑張ってるのは分かったけどさ、俺だって負けられねえんだよ」
とにかく、この一連の戦いはこちらの勝ちだ。
……きっとその筈だ。
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