72 / 115
2-1 招かれざる客
ex 違和感
しおりを挟む
「……しかし妙だね。そう思わない? マコっちゃん」
「ええ」
杉浦鉄平が柚子の結界をジャンプ台のように使って飛び立ったのを見送った後、上空のアンノウンに警戒しながら神崎は杏の言葉にそう言って頷く。
「流石に大人しすぎますね」
そう言った次の瞬間、上を取った篠原達に向けたアンノウンの攻撃が始まった。
アンノウンの背から放たれたであろうビームのような攻撃。
だがそれもさほど激しくなく、上を取った三人は結界で足場を作り容易に回避し、攻守が入れ替わる。
柚子は頭上に再び攻撃を弾く結界を張り、軌道修正して拳を握り急落下。
赤坂は上空で右手をアンノウンに向け、光の矢を。
そして篠原はその手に対戦車ライフルにほど近い兵装を顕現させ、自身の術式を刻み込ました弾丸を撃ち込んだ。
その攻撃を、アンノウンは一方的に浴びる。
『こちら篠原、上も相当硬いがおそらく地に面した側よりは柔い!』
そしてそれらの攻撃が地上からは見えない部位相手に有効だった事を告げる報告がインカムを通じて聞こえてくる。
……破壊時に落下してくる残骸の対処さえできれば決して厳しい戦いではない。
……現状その程度の相手でしかない。
Sランクのアンノウンがだ。
「……何が目的だ?」
そもそも、管理局がアンノウンの出現を確認してから迎撃に当たるまでの決して短くない時間の間、対象のアンノウンはただ上空を飛行しているだけだった。
直接的攻撃を仕掛けてくるのではなく、ただそれだけ。
四月上旬のジェノサイドボックスの時のように偶然出現ポイントにウィザードが居るというような不幸中の幸いがなければ基本後手に回る事が前提のアンノウンの迎撃において、今回はこちらが先手が取れている。
それを幸運と捉えるべきか、それとも……どこかきな臭いと捉えるべきか。
(何か……嫌な予感がするな)
例えばの話だ。
ユイやジェノサイドボックス、加えて各国の増加傾向にあるダンジョンの打ち漏らしを偶然ではないと仮定して。
上空を飛ぶアンノウンが……Sランクという表に出る出ないは別としてあまり送られてくる事が無い言わば上澄みのアンノウンが、狙ってダンジョンという迎撃システムを潜り抜けて来たのだとすれば。
……その一件無駄で生易しい動きの先に、最悪な展開が待っている可能性も否定できない。
……否定してはいけない。
そして神崎は耳元に手を触れて言う。
「通信室。こちら神崎。地対空の術式の有無はもう問いません。非番のウィザードを全員召集してください。あと北陸第二の方にいつでも動けるようにスタンバってもらうよう伝えてくくれると……ええ、念の為です。何事もなければ北陸第二の方には俺が頭下げに行きます」
そう伝達し、一呼吸置いた神崎に杏は言う。
「それでいいよ。その時は私も頭下げにいく……できればそうなれば良いね」
「恥かいて小言言われるのが一番良い決着ですよ」
願わくばそうなりますように。
そう考えながら、神崎は改めて上空に意識を向けた。
「ええ」
杉浦鉄平が柚子の結界をジャンプ台のように使って飛び立ったのを見送った後、上空のアンノウンに警戒しながら神崎は杏の言葉にそう言って頷く。
「流石に大人しすぎますね」
そう言った次の瞬間、上を取った篠原達に向けたアンノウンの攻撃が始まった。
アンノウンの背から放たれたであろうビームのような攻撃。
だがそれもさほど激しくなく、上を取った三人は結界で足場を作り容易に回避し、攻守が入れ替わる。
柚子は頭上に再び攻撃を弾く結界を張り、軌道修正して拳を握り急落下。
赤坂は上空で右手をアンノウンに向け、光の矢を。
そして篠原はその手に対戦車ライフルにほど近い兵装を顕現させ、自身の術式を刻み込ました弾丸を撃ち込んだ。
その攻撃を、アンノウンは一方的に浴びる。
『こちら篠原、上も相当硬いがおそらく地に面した側よりは柔い!』
そしてそれらの攻撃が地上からは見えない部位相手に有効だった事を告げる報告がインカムを通じて聞こえてくる。
……破壊時に落下してくる残骸の対処さえできれば決して厳しい戦いではない。
……現状その程度の相手でしかない。
Sランクのアンノウンがだ。
「……何が目的だ?」
そもそも、管理局がアンノウンの出現を確認してから迎撃に当たるまでの決して短くない時間の間、対象のアンノウンはただ上空を飛行しているだけだった。
直接的攻撃を仕掛けてくるのではなく、ただそれだけ。
四月上旬のジェノサイドボックスの時のように偶然出現ポイントにウィザードが居るというような不幸中の幸いがなければ基本後手に回る事が前提のアンノウンの迎撃において、今回はこちらが先手が取れている。
それを幸運と捉えるべきか、それとも……どこかきな臭いと捉えるべきか。
(何か……嫌な予感がするな)
例えばの話だ。
ユイやジェノサイドボックス、加えて各国の増加傾向にあるダンジョンの打ち漏らしを偶然ではないと仮定して。
上空を飛ぶアンノウンが……Sランクという表に出る出ないは別としてあまり送られてくる事が無い言わば上澄みのアンノウンが、狙ってダンジョンという迎撃システムを潜り抜けて来たのだとすれば。
……その一件無駄で生易しい動きの先に、最悪な展開が待っている可能性も否定できない。
……否定してはいけない。
そして神崎は耳元に手を触れて言う。
「通信室。こちら神崎。地対空の術式の有無はもう問いません。非番のウィザードを全員召集してください。あと北陸第二の方にいつでも動けるようにスタンバってもらうよう伝えてくくれると……ええ、念の為です。何事もなければ北陸第二の方には俺が頭下げに行きます」
そう伝達し、一呼吸置いた神崎に杏は言う。
「それでいいよ。その時は私も頭下げにいく……できればそうなれば良いね」
「恥かいて小言言われるのが一番良い決着ですよ」
願わくばそうなりますように。
そう考えながら、神崎は改めて上空に意識を向けた。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
俺がいなくても世界は回るそうなので、ここから出ていくことにしました。ちょっと異世界にでも行ってみます。ウワサの重来者(甘口)
おいなり新九郎
ファンタジー
ハラスメント、なぜだかしたりされちゃったりする仕事場を何とか抜け出して家に帰りついた俺。帰ってきたのはいいけれど・・・。ずっと閉じ込められて開く異世界へのドア。ずっと見せられてたのは、俺がいなくても回るという世界の現実。あーここに居るのがいけないのね。座り込むのも飽きたし、分かった。俺、出ていくよ。その異世界って、また俺の代わりはいくらでもいる世界かな? 転生先の世界でもケガで職を追われ、じいちゃんの店に転がり込む俺・・・だけど。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる