70 / 115
2-1 招かれざる客
10 異世界からの飛翔体
しおりを挟む
「なんじゃあれ、滅茶苦茶でかいのじゃ!」
「あんなもん突然街中に出てくんの反則だろ!」
アンノウンがダンジョン外に出現した事を告げるアラートが鳴り響いた後、マニュアル通りに鉄平たちは即時出撃準備を整え、管理局の車両に乗り現場へ急行する。
出現したアンノウンはマンタのような形態の全長30メートル近い飛行物体。
そんなものが唐突に市街地の上空に出現したのだ。
こういう事がいつ起きてもおかしくないという事は頭に入れていても、普通に動揺はする。
「また厄介そうなのが現れたわね……最近厄介なのが高頻度で出てき過ぎでしょ」
窓からアンノウンの姿を肉眼で捉える鉄平とユイの近くで、うんざりするようにそう呟いたのは赤坂だ。
「良かったんすか手伝ってもらって。そういう目的で来たんじゃないっすよね」
「こういう事になったら細かい事言ってられないでしょ。有事の時の人手なんて多いに越した事はないんだから。一時休戦よ」
「すまない、助かる」
そう言ったのは篠原だ。
「初めて見る個体だが……あれの相手を直接できる人員は限られているのは分かるからな」
ウィザードが最も不得意とする相手は、高い高度を飛ぶ飛翔体だ。
当然空中戦闘を自在に熟すウィザードもいるが、その数はある程度限られる。
その為ウィザードの多くは地上からの迎撃を狙う訳だが、それも有効的に地対空迎撃を行えるだけの射程と破壊力を持つ者でなければ実行できない。
ましてやグレードはSランク。生半可な攻撃は通じない可能性が高い。
故に戦える人員自体が限られてくる。
だからこそ戦える人員を総動員しての総力戦だ。
そう、総力戦。
「……自分から現場に足を運ぶのは久しぶりだね」
そう言ったのは杏だ。
現状一日に三秒間しか魔術を使えない彼女も、この場においては希少かつ最重要な戦力だ。
「悪いな、風間姉。今のお前をあまり前線には出したくなかったが」
「いいですよ。海の向こうや何もない更地の上ならただ倒すだけで良いですけど、市街地ならそうは言ってられないですから」
杏は普段の軽い空気を感じさせない真剣な声音で言う。
「上空で破壊したアンノウンが市街地に与える影響を最小限に食い止めないといけない」
「ああ。悪いがそれはお前に一任する」
「……ただ倒すだけじゃ駄目というのも大変じゃな」
「だな」
あの図体のアンノウンを跡形も無く消し飛ばす事ができるのであれば話は変わってくるが、おそらくそう簡単にはいかない。
仮に空中で絶命、もしくは機能停止に追い込んだとして、直径三十メートル近い図体がそのまま地上に落下する訳だ。
落下地点には甚大な被害が予想される。
セオリーで考えれば安全な地点にまで誘導するべきなのだろうが向こうがアンノウン、ましてやデータのない初めて見るタイプならば後手に回った分だけ致命的な事態を引き起こす可能性が高くなる。
故に早急に破壊し……落下物は全て人類最強の魔術師である風間杏が三秒という時間を賭けて作り出した強固な結界で受け止める。
それがこの作戦の大まかな概要だ。
「ちなみに最初から結界で囲ってしまって、その中であの化け物を倒すというやり方じゃいかんのかの?」
「お、ユイそれナイスアイデアじゃね?」
ユイがふと思いついたように言った言葉に鉄平が賛同すると、それに対し赤坂が言う。
「馬鹿ね。それだと向こうが通常運行してる時に結界を無効化できるようなタイプだったら、先輩の三秒を無駄に使う事になるじゃない」
「だからより効果が期待できる倒した後でやる必要があるんすよ。既に相手の情報がこちらにあれば大いにアリっすけどね」
「なるほどね」
「ちょっと簡単に考えすぎたのじゃ。ごめん」
「いや、いい。気付いた事があったらどんどん言ってくれ」
そう言った篠原は、運転席の神崎に言う。
「神崎、地上部隊の指揮はお前に任せた。あとは風間姉の護衛と補佐。そして万が一の場合は頼むぞ」
「分かりました。迎撃の方はよろしくお願いします」
「ああ」
そう言って篠原は一拍空けてから、力強い声音で言った。
「あのアンノウンは俺と風間妹、杉浦にユイそして赤坂。この五人で止める」
「あんなもん突然街中に出てくんの反則だろ!」
アンノウンがダンジョン外に出現した事を告げるアラートが鳴り響いた後、マニュアル通りに鉄平たちは即時出撃準備を整え、管理局の車両に乗り現場へ急行する。
出現したアンノウンはマンタのような形態の全長30メートル近い飛行物体。
そんなものが唐突に市街地の上空に出現したのだ。
こういう事がいつ起きてもおかしくないという事は頭に入れていても、普通に動揺はする。
「また厄介そうなのが現れたわね……最近厄介なのが高頻度で出てき過ぎでしょ」
窓からアンノウンの姿を肉眼で捉える鉄平とユイの近くで、うんざりするようにそう呟いたのは赤坂だ。
「良かったんすか手伝ってもらって。そういう目的で来たんじゃないっすよね」
「こういう事になったら細かい事言ってられないでしょ。有事の時の人手なんて多いに越した事はないんだから。一時休戦よ」
「すまない、助かる」
そう言ったのは篠原だ。
「初めて見る個体だが……あれの相手を直接できる人員は限られているのは分かるからな」
ウィザードが最も不得意とする相手は、高い高度を飛ぶ飛翔体だ。
当然空中戦闘を自在に熟すウィザードもいるが、その数はある程度限られる。
その為ウィザードの多くは地上からの迎撃を狙う訳だが、それも有効的に地対空迎撃を行えるだけの射程と破壊力を持つ者でなければ実行できない。
ましてやグレードはSランク。生半可な攻撃は通じない可能性が高い。
故に戦える人員自体が限られてくる。
だからこそ戦える人員を総動員しての総力戦だ。
そう、総力戦。
「……自分から現場に足を運ぶのは久しぶりだね」
そう言ったのは杏だ。
現状一日に三秒間しか魔術を使えない彼女も、この場においては希少かつ最重要な戦力だ。
「悪いな、風間姉。今のお前をあまり前線には出したくなかったが」
「いいですよ。海の向こうや何もない更地の上ならただ倒すだけで良いですけど、市街地ならそうは言ってられないですから」
杏は普段の軽い空気を感じさせない真剣な声音で言う。
「上空で破壊したアンノウンが市街地に与える影響を最小限に食い止めないといけない」
「ああ。悪いがそれはお前に一任する」
「……ただ倒すだけじゃ駄目というのも大変じゃな」
「だな」
あの図体のアンノウンを跡形も無く消し飛ばす事ができるのであれば話は変わってくるが、おそらくそう簡単にはいかない。
仮に空中で絶命、もしくは機能停止に追い込んだとして、直径三十メートル近い図体がそのまま地上に落下する訳だ。
落下地点には甚大な被害が予想される。
セオリーで考えれば安全な地点にまで誘導するべきなのだろうが向こうがアンノウン、ましてやデータのない初めて見るタイプならば後手に回った分だけ致命的な事態を引き起こす可能性が高くなる。
故に早急に破壊し……落下物は全て人類最強の魔術師である風間杏が三秒という時間を賭けて作り出した強固な結界で受け止める。
それがこの作戦の大まかな概要だ。
「ちなみに最初から結界で囲ってしまって、その中であの化け物を倒すというやり方じゃいかんのかの?」
「お、ユイそれナイスアイデアじゃね?」
ユイがふと思いついたように言った言葉に鉄平が賛同すると、それに対し赤坂が言う。
「馬鹿ね。それだと向こうが通常運行してる時に結界を無効化できるようなタイプだったら、先輩の三秒を無駄に使う事になるじゃない」
「だからより効果が期待できる倒した後でやる必要があるんすよ。既に相手の情報がこちらにあれば大いにアリっすけどね」
「なるほどね」
「ちょっと簡単に考えすぎたのじゃ。ごめん」
「いや、いい。気付いた事があったらどんどん言ってくれ」
そう言った篠原は、運転席の神崎に言う。
「神崎、地上部隊の指揮はお前に任せた。あとは風間姉の護衛と補佐。そして万が一の場合は頼むぞ」
「分かりました。迎撃の方はよろしくお願いします」
「ああ」
そう言って篠原は一拍空けてから、力強い声音で言った。
「あのアンノウンは俺と風間妹、杉浦にユイそして赤坂。この五人で止める」
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説

初めて入ったダンジョンに閉じ込められました。死にたくないので死ぬ気で修行したら常識外れの縮地とすべてを砕く正拳突きを覚えました
陽好
ファンタジー
ダンジョンの発生から50年、今ではダンジョンの難易度は9段階に設定されていて、最も難易度の低いダンジョンは「ノーマーク」と呼ばれ、簡単な試験に合格すれば誰でも入ることが出来るようになっていた。
東京に住む19才の男子学生『熾 火天(おき あぐに)』は大学の授業はそれほどなく、友人もほとんどおらず、趣味と呼べるような物もなく、自分の意思さえほとんどなかった。そんな青年は高校時代の友人からダンジョン探索に誘われ、遺跡探索許可を取得して探索に出ることになった。
青年の探索しに行ったダンジョンは「ノーマーク」の簡単なダンジョンだったが、それでもそこで採取できる鉱物や発掘物は仲介業者にそこそこの値段で買い取ってもらえた。
彼らが順調に探索を進めていると、ほとんどの生物が駆逐されたはずのその遺跡の奥から青年の2倍はあろうかという大きさの真っ白な動物が現れた。
彼を誘った高校時代の友人達は火天をおいて一目散に逃げてしまったが、彼は一足遅れてしまった。火天が扉にたどり着くと、ちょうど火天をおいていった奴らが扉を閉めるところだった。
無情にも扉は火天の目の前で閉じられてしまった。しかしこの時初めて、常に周りに流され、何も持っていなかった男が「生きたい!死にたくない!」と強く自身の意思を持ち、必死に生き延びようと戦いはじめる。白いバケモノから必死に逃げ、隠れては見つかり隠れては見つかるということをひたすら繰り返した。
火天は粘り強く隠れ続けることでなんとか白いバケモノを蒔くことに成功した。
そして火天はダンジョンの中で生き残るため、暇を潰すため、体を鍛え、精神を鍛えた。
瞬発力を鍛え、膂力を鍛え、何事にも動じないような精神力を鍛えた。気づくと火天は一歩で何メートルも進めるようになり、拳で岩を砕けるようになっていた。
力を手にした火天はそのまま外の世界へと飛び出し、いろいろと巻き込まれながら遺跡の謎を解明していく。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。
うちのポチ知りませんか? 〜異世界転生した愛犬を探して〜
双華
ファンタジー
愛犬(ポチ)の散歩中にトラックにはねられた主人公。
白い空間で女神様に、愛犬は先に転生して異世界に旅立った、と聞かされる。
すぐに追いかけようとするが、そもそも生まれる場所は選べないらしく、転生してから探すしかないらしい。
転生すると、最初からポチと従魔契約が成立しており、ポチがどこかで稼いだ経験値の一部が主人公にも入り、勝手にレベルアップしていくチート仕様だった。
うちのポチはどこに行ったのか、捜索しながら異世界で成長していく物語である。
・たまに閑話で「ポチの冒険」等が入ります。
※ 2020/6/26から「閑話」を従魔の話、略して「従話」に変更しました。
・結構、思い付きで書いているので、矛盾点等、おかしなところも多々有ると思いますが、生温かい目で見てやって下さい。経験値とかも細かい計算はしていません。
沢山の方にお読み頂き、ありがとうございます。
・ホトラン最高2位
・ファンタジー24h最高2位
・ファンタジー週間最高5位
(2020/1/6時点)
評価頂けると、とても励みになります!m(_ _)m
皆様のお陰で、第13回ファンタジー小説大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます。
※ 2020/9/6〜 小説家になろう様にもコッソリ投稿開始しました。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>


冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる