69 / 115
2-1 招かれざる客
9 一歩引いた視点
しおりを挟む
「ごめんね、来てたのは知ってたんだけど忙しくて全く顔出せなくて」
そう言ってどこか嬉しそうに声を掛ける杏に鉄平は尋ねる。
「赤坂さんと知り合いですか?」
その先の破滅云々で既にある程度察する事はできるが、一応投げかけた問いに杏は答える。
「そうだね。昔から所属は北陸第一だったんだけど、結構頻繁に本部の方に顔を出しててね。その時によく一緒になったんだ」
「何度もお世話になったわ」
「……逆じゃなくて?」
「どういう意味かな杉浦君」
「とにかくお久しぶりです。お元気でしたか?」
「おーい伊月ちゃんもとにかくスルーしないでー、杉浦君にツッコんでー!」
「元気そうですね」
「このまま行くんだ……まあうん、それなりにね。そっちも元気そうでなにより」
そう言った杏は自販機でブラックコーヒーを買いながら赤坂に言う。
「……その調子だと、何も見つからなかったのかな?」
「今は……まだ」
「そっか。でもまあ何も見付からないというのも一つの答えだと私は思うよ」
言いながらプルタブを空ける杏に赤坂は言う。
「……杏先輩はなんでそっち側なんですか。先輩が一番そこから離れた所にいないとおかしい筈でしょ。あんな事があったのになんで……」
「言いたい気持ちは分かるよ。実際私も最初は一歩引いた位置に立ってた。怖かったし警戒だってしてた。でもこういうのは理屈じゃないからさ……私はもう一度信じてみようって思ったんだ」
「……」
それを聞いて黙り混む赤坂に杏は言う。
「でも一応言っておくけど伊月ちゃん達の考えを全否定するつもりもないよ。そっちにも報告が行ってるような事を目の前で見て私は一歩前に踏み出した。だけどそれを聞いてもちゃんと距離を置いて冷静に物事を見れる人ってのは絶対に必要だから」
「……私は否定しますよ。取り入ろうとしている側が、自分の事を肯定させるような言動をするのは当然なんです」
「それで良いよ。そういう目線でこの件を見れる人は、私を含めもう此処にはいないから。伊月ちゃんはそれで良いんだ。その目で受け止めた事を本部に持って帰ってくれればいいよ」
そう言った杏は、鉄平とユイに視線を向けて言う。
「ユイちゃんもしばらくよろしくね。あんまり良い気分はしないかもしれないけど、分かってあげてほしい」
「大丈夫じゃ。別に嫌じゃない」
そう言ったユイは赤坂の目を見て言う。
「確か一週間とか言っておったな。改めて、短い間じゃがよろしくじゃ」
「監視される側がよろしくっておかしいでしょ……」
軽く溜め息を吐いてから赤坂はユイに言う。
「言っておくけど私はアンタが私に……いや、此処の人達に見せている言動は全部偽りの物だと思っているから……でもまあ無視するのは礼儀が悪いから言ってあげる」
そして一拍空けてから赤坂は言った。
「……よろしく」
そうやって、ぶっきらぼうに言葉が紡がれた……次の瞬間的だった。
「…………何か来るね」
「「「……?」」」
杏が重い表情と声音でそう呟いて、それから一瞬遅れて。
管理局内にアラートが鳴り響いた。
……アンノウンが出現したのだ。
そう言ってどこか嬉しそうに声を掛ける杏に鉄平は尋ねる。
「赤坂さんと知り合いですか?」
その先の破滅云々で既にある程度察する事はできるが、一応投げかけた問いに杏は答える。
「そうだね。昔から所属は北陸第一だったんだけど、結構頻繁に本部の方に顔を出しててね。その時によく一緒になったんだ」
「何度もお世話になったわ」
「……逆じゃなくて?」
「どういう意味かな杉浦君」
「とにかくお久しぶりです。お元気でしたか?」
「おーい伊月ちゃんもとにかくスルーしないでー、杉浦君にツッコんでー!」
「元気そうですね」
「このまま行くんだ……まあうん、それなりにね。そっちも元気そうでなにより」
そう言った杏は自販機でブラックコーヒーを買いながら赤坂に言う。
「……その調子だと、何も見つからなかったのかな?」
「今は……まだ」
「そっか。でもまあ何も見付からないというのも一つの答えだと私は思うよ」
言いながらプルタブを空ける杏に赤坂は言う。
「……杏先輩はなんでそっち側なんですか。先輩が一番そこから離れた所にいないとおかしい筈でしょ。あんな事があったのになんで……」
「言いたい気持ちは分かるよ。実際私も最初は一歩引いた位置に立ってた。怖かったし警戒だってしてた。でもこういうのは理屈じゃないからさ……私はもう一度信じてみようって思ったんだ」
「……」
それを聞いて黙り混む赤坂に杏は言う。
「でも一応言っておくけど伊月ちゃん達の考えを全否定するつもりもないよ。そっちにも報告が行ってるような事を目の前で見て私は一歩前に踏み出した。だけどそれを聞いてもちゃんと距離を置いて冷静に物事を見れる人ってのは絶対に必要だから」
「……私は否定しますよ。取り入ろうとしている側が、自分の事を肯定させるような言動をするのは当然なんです」
「それで良いよ。そういう目線でこの件を見れる人は、私を含めもう此処にはいないから。伊月ちゃんはそれで良いんだ。その目で受け止めた事を本部に持って帰ってくれればいいよ」
そう言った杏は、鉄平とユイに視線を向けて言う。
「ユイちゃんもしばらくよろしくね。あんまり良い気分はしないかもしれないけど、分かってあげてほしい」
「大丈夫じゃ。別に嫌じゃない」
そう言ったユイは赤坂の目を見て言う。
「確か一週間とか言っておったな。改めて、短い間じゃがよろしくじゃ」
「監視される側がよろしくっておかしいでしょ……」
軽く溜め息を吐いてから赤坂はユイに言う。
「言っておくけど私はアンタが私に……いや、此処の人達に見せている言動は全部偽りの物だと思っているから……でもまあ無視するのは礼儀が悪いから言ってあげる」
そして一拍空けてから赤坂は言った。
「……よろしく」
そうやって、ぶっきらぼうに言葉が紡がれた……次の瞬間的だった。
「…………何か来るね」
「「「……?」」」
杏が重い表情と声音でそう呟いて、それから一瞬遅れて。
管理局内にアラートが鳴り響いた。
……アンノウンが出現したのだ。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる