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2-1 招かれざる客
6 本部のスーパーエリート
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「ワシの本性を暴きに……」
「そう。なんだか此処二か月弱で本部の人間を含めアンタに気を許してるみたいだけど、皆甘すぎる。ジェノサイドボックスの迎撃に貢献したみたいだけど、何か裏があるに違いないわ!」
「裏って言われてもの……」
ユイは困惑するようにそう呟いてから言う。
「というか立ち話もあれじゃし、一旦座ったらどうじゃ? ほら、ワシの隣の席空いとるぞ?」
「あ、どうも……じゃない! いいの私は此処で!」
普通に移動しようとしていた赤坂は踏み止まる。
「アンノウンの施しは受けないわ! 気持ちだけ受け取っとく!」
(気持ち受け取るんだぁ……えぇ……)
本性を暴きに来たとか言っている奴の言動がこれなのかと、心中でツッコミを入れたところで赤坂は言う。
「とにかく私はアンタの事を一切信用していないわ! そして今回の事に関して言えば此処のウィザードの事もね。何せあの篠原さんが牛耳ってる部隊だから」
「なんだアンタいきなり出て来たかと思えば篠原さんのやり方に文句あんのか?」
立ち上がって参戦してきたのは、少し離れた席で食事を取っていた神崎だ。
「あの人がどうしたってんだ。言ってみろよ」
こちらの席の方に歩み寄りながらそう言う神崎に対し、赤坂は言う。
「あの人は良くも悪くも甘すぎる。特に身内に! 人として尊敬できる所はあってもこういう類いの事じゃあまり信用できないでしょ!」
「お、おう……それはそうだな」
思った以上に的を得た事だと認識したのか、そして貶すだけの言葉じゃ無かった為か完全に認めてしまう神崎。
そんな神崎に赤坂は言う。
「というかアンタ準一級よね」
「だ、だからどうした。ていうか何で知ってる」
「国内の若いウィザードで上の方まで来ている有望株の事は大体頭に入ってるわ。負けたくないからね」
そして赤坂はばばーんと胸を張って言う。
「ウィザードに年功序列は関係ないわ! よって私の方が上! 私の方がエリート! 敬語使いなさいよ!」
(うわこの人めんどくせぇ……言っている事はごもっともかもしれないけど面倒くせえ……)
分かる。階級的に上なのは分かる。
だがこう……別に喧嘩腰で言うような事では無いだろうと、そう思う鉄平。
「……すみませんね、赤坂さん」
神崎はやや不満げながらも、静かにそう返す。
……あくまで鉄平の主観だが、神崎の方が年齢含め色々と大人だ。
(俺の上司篠原さんとか神崎さんの方で良かったぁ……)
なんとなく赤坂が上司な場合、悪い意味で大変そうだと思う。
そしてそんな赤坂を観察しながら、柚子が小声で言ってくる。
「聞きましたか杉浦さん。あの人自分の事エリートとか言ってましたよ。ヤバくないっすか」
「今日もブーメランの切れ味凄いな。大会近いの?」
「ぶん殴るっすよ。というか私準一級で杉浦さんより上なんで敬って敬語で接するっすよ」
「え、すみませんでした。数々のご無礼をお許しください」
「いやあの冗談っすよ。なんか距離感じるんでマジで止めてもらっていいっすか? ……さてと」
ワンセット適当なやり取りを鉄平とした後、柚子はゆっくりと立ち上がる。
「もうちょっと腰低くしたって良いんじゃないっすか伊月ちゃん。自分ちじゃないんすから」
「誰が伊月ちゃんだ北陸第一のヤベー奴!」
「ちょ、知らんうちに変な異名付けられてるんすけど! 酷くないっすか杉浦さん。なんか言ってやってくださいよ!」
「……お察しします」
「察するなっすよ!」
「赤坂さん」
此処で階級マウントで黙らされていた神崎が口を開く。
「よし行くっすよ神崎さん!」
「多分偶にコイツが東京本部に行った時、結構自由奔放で色々迷惑掛けてると思うんですけど……いつもすみません。温かい目で見ていてくれると助かります」
「なんか思ってたのと違うんすけど!?」
「まあ優秀な後輩の面倒を見るのもエリートの務めだからね。分かっているわ」
「んーやっぱこう……なんかイラって来るんすよね」
「ん? 準一級が私に歯向かうの?」
「伊月ちゃん、準一級に昇格したのっていつでしたっけ?」
「じゅ、十八だけど……」
「私十五っす。これ私の方がエリートじゃないっすかね?」
(なんかすげえ雑なのかテクニカルなのか分からねえマウント取り始めた!)
「……ぐぬぬ。くそぉ!」
そう言って膝を付く赤坂。
(え、これで負けるのかよ……)
「……いや、負けてないわ」
ゆっくりと立ち上がって赤坂は言う。
「ここはひ、引き分けで手を打ちましょう」
(えぇ……)
「いいっすよ。引き分けで手を打つっす」
「っしゃあ! 私は負けてない!」
(……この人めんどくせえけど面白れっ!)
とまあそんな風にわいわいがやがやと盛り上がっている赤坂周りに、やや遠い視線を向けながらユイが言う。
「なんかワシの事調べに来た筈なのにワシが蚊帳の外になってるのおかしくないかの?」
「それだけじゃなく全体的におかしいよ色々」
ユイの事で東京から監査が来てるのに、賑やかだからまあ良いかって気分になってきた鉄平自身の心情を含め、全体的におかしい。
(いや良いけど……やっぱり人選ミスでは)
その辺も含めて全部。
「そう。なんだか此処二か月弱で本部の人間を含めアンタに気を許してるみたいだけど、皆甘すぎる。ジェノサイドボックスの迎撃に貢献したみたいだけど、何か裏があるに違いないわ!」
「裏って言われてもの……」
ユイは困惑するようにそう呟いてから言う。
「というか立ち話もあれじゃし、一旦座ったらどうじゃ? ほら、ワシの隣の席空いとるぞ?」
「あ、どうも……じゃない! いいの私は此処で!」
普通に移動しようとしていた赤坂は踏み止まる。
「アンノウンの施しは受けないわ! 気持ちだけ受け取っとく!」
(気持ち受け取るんだぁ……えぇ……)
本性を暴きに来たとか言っている奴の言動がこれなのかと、心中でツッコミを入れたところで赤坂は言う。
「とにかく私はアンタの事を一切信用していないわ! そして今回の事に関して言えば此処のウィザードの事もね。何せあの篠原さんが牛耳ってる部隊だから」
「なんだアンタいきなり出て来たかと思えば篠原さんのやり方に文句あんのか?」
立ち上がって参戦してきたのは、少し離れた席で食事を取っていた神崎だ。
「あの人がどうしたってんだ。言ってみろよ」
こちらの席の方に歩み寄りながらそう言う神崎に対し、赤坂は言う。
「あの人は良くも悪くも甘すぎる。特に身内に! 人として尊敬できる所はあってもこういう類いの事じゃあまり信用できないでしょ!」
「お、おう……それはそうだな」
思った以上に的を得た事だと認識したのか、そして貶すだけの言葉じゃ無かった為か完全に認めてしまう神崎。
そんな神崎に赤坂は言う。
「というかアンタ準一級よね」
「だ、だからどうした。ていうか何で知ってる」
「国内の若いウィザードで上の方まで来ている有望株の事は大体頭に入ってるわ。負けたくないからね」
そして赤坂はばばーんと胸を張って言う。
「ウィザードに年功序列は関係ないわ! よって私の方が上! 私の方がエリート! 敬語使いなさいよ!」
(うわこの人めんどくせぇ……言っている事はごもっともかもしれないけど面倒くせえ……)
分かる。階級的に上なのは分かる。
だがこう……別に喧嘩腰で言うような事では無いだろうと、そう思う鉄平。
「……すみませんね、赤坂さん」
神崎はやや不満げながらも、静かにそう返す。
……あくまで鉄平の主観だが、神崎の方が年齢含め色々と大人だ。
(俺の上司篠原さんとか神崎さんの方で良かったぁ……)
なんとなく赤坂が上司な場合、悪い意味で大変そうだと思う。
そしてそんな赤坂を観察しながら、柚子が小声で言ってくる。
「聞きましたか杉浦さん。あの人自分の事エリートとか言ってましたよ。ヤバくないっすか」
「今日もブーメランの切れ味凄いな。大会近いの?」
「ぶん殴るっすよ。というか私準一級で杉浦さんより上なんで敬って敬語で接するっすよ」
「え、すみませんでした。数々のご無礼をお許しください」
「いやあの冗談っすよ。なんか距離感じるんでマジで止めてもらっていいっすか? ……さてと」
ワンセット適当なやり取りを鉄平とした後、柚子はゆっくりと立ち上がる。
「もうちょっと腰低くしたって良いんじゃないっすか伊月ちゃん。自分ちじゃないんすから」
「誰が伊月ちゃんだ北陸第一のヤベー奴!」
「ちょ、知らんうちに変な異名付けられてるんすけど! 酷くないっすか杉浦さん。なんか言ってやってくださいよ!」
「……お察しします」
「察するなっすよ!」
「赤坂さん」
此処で階級マウントで黙らされていた神崎が口を開く。
「よし行くっすよ神崎さん!」
「多分偶にコイツが東京本部に行った時、結構自由奔放で色々迷惑掛けてると思うんですけど……いつもすみません。温かい目で見ていてくれると助かります」
「なんか思ってたのと違うんすけど!?」
「まあ優秀な後輩の面倒を見るのもエリートの務めだからね。分かっているわ」
「んーやっぱこう……なんかイラって来るんすよね」
「ん? 準一級が私に歯向かうの?」
「伊月ちゃん、準一級に昇格したのっていつでしたっけ?」
「じゅ、十八だけど……」
「私十五っす。これ私の方がエリートじゃないっすかね?」
(なんかすげえ雑なのかテクニカルなのか分からねえマウント取り始めた!)
「……ぐぬぬ。くそぉ!」
そう言って膝を付く赤坂。
(え、これで負けるのかよ……)
「……いや、負けてないわ」
ゆっくりと立ち上がって赤坂は言う。
「ここはひ、引き分けで手を打ちましょう」
(えぇ……)
「いいっすよ。引き分けで手を打つっす」
「っしゃあ! 私は負けてない!」
(……この人めんどくせえけど面白れっ!)
とまあそんな風にわいわいがやがやと盛り上がっている赤坂周りに、やや遠い視線を向けながらユイが言う。
「なんかワシの事調べに来た筈なのにワシが蚊帳の外になってるのおかしくないかの?」
「それだけじゃなく全体的におかしいよ色々」
ユイの事で東京から監査が来てるのに、賑やかだからまあ良いかって気分になってきた鉄平自身の心情を含め、全体的におかしい。
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