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2-1 招かれざる客
ex もう一つの問題点
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技術開発課を後にした神崎は、多分半泣きになりながらデスクに向かっているであろう杏のフォローをする為に足取りを支局長室へと向ける。
その道中、あまり考えたくない事がどうしても脳裏を過っていた。
(杉浦が試した装備が良くも悪くももれなくゴミみてえな出力になっていたのを見る限り、ユイも俺達が思っている以上に弱体化しているって事だよな)
ユイが出現した際に観測された危険度を示すグレードは最高値となるSSS。そして現在鉄平がダガーナイフの形状へと変化させた時のグレードがS。
それだけでもかなり大幅に弱体化してしまっている訳だが……他の装備の弱体化率と比較するとAランク程度にまでグレードは落ちていてもおかしくなかった。
それでも今だSランクのグレードを保持しているという事は即ち。
(アイツ本来はどれだけの強さだったんだ……実際の所は馬鹿の一つ覚えみてえにSの数を増やさないといけねえ奴だったんじゃねえか?)
今まで自分達はユイの本来の力を過小評価していた事になる。
管理局の観測機で測れるアンノウンの出力計にて正常に観測できる値を超えたアンノウンがグレードSSSに分類される訳だが、事実上彼女はその値を大きく上回っていた事になる。
これまで世界中に出現してきたグレードSSSのアンノウンが、計測できないとはいえ限界値から然程離れていないであろうと現場で認識できる事が常だった中で、きっと彼女はその域を超えている訳だ。
とはいえそんな彼女も今は味方な上に、そもそも大きく弱体化している。
故にユイという個体に関しては、もし目の前に現れたのが杉浦鉄平で無ければ本当に最悪な結果に終わっていたかもしれないという、そうならなくて良かったと安堵する位の事しか考える事は無い。
……ユイという個体に関して言えば。
(……状況は想像以上に悪いって事か)
ユイにそうしたポテンシャルがあるという事は、それだけ質の高いアンノウンがこちらに攻めてきている異世界の手にあるという事になるから。
とはいえユイのような化物染みた出力のアンノウンはそう用意できる物では無いのだろうという希望的な事を考える事も出来た。
彼女がスタンダードでない事は、各国で不定期にダンジョンによる迎撃が失敗しても世界が存続している事から明白だ。
あの日の一撃が、ユイを送り込んだ世界にとっては秘密兵器のような一撃だった。
きっとそれだけ希少性のあるアンノウンなのだ。
だがそれがかえって別の問題を浮かび上がらせる。
(向うもダンジョンの存在は把握している筈なのに、ユイのような希少である筈のアンノウンを送り込んだんだ。つまり敵は無事に迎撃を潜り抜け、この世界に到達する事をほぼほぼ確信して送り込んでいる)
ジェノサイドボックスとの戦いの後で、杏が提示したダンジョンに脆弱性がある可能性。
現状北陸支部を超えて本部、及び各国のウィザードの関連機関が調査を進めているが今の所何も見つかっていない。
そんな中で……見付けられない脆弱性が存在しているという答え合わせを今日の一件で図らずも行ってしまった訳だ。
それが分かった所で、今の自分にできる事など有事に備え鍛錬を積み重ねる事だけなのだが。
(今のままじゃ駄目だ……もっとやれる事を探さねえと)
いざという時に、手遅れになってしまわないように。
と、そうこうしている内に支局長室へと辿り着いた。
ノックして入室。
「杏さん、ちゃんとやってますか? 手伝いに来ましたよ」
「マコっちゃん!」
予想通り半泣きだった表情の杏が、ぱっと表情を明るくさせる。
(……まあまずやるべきなのはこれか)
神崎は軽く溜め息を付きながら、とりあえず今やれる事というよりかは、やらなければならない事に手を伸ばした。
その道中、あまり考えたくない事がどうしても脳裏を過っていた。
(杉浦が試した装備が良くも悪くももれなくゴミみてえな出力になっていたのを見る限り、ユイも俺達が思っている以上に弱体化しているって事だよな)
ユイが出現した際に観測された危険度を示すグレードは最高値となるSSS。そして現在鉄平がダガーナイフの形状へと変化させた時のグレードがS。
それだけでもかなり大幅に弱体化してしまっている訳だが……他の装備の弱体化率と比較するとAランク程度にまでグレードは落ちていてもおかしくなかった。
それでも今だSランクのグレードを保持しているという事は即ち。
(アイツ本来はどれだけの強さだったんだ……実際の所は馬鹿の一つ覚えみてえにSの数を増やさないといけねえ奴だったんじゃねえか?)
今まで自分達はユイの本来の力を過小評価していた事になる。
管理局の観測機で測れるアンノウンの出力計にて正常に観測できる値を超えたアンノウンがグレードSSSに分類される訳だが、事実上彼女はその値を大きく上回っていた事になる。
これまで世界中に出現してきたグレードSSSのアンノウンが、計測できないとはいえ限界値から然程離れていないであろうと現場で認識できる事が常だった中で、きっと彼女はその域を超えている訳だ。
とはいえそんな彼女も今は味方な上に、そもそも大きく弱体化している。
故にユイという個体に関しては、もし目の前に現れたのが杉浦鉄平で無ければ本当に最悪な結果に終わっていたかもしれないという、そうならなくて良かったと安堵する位の事しか考える事は無い。
……ユイという個体に関して言えば。
(……状況は想像以上に悪いって事か)
ユイにそうしたポテンシャルがあるという事は、それだけ質の高いアンノウンがこちらに攻めてきている異世界の手にあるという事になるから。
とはいえユイのような化物染みた出力のアンノウンはそう用意できる物では無いのだろうという希望的な事を考える事も出来た。
彼女がスタンダードでない事は、各国で不定期にダンジョンによる迎撃が失敗しても世界が存続している事から明白だ。
あの日の一撃が、ユイを送り込んだ世界にとっては秘密兵器のような一撃だった。
きっとそれだけ希少性のあるアンノウンなのだ。
だがそれがかえって別の問題を浮かび上がらせる。
(向うもダンジョンの存在は把握している筈なのに、ユイのような希少である筈のアンノウンを送り込んだんだ。つまり敵は無事に迎撃を潜り抜け、この世界に到達する事をほぼほぼ確信して送り込んでいる)
ジェノサイドボックスとの戦いの後で、杏が提示したダンジョンに脆弱性がある可能性。
現状北陸支部を超えて本部、及び各国のウィザードの関連機関が調査を進めているが今の所何も見つかっていない。
そんな中で……見付けられない脆弱性が存在しているという答え合わせを今日の一件で図らずも行ってしまった訳だ。
それが分かった所で、今の自分にできる事など有事に備え鍛錬を積み重ねる事だけなのだが。
(今のままじゃ駄目だ……もっとやれる事を探さねえと)
いざという時に、手遅れになってしまわないように。
と、そうこうしている内に支局長室へと辿り着いた。
ノックして入室。
「杏さん、ちゃんとやってますか? 手伝いに来ましたよ」
「マコっちゃん!」
予想通り半泣きだった表情の杏が、ぱっと表情を明るくさせる。
(……まあまずやるべきなのはこれか)
神崎は軽く溜め息を付きながら、とりあえず今やれる事というよりかは、やらなければならない事に手を伸ばした。
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