魔剣拾った。同居した。

山外大河

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2-1 招かれざる客

ex 成長する生き物

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 杉浦一行が技術開発課を去った後、残った篠原は近くの椅子に腰を下ろして松戸に問いかける。

「それで、俺だけ残して何の用だ」

「分かっているだろう、篠原さんなら」

「……まあ、見当違いな事を考えていなければな」

 篠原は重い声音で言う。

「杉浦達は事を前向きに捉えているようだが、実際はそこまで楽観的に考えられる状態ではない……そういう話だろう?」

「ご明察。その通りだ篠原さん」

 そして一拍空けてから松戸は言う。

「……人間は成長する生き物だからね。上を目指す事が難しいのと同じように、底辺を維持する事もまた至難の業だよ」

 前向きな言葉を、松戸は重苦しく紡いでいく。

「例えばバスケのセンスが全くない人でも、四六時中ボールに触れ続けていれば何かしら進歩はする筈だ。それが人様に見せて大きな躍進と言われる程度になるかはともかく、それでも確実に何もしていなかった頃よりは前へと進める筈だろう……杉浦君も同じだよ。彼はユイ君との契約という形で四六時中アンノウンの力を使っているようなものだ。きっと下手は下手なりに少しずつユイという特定のアンノウンを使えるようになっていく筈」

「……ああ」

「当然、それにはポジティブな側面も大きい。現状杉浦君は殆どユイ君の力を引き出せていないにも関わらず、風間妹と同程度かそれ以上の戦闘能力を保持してる。言わば既にトップクラスに居る現段階でレベル1。そこから更に躍進するんだ。きっとそう遠くない内に彼は特級の域にまで到達するよ」

 だが、それは即ち負の側面を同時に持ち合わせている。

「……彼がその時、まだ彼らしさを残しているかは疑問だがね」

 そう、それが最大の問題点だ。
 杉浦鉄平が成長する事についての唯一の問題点はそこだ。

「時限爆弾のようなものだよ。何せ、彼がユイ君と契約を結んでいる以上きっと彼はユイというアンノウンの使い手として徐々に成長していく事になる。そうなれば同時に汚染濃度も濃くなっていくのだから」

 篠原も、きっと松戸も。
 杉浦鉄平の汚染濃度が増す事により世界の危機が訪れるかもしれないといった危惧はしてない。
 それだけユイというアンノウンは善性の塊だ。
 今更従来通りの動きができるようになった所でこちらの敵には恐らくならず、継続して力を貸してくれるであろう確信がある。

 だから此処から先にあるのはあくまで一個人の問題。

 自分達がウィザードに引き入れた杉浦鉄平という一個人の、自我と尊厳の話。
 全体の平和と比べればあまりにも小さいが、それでも確かに大切な事の話。
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