魔剣拾った。同居した。

山外大河

文字の大きさ
上 下
52 / 115
1-EX 日常編(春)

3 彼と彼女の日常についての調査 上

しおりを挟む
 休日。日曜の昼食時。

「風間、何でここに? お前今日非番じゃねえだろ」

「抜き打ちの調査的なアレっす!」

「なんだそりゃ」

 木造アパート二階の杉浦家にチャイムを鳴らして元気よく訪ねてきたのは、パーカーにミニスカートという私服を身に纏った風間柚子。
 彼女は小さく笑みを浮かべて言う。

「ほら、アレから何事も無く平穏な感じになってるっすけど、一応杉浦さんは強力なアンノウンを住まわせている感じなんで。私達からしたら杉浦さんじゃない第三者の目で色々確認して報告上げないと駄目なんすよ」

「まあそういうのも必要になるか……」

「はいっす! で、まあ素行とかは杉浦さんがユイちゃんと管理局に来てくれているから分かるっすけど、後はちゃんとしたプライベートを送れているかっすね」

「危険な事が無さそうかって事か?」

「それもそうっすけど、ほら後はシンプルにアンノウン関係なく杉浦さんは小中学生位の子供家に住まわせてるんすから。ちゃんと保護者やれてるかどうか的な。そういう一般的な事もチェックっす」

「それでお前が来たわけだ……そんな事女子高生にチェックされんの俺」

「そうっすね!」

「いやこれ別にお前の事貶してる訳じゃ無いんだけどさ……人選ミスってね? ユイの危険性云々の話はともかく生活云々の話になるとしっかり大人って感じの人の方が良いんじゃね?」

「あはは、それは私もそう思うっす。というかそもそもそういう部署が管理局には無いわけっすから、そんな警察とか児童相談所の職員みたいな事やれる知識もノウハウも無いっすからね……ところで警察とか児相ってこういう訪問とかってするんでしたっけ?」

「いや知らん」

「私も全然っすね!」

 そう言って笑った後、柚は言う。

「まあでもアレっす。手が空いてるからって理由だけで何の知識も無い私が来る位には形だけの調査っす。本部にやったって言える実績があればそれで良い的な」

「適当だなオイ」

「適当っすよ」

 柚子は言う。

「雑にやれない位に難がありそうなら、そもそも最初から違った未来があったと思うんすよ。先に信頼を勝ち取ったから今があるっす。そりゃ私生活どんな感じなんだろって心配は若干あるっすけど、それこそちゃんとご飯食べてる? 位の事以外はまあ大丈夫だろうって思ってるんすよ皆」

「そっか……まあ入れよ」

 組織としてそれが良いのかどうかと言われれば、それはきっとあまり良くない。
 きっとあまり良くない事の積み重ねで今に至っている。

(……ほんとしっかりしないとな)

 改めて思う。
 そういう選択や考えをしてくれた人達が不利益を被る事が無い様に。
 最低限、しっかりしないと駄目だ。

「お邪魔しまーす」

 柚子を部屋に招き入れる。
 当然見られて困る様な事はこの先に無い。
 ……まあそういう本だとか、PCのデータとかは普通にあるが、その辺はユイと生活を共にする以上管理体制を徹底してある。問題ない。
 つまりなんの問題も無い訳だ

「ん? その声は柚子か?」

 そして玄関先での話を聞いてか、ユイが玄関の方に足を運んで来る。
 ユイの服装はTシャツにショートパンツといったラフな格好。
 先日柚子にユイの衣類などを買い揃えて貰った時に購入した一点だ。

「こんにちはーユイちゃん!」

「こんにちはじゃ。というかどうしたのじゃ急に」

「まあ色々あってね」

「ほう。まあ何かよく分からんがゆっくりしていくのじゃ」

「うん、まあそれなりにね」

 そう言う柚子に鉄平は問いかける。

「そういや風間。お前昼食った?」

「ん? まだっすけど」

「丁度今から昼飯作ろうと思ってたんだけど、良かったらお前も食ってくか? 大した物出せねえけど」

「いいんすか?」

「おうよ。ユイの服とか選んできてもらったり世話になったしな。昼飯食ってないお前の前で俺らだけってのもあんまり感じ良くねえだろ」

「じゃあお言葉に甘えるっす。別にそういう趣旨で来てねえっすけど、ちゃんと美味しい物を食べさせてるかチェックっすね」

「だからそんな審査されるような大層な物作れねえって。夜ならともかく昼食だし簡単な奴だぞ」

「ちなみに何作るんすか」

「ささっと炒飯とスープでも作ろうかと」

「ほう」

「簡素だろ。チェックも何も炒飯なんてマズく作る方が難しいんだから、難しい事考えんな」

「いやいや、杉浦さん炒飯舐めてないっすか」

「あ?」

「マズく作る方が難しいって簡単な事言っちゃって。言っとくけど私厳しいっすよ。調子乗った事言いましたって謝るなら今の内っす」

「謝らねえよ別に。マズかったらお代はいらねえよ」

「え、お金取るんすか?」

「いやその場のノリで言っただけで、当然元から要らねよ」

「そうっすよねーははは。さて、じゃあ気を取り直して」

 コホンと可愛くわざとらしい咳をしてから柚は言う。

「それじゃあ美味しい炒飯を作って貰うっすよ!」

「できらぁ!」

「鉄平も柚子も何か知らんが声大きくないかの。近所迷惑じゃ」

「「あ、ごめん」」

 とまあ普通に炒飯を作ることになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

はぁ?とりあえず寝てていい?

夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。 ※第二章は全体的に説明回が多いです。 <<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

家族もチート!?な貴族に転生しました。

夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった… そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。 詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。 ※※※※※※※※※ チート過ぎる転生貴族の改訂版です。 内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております ※※※※※※※※※

処理中です...