48 / 115
1-3 新しい日常 新しい非日常
21 面倒で物騒な事が終わったので、そろそろ晩御飯を作っていこうのコーナー
しおりを挟む
あれから無事ショッピングモールの駐車場を出た鉄平は、ユイと共に別のスーパーへ。
そこで今度こそ夕飯の鍋の具材や明日の朝用の食パンなどを買い込み、帰宅。
「……なんかすげえ疲れたぁ」
……ようやく帰宅だ。
とても夕飯の買い出しに行った帰りとは思えない程の疲労感が溜まっている。
まあ当然それだけで終わらなかったが故の疲労な訳だが。
「お疲れ様じゃ鉄平。今日はゆっくり休むのじゃ」
「ああ。でももうひと頑張り。ユイはゆっくりしててくれ」
言いながらキッチンに買ってきた具材を置き、すぐに使わない物は冷蔵庫に入れていく。
そしてそんな鉄平の後ろを付いてきたユイが問いかけてきた。
「ワシに何か手伝える事あるか? 流石に疲れている鉄平一人に全部任せてワシはお客様ってのはちょっと違う気がするんじゃが……」
「ん? あーそうだな。じゃあなんか頼もうかな」
自然と全部自分でやるつもりで動いていたが、今のユイはお客様というよりは同居人だ。
今後この世界に馴染んでいく為にも、こういう事は積極的にやって貰った方が良いのかもしれない。
本人に意欲があるなら尚更だ。
「でも火使ったり刃物使ったりだから、慣れてねえとあぶねえ気がするんだよな」
見た目通りの年齢の普通の子供なら、家の手伝いや学校の調理実習などで最低限その辺の扱いを学んでいるとは思うのだが、その点ユイは普通ではない訳で。
そしてそういう事以外で考えようにも、鉄平としては料理について何かを手伝ってもらう側に立つのが初めてな事もあり、正直何を手伝って貰えば良いか思いつかない。
が、そこで不敵な笑みを浮かべてユイが言う。
「ふふふ、何を言っているのじゃ鉄平。何を隠そうワシは刃物じゃ。すぺしゃりすとじゃ!」
「マジじゃん。お前スペシャリストじゃん」
「そうじゃろ?」
そう言ってちょっとドヤ顔を浮かべるユイ。
なんならこの世界の誰よりも刃物のスペシャリストな気がする。
とはいえ。
「あーでもアレな? 確かお前指をナイフに変えられたと思うけど、そういうので切るのは無しな。なんとなく嫌だし」
「分かってる。ワシもそれはなんか嫌じゃ」
そう言って包丁に手を伸ばす。
「これを使えば良いんじゃろ」
「そうそれそれ……分かってると思うけど、人に向けるなよ」
「大丈夫じゃ。昨日鉄平に刃物を向けるなって言われたばかりじゃからの」
「良く分かってんじゃん。じゃあ野菜切ってくか。軽く野菜洗ってからカット開始だな」
そう言って鉄平は見守り耐性。
(……うん、仕事消滅したな)
鍋のスープは温めるだけの奴を買ってきた訳で、つまり野菜を切って火にかける位しかやる事以外だと、米を炊く時間が無いので割高だが今日の分だけ買ってきたレンチンのご飯を電子レンジにぶち込む事位だ。
そして野菜が洗い終わりいざカットタイム。
「一応確認しておくが、これどういう大きさで切れば良いんじゃ?」
「とりあえず長ネギは一口サイズにこう、斜めに頼むわ」
「了解じゃ。刮目するのじゃワシの無敵な剣捌き!」
「包丁捌きな。一体何切る気だお前」
「ネギじゃが?」
「そうだな」
とまあそんな感じでユイがネギを切り始めるのを見守る。
(これ……一応絆創膏とか用意しておいた方が良いか?)
なんとなく……なんとなく嫌な予感がある。
だって別物だ……流れでなんとなくこうなったが、どう考えて別物だ。
自分が剣になったり体を刃に変えて扱う事と、包丁の扱い……!
故にありえる……とんでもない包丁捌き……ッ!
(というか安全な切り方とか本当に分かんのか!? これ一回止めた方が良いのか!?)
そう焦りながらやっぱり止めようかと思っていた鉄平だったが……。
「えい」
そんな掛け声と共に、ちゃんと指を切らないような適切な切り方で刃が入れられる。
「……」
そこからはほぼ無言でネギを切っていく。
ちゃんと切れていく。
そしてしばらくして。
「どうじゃ鉄平!」
「完璧」
「よっしゃあ!」
可もなく不可もなく、普通に良い感じになった。
それなりに大勝利。
congratulations。
そこで今度こそ夕飯の鍋の具材や明日の朝用の食パンなどを買い込み、帰宅。
「……なんかすげえ疲れたぁ」
……ようやく帰宅だ。
とても夕飯の買い出しに行った帰りとは思えない程の疲労感が溜まっている。
まあ当然それだけで終わらなかったが故の疲労な訳だが。
「お疲れ様じゃ鉄平。今日はゆっくり休むのじゃ」
「ああ。でももうひと頑張り。ユイはゆっくりしててくれ」
言いながらキッチンに買ってきた具材を置き、すぐに使わない物は冷蔵庫に入れていく。
そしてそんな鉄平の後ろを付いてきたユイが問いかけてきた。
「ワシに何か手伝える事あるか? 流石に疲れている鉄平一人に全部任せてワシはお客様ってのはちょっと違う気がするんじゃが……」
「ん? あーそうだな。じゃあなんか頼もうかな」
自然と全部自分でやるつもりで動いていたが、今のユイはお客様というよりは同居人だ。
今後この世界に馴染んでいく為にも、こういう事は積極的にやって貰った方が良いのかもしれない。
本人に意欲があるなら尚更だ。
「でも火使ったり刃物使ったりだから、慣れてねえとあぶねえ気がするんだよな」
見た目通りの年齢の普通の子供なら、家の手伝いや学校の調理実習などで最低限その辺の扱いを学んでいるとは思うのだが、その点ユイは普通ではない訳で。
そしてそういう事以外で考えようにも、鉄平としては料理について何かを手伝ってもらう側に立つのが初めてな事もあり、正直何を手伝って貰えば良いか思いつかない。
が、そこで不敵な笑みを浮かべてユイが言う。
「ふふふ、何を言っているのじゃ鉄平。何を隠そうワシは刃物じゃ。すぺしゃりすとじゃ!」
「マジじゃん。お前スペシャリストじゃん」
「そうじゃろ?」
そう言ってちょっとドヤ顔を浮かべるユイ。
なんならこの世界の誰よりも刃物のスペシャリストな気がする。
とはいえ。
「あーでもアレな? 確かお前指をナイフに変えられたと思うけど、そういうので切るのは無しな。なんとなく嫌だし」
「分かってる。ワシもそれはなんか嫌じゃ」
そう言って包丁に手を伸ばす。
「これを使えば良いんじゃろ」
「そうそれそれ……分かってると思うけど、人に向けるなよ」
「大丈夫じゃ。昨日鉄平に刃物を向けるなって言われたばかりじゃからの」
「良く分かってんじゃん。じゃあ野菜切ってくか。軽く野菜洗ってからカット開始だな」
そう言って鉄平は見守り耐性。
(……うん、仕事消滅したな)
鍋のスープは温めるだけの奴を買ってきた訳で、つまり野菜を切って火にかける位しかやる事以外だと、米を炊く時間が無いので割高だが今日の分だけ買ってきたレンチンのご飯を電子レンジにぶち込む事位だ。
そして野菜が洗い終わりいざカットタイム。
「一応確認しておくが、これどういう大きさで切れば良いんじゃ?」
「とりあえず長ネギは一口サイズにこう、斜めに頼むわ」
「了解じゃ。刮目するのじゃワシの無敵な剣捌き!」
「包丁捌きな。一体何切る気だお前」
「ネギじゃが?」
「そうだな」
とまあそんな感じでユイがネギを切り始めるのを見守る。
(これ……一応絆創膏とか用意しておいた方が良いか?)
なんとなく……なんとなく嫌な予感がある。
だって別物だ……流れでなんとなくこうなったが、どう考えて別物だ。
自分が剣になったり体を刃に変えて扱う事と、包丁の扱い……!
故にありえる……とんでもない包丁捌き……ッ!
(というか安全な切り方とか本当に分かんのか!? これ一回止めた方が良いのか!?)
そう焦りながらやっぱり止めようかと思っていた鉄平だったが……。
「えい」
そんな掛け声と共に、ちゃんと指を切らないような適切な切り方で刃が入れられる。
「……」
そこからはほぼ無言でネギを切っていく。
ちゃんと切れていく。
そしてしばらくして。
「どうじゃ鉄平!」
「完璧」
「よっしゃあ!」
可もなく不可もなく、普通に良い感じになった。
それなりに大勝利。
congratulations。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

2回目チート人生、まじですか
ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆
ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで!
わっは!!!テンプレ!!!!
じゃない!!!!なんで〝また!?〟
実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。
その時はしっかり魔王退治?
しましたよ!!
でもね
辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!!
ということで2回目のチート人生。
勇者じゃなく自由に生きます?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる