38 / 115
1-3 新しい日常 新しい非日常
14 放てるだけの最善策を
しおりを挟む
かつて大勢の死者を出した程の化物の情報は、あらゆるメディアを通じて一般人にも知れ渡る。
だから当然、生半可な攻撃では傷が付かない程に強固な肉体を持つという事は知っていた。
だけどその体が再生するなんて事は知らない。
(……新型ッ!? ふざけんなマジかよ!?)
もしも。
もしも三年前と同じだけの強さの化物が再生能力を携えているのだとすれば、きっとそれ以上が無い程に最悪な事だ。
此処で倒しきれなければ。
この化物が外に出るような事があればその時は、冗談抜きで世界が滅んでもおかしくない。
「ユイ! なんか良い感じの力出せ!」
そう叫びながら前へと踏み出した。
必死だった必死だった必死だった必死だった。
今の自分達が死なない為や、このショッピングモール内に居る人達を死なせない為や、三年前の事を起こさない為や、そんなもっともらしい理由は全部消し飛んで。
本能的に。とにかく何が何でもこの化物を殺さなければならないと、そう思った。
『使え鉄平!』
そしてユイがこの状況に最も適していると判断した攻撃方法を脳に流し込んでくれて……後はそれに身を委ねる。
「っらあああああああッ!」
そうして振るった剣は黒い巨体を切り裂かない。
まるで鈍器のように叩き付けられる。
『どうじゃ!?』
胴体に叩き付けられたユイの刀身。
そこからその衝撃が満遍なく、黒い巨体を内側から破壊するように伝わっていく。
どのみち切り裂いても抉れるのは一か所だけ。
それならばこの一撃で、本体が再生できない形で壊れてくれることを祈る。
そして分かりやすい形での破壊は後の二人に託す。
「閉じろ!」
鉄平の攻撃で僅かに後ずさったジェノサイドボックスに向けて柚子がそう叫ぶと、ジェノサイドボックスの周囲に結界が展開される。
そして。
「炸裂!」
そう呟いた瞬間、結界内で爆発が発生。
先の鉄平の一撃で大きなダメージを負っていたであろうジェノサイドボックスの肉体を木っ端微塵にし、文字通り消し飛ばす。
「やった!」
「終わってねえ駄目押しだ!」
ふら付きながらも距離を詰めて来た神崎が、鉄平達の正面に壁状の結界を展開した後に、ジェノサイドボックスの肉体が先程まで有った何も無い場所目掛けてハルバードを振り下ろす。
当然、何かに当たったような様子は無い。
それでも、事前に張られた結界に大きなヒビが入った。
衝撃波。
おそらく昨日の戦いで鉄平がウィザードから喰らった最初の一撃と同系統の攻撃。
振り下ろした地点以外にも攻撃が及ぶ、まだいるかもしれない何かに対して振るえる、おそらく神崎が瞬時に放てる中で最も有効な一撃。
そして。
「……手応えありだ」
その一撃はまだその場に残っていたであろうジェノサイドボックスの肉体を確かに捉えた。
……だが、その表情は険しい。
「……正攻法じゃ駄目か」
そう呟く神崎の視線の先にあるのは、黒く染まった床。
(そうだ……まだ終わってない)
床を染めた黒い影のような何かが、この建物内がまだジェノサイドボックスの影響化にある事を意味している。
つまり……何も終わっていない。
振り出しだ。
『おい鉄平! あれ……ッ!』
「分かってる……マジかよ」
視界の先。こちらから少し離れた所の床から生えるように上って来る。
無傷の、更に50センチ程大きくなった巨体。
ジェノサイドボックスが。
だから当然、生半可な攻撃では傷が付かない程に強固な肉体を持つという事は知っていた。
だけどその体が再生するなんて事は知らない。
(……新型ッ!? ふざけんなマジかよ!?)
もしも。
もしも三年前と同じだけの強さの化物が再生能力を携えているのだとすれば、きっとそれ以上が無い程に最悪な事だ。
此処で倒しきれなければ。
この化物が外に出るような事があればその時は、冗談抜きで世界が滅んでもおかしくない。
「ユイ! なんか良い感じの力出せ!」
そう叫びながら前へと踏み出した。
必死だった必死だった必死だった必死だった。
今の自分達が死なない為や、このショッピングモール内に居る人達を死なせない為や、三年前の事を起こさない為や、そんなもっともらしい理由は全部消し飛んで。
本能的に。とにかく何が何でもこの化物を殺さなければならないと、そう思った。
『使え鉄平!』
そしてユイがこの状況に最も適していると判断した攻撃方法を脳に流し込んでくれて……後はそれに身を委ねる。
「っらあああああああッ!」
そうして振るった剣は黒い巨体を切り裂かない。
まるで鈍器のように叩き付けられる。
『どうじゃ!?』
胴体に叩き付けられたユイの刀身。
そこからその衝撃が満遍なく、黒い巨体を内側から破壊するように伝わっていく。
どのみち切り裂いても抉れるのは一か所だけ。
それならばこの一撃で、本体が再生できない形で壊れてくれることを祈る。
そして分かりやすい形での破壊は後の二人に託す。
「閉じろ!」
鉄平の攻撃で僅かに後ずさったジェノサイドボックスに向けて柚子がそう叫ぶと、ジェノサイドボックスの周囲に結界が展開される。
そして。
「炸裂!」
そう呟いた瞬間、結界内で爆発が発生。
先の鉄平の一撃で大きなダメージを負っていたであろうジェノサイドボックスの肉体を木っ端微塵にし、文字通り消し飛ばす。
「やった!」
「終わってねえ駄目押しだ!」
ふら付きながらも距離を詰めて来た神崎が、鉄平達の正面に壁状の結界を展開した後に、ジェノサイドボックスの肉体が先程まで有った何も無い場所目掛けてハルバードを振り下ろす。
当然、何かに当たったような様子は無い。
それでも、事前に張られた結界に大きなヒビが入った。
衝撃波。
おそらく昨日の戦いで鉄平がウィザードから喰らった最初の一撃と同系統の攻撃。
振り下ろした地点以外にも攻撃が及ぶ、まだいるかもしれない何かに対して振るえる、おそらく神崎が瞬時に放てる中で最も有効な一撃。
そして。
「……手応えありだ」
その一撃はまだその場に残っていたであろうジェノサイドボックスの肉体を確かに捉えた。
……だが、その表情は険しい。
「……正攻法じゃ駄目か」
そう呟く神崎の視線の先にあるのは、黒く染まった床。
(そうだ……まだ終わってない)
床を染めた黒い影のような何かが、この建物内がまだジェノサイドボックスの影響化にある事を意味している。
つまり……何も終わっていない。
振り出しだ。
『おい鉄平! あれ……ッ!』
「分かってる……マジかよ」
視界の先。こちらから少し離れた所の床から生えるように上って来る。
無傷の、更に50センチ程大きくなった巨体。
ジェノサイドボックスが。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる