37 / 115
1-3 新しい日常 新しい非日常
13 一閃
しおりを挟む
「ユイ、一応確認しとくぞ」
ジェノサイドボックスが居るであろう二階本屋周辺に向けて走る中で、鉄平はユイに問いかける。
「この先に居るのは人を大勢ぶっ殺すような化物だ。それに対して俺はお前の力を振るう。俺はそれを悪い事だとは思わねえけど……嫌な気持ちになるようなら言ってくれ」
三年前に出現したジェノサイドボックスの姿は、ニュース映像で確認した限り化物だ。杉浦鉄平が培ってきた倫理観に当てはめても、アレを破壊する事に対する嫌悪感のような物は湧かない。
動物の駆除だとかそういうのとはまるで違う。
だがそれはあくまで、杉浦鉄平の場合の話だ。
ユイにそれが当て嵌められるかどうかは分からない。
自分の力を使って何かの命を奪う。何かを壊す。
こんな状況で問うべき事では無いのかもしれないが、武器のアンノウンである彼女が今後真っ当に生きていく上で、その辺の取捨選択はきっと自分が思っている以上に大切にしていかなければならない事だろうから。
だからこその問い。
それに対してユイは答える。
『大丈夫じゃ。倒さないと色々とマズいのじゃろ? 遠慮なくワシの力を使ってくれ。相手が誰であれ必要なら致し方ないじゃろうから』
「分かった」
『…………その辺を配慮してくれるのは、素直にありがとうなのじゃ』
「今後も聞いてくからな。今日のも嫌な事あったらちゃんと言えよ」
『了解じゃ』
そんなやり取りを隣で聞いていた柚子が言う。
「ユイちゃんの返答は分かんないっすけど……アレっすね。良い感じの保護者してるっすね」
「そりゃどうも」
『鉄平が保護者……ワシ完全に子供扱いじゃぁ』
(いや子供じゃん)
そんなやり取りをしている内に、随分と距離を詰めた。
そして到達し、視界に映る。
「……ッ!」
現時点で全長三メートル程の黒い人型の化物、ジェノサイドボックス。
そして。
「ちょ、マジっすか!?」
「神崎さん!」
ジェノサイドボックスに殴り飛ばされ、血塗れでこちらに弾き飛ばされてくる神崎の姿が。
(すぐに手当て……いや、それよりも!)
血の気が引いたがそれでも。
何よりもまず、目の前の化物を排除しない事には始まらない。
「ユイ! お前の力振るうぞ! 良いな!」
『叩き切るのじゃ!』
「突っ込むっすよ! 私が合わせるっす!」
「ぶっ壊してやる!」
次の瞬間、柚子と同時に全力で前へと踏み込んだ。
叩き切る。
その意思だけを正面の化物へと向けて。
そしてこちらに向けられた手から射出された黒い鉛玉のような球体を体を反らし回避し、枝分かれするように振るわれた腕を掻い潜って間合いを詰め、そして振るう。
「っらあああああああああああああああッ!」
巨体の白く変色した脇腹を抉り取るように、短い刀身で一閃した。
そしてそれとほぼ同時。
「吹き飛べ!」
柚子の叫びと共に激しい衝突音が耳に響いた。
追撃の為に体勢を立て直し振り返ると、そこには拳を振るった柚子と頭を消し飛ばされたジェノサイドボックスが居た。
効いている。満身創痍もいいところだ。
(刺す……トドメを!)
そして早急に神崎の応急処置を。
そう考えて踏み出そうとしたところで、ジェノサイドボックスの奥から、血塗れの神崎が全力疾走でこちらに走ってきているのが見えた。
そして床に落ちているハルバードを拾い上げながら叫んだ。
「二人共手を止めるな! ぶち込めるだけの攻撃をぶち込んで跡形もなく消し飛ばせ!」
そして必死の形相で神崎は叫ぶ。
「最新型だ! コイツの体、再生するぞ!」
そんな最悪な情報を。
ジェノサイドボックスが居るであろう二階本屋周辺に向けて走る中で、鉄平はユイに問いかける。
「この先に居るのは人を大勢ぶっ殺すような化物だ。それに対して俺はお前の力を振るう。俺はそれを悪い事だとは思わねえけど……嫌な気持ちになるようなら言ってくれ」
三年前に出現したジェノサイドボックスの姿は、ニュース映像で確認した限り化物だ。杉浦鉄平が培ってきた倫理観に当てはめても、アレを破壊する事に対する嫌悪感のような物は湧かない。
動物の駆除だとかそういうのとはまるで違う。
だがそれはあくまで、杉浦鉄平の場合の話だ。
ユイにそれが当て嵌められるかどうかは分からない。
自分の力を使って何かの命を奪う。何かを壊す。
こんな状況で問うべき事では無いのかもしれないが、武器のアンノウンである彼女が今後真っ当に生きていく上で、その辺の取捨選択はきっと自分が思っている以上に大切にしていかなければならない事だろうから。
だからこその問い。
それに対してユイは答える。
『大丈夫じゃ。倒さないと色々とマズいのじゃろ? 遠慮なくワシの力を使ってくれ。相手が誰であれ必要なら致し方ないじゃろうから』
「分かった」
『…………その辺を配慮してくれるのは、素直にありがとうなのじゃ』
「今後も聞いてくからな。今日のも嫌な事あったらちゃんと言えよ」
『了解じゃ』
そんなやり取りを隣で聞いていた柚子が言う。
「ユイちゃんの返答は分かんないっすけど……アレっすね。良い感じの保護者してるっすね」
「そりゃどうも」
『鉄平が保護者……ワシ完全に子供扱いじゃぁ』
(いや子供じゃん)
そんなやり取りをしている内に、随分と距離を詰めた。
そして到達し、視界に映る。
「……ッ!」
現時点で全長三メートル程の黒い人型の化物、ジェノサイドボックス。
そして。
「ちょ、マジっすか!?」
「神崎さん!」
ジェノサイドボックスに殴り飛ばされ、血塗れでこちらに弾き飛ばされてくる神崎の姿が。
(すぐに手当て……いや、それよりも!)
血の気が引いたがそれでも。
何よりもまず、目の前の化物を排除しない事には始まらない。
「ユイ! お前の力振るうぞ! 良いな!」
『叩き切るのじゃ!』
「突っ込むっすよ! 私が合わせるっす!」
「ぶっ壊してやる!」
次の瞬間、柚子と同時に全力で前へと踏み込んだ。
叩き切る。
その意思だけを正面の化物へと向けて。
そしてこちらに向けられた手から射出された黒い鉛玉のような球体を体を反らし回避し、枝分かれするように振るわれた腕を掻い潜って間合いを詰め、そして振るう。
「っらあああああああああああああああッ!」
巨体の白く変色した脇腹を抉り取るように、短い刀身で一閃した。
そしてそれとほぼ同時。
「吹き飛べ!」
柚子の叫びと共に激しい衝突音が耳に響いた。
追撃の為に体勢を立て直し振り返ると、そこには拳を振るった柚子と頭を消し飛ばされたジェノサイドボックスが居た。
効いている。満身創痍もいいところだ。
(刺す……トドメを!)
そして早急に神崎の応急処置を。
そう考えて踏み出そうとしたところで、ジェノサイドボックスの奥から、血塗れの神崎が全力疾走でこちらに走ってきているのが見えた。
そして床に落ちているハルバードを拾い上げながら叫んだ。
「二人共手を止めるな! ぶち込めるだけの攻撃をぶち込んで跡形もなく消し飛ばせ!」
そして必死の形相で神崎は叫ぶ。
「最新型だ! コイツの体、再生するぞ!」
そんな最悪な情報を。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

ここは貴方の国ではありませんよ
水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。
厄介ごとが多いですね。
裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。
※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる