魔剣拾った。同居した。

山外大河

文字の大きさ
上 下
30 / 115
1-3 新しい日常 新しい非日常

7 帰路

しおりを挟む
 やる事を全部やった後、自宅で読むように言われたウィザードの教本を何冊か受け取った後に神崎が運転する車へと乗り込んだ。
 このまま自宅まで送ってくれるらしい。

「すみませんね、送ってもらう事になって」

「そりゃお前、金貸してくれって頭下げてくるような奴に、公共機関乗り継いで帰れなんて言えねえだろ」

 先程、全部終わった位のタイミングで神崎に頭を下げた。
 ウィザードの襲撃によって発生した問題がある程度解決した今、それ以前に抱えていた問題が露呈してしまった訳だ。

 自分一人ならどうにかなる。
 だがユイもとなると給料日までの生活どうしよう問題だ。
 一応駄目元でアンノウンを生活させるための補助金とかそういうのが無いかと確認は取ったものの、そんな事態が想定外。
 そして流石に税金で動いている組織である以上、その辺の融通はすぐには利かない。
 だからシンプルに金を借りた。

「とりあえずコンビニの方の給料が出たら返すんで」

「いや、ウィザードの初任給が出たらでいい」

「え、でも早めに返さないと利子とか……」

「え、もしかして営利目的で貸してるとか思ってんのか?」

 とまあそんなやり取りをしつつ、神崎の車は鉄平の自宅へと向かって走り出す。

「しっかし今更なんですけど、俺達家に帰しても良かったんですか?」

「駄目か?」

「いや、普通監視対象みたいな……手の届く範囲に置いといたりするもんかなと」

「そこのところ気にし始めたら、俺達はお前らの行動の全てに縛りを設けないといけなくなる。当然そうするべきという考えは否定しねえけど……そもそもある程度自由にさせて大丈夫という信頼すら向けられないのなら、俺達はあそこで戦いを止めるべきじゃなかった……それに」

「それに?」

「監視役ならいるだろ。お前だってウィザードだ」

「書類上明日からですけどね」

「まあその辺は問題が起きりゃうまくやるさ……それよりも」

 神崎は少し言いにくそうに間を空けてから言う。

「送り届ける側が言うのもアレだけどよ、一人暮らしの成人男性の家に小学校高学年……良くて中一のガキが転がり込む訳だろ。普通に犯罪臭しかしなくないか?」

「そこ触れます?」

「いや触れるだろ。なんか自然な流れでお前ら二人で暮らす感じになってるけど、そこはうまい事分け……ああ駄目だ。一応杉浦が管理するアンノウンって形で通してるから一緒じゃないと駄目なんだ」

「やっぱり自然な流れじゃの」

「自然な流れでも世間一般的に見りゃ不自然なんだよ……心配だ」

「まあ世間体とかはうまい事しないとなとは思いますけど……これそういうの以外で心配されているんだったら心外ですよ。それ人の事ロリコン扱いしてる事になりますからね。違いますよ俺」

「そうじゃよ。今日風間さんに挨拶に行った時に確信したが、鉄平マジでワシをそういう風に見てないんだなって……確信が持てたのじゃ」

 後半に行くにつれ、声が小さくなっていくユイ。

「……勝てねぇ、アレどうやって勝つんじゃぁ……」

 ぼそぼそと呟いていて何言ってるか分からないけど、テンション低いのは分かった。

「どうしたユイ。車酔いでもしたか?」

「いや、なんでも無いのじゃ。なんでも無いというか、何も無いというか……」

 胸元に手を起きながらそう言うユイ。

「……? ま、まあとにかく神崎さん。俺はロリコンじゃないですよ! どっちかと言えば滅茶苦茶エロいお姉さんが好きです! それこそ支局長の風間さんみたいな!」

「それ聞いて少し安心したけど、そういうのに職場の人間の名前出すのは生々しいから止めろ」

「あ、はい」

 大正論である。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・

今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。 その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。 皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。 刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

処理中です...