28 / 115
1-3 新しい日常 新しい非日常
5 辿り着くべき所、辿り着いた場所
しおりを挟む
「風間は?」
「柚子なら明日の小テストに備えて寝るっす! とか言って帰ったのじゃ」
「いや小テストに備えて勉強しろよ」
「分かってませんね。テスト前日に今さら詰め込んでも結果なんて大して変わんないんですよ。普段から真面目にやっている奴が勝つんです」
「もっともらしい事を負けてた側の奴が言ってやがる……」
とまあそんなやり取りを交わしながら神崎と合流し、柚子が抜けた三人パーティで各所に挨拶回りを決行。
「ちなみに今からどういう所回るんですか? とりあえず昨日俺達と戦ってた人達のところですかね」
「いや、ウィザードの実働部隊に挨拶するってなったら、代表して俺か篠原さんにって感じになるだろうからそっちは良いだろ。他の連中には訓練の時にでも各々やって貰えれば……ああ、俺副隊長な。言ってなかったけど」
「急にカミングアウトしますね。滅茶苦茶上司じゃないですか」
「副隊長じゃなくても上司だろ。で、どこ回るかって話だな」
少し考えを纏めるように一拍空けてから神崎は答える。
「医務室の先生には書類色々書いてもらってた時に少し顔合わせてたな。だとしたら後は総務課に技術開発化のエンジニアさん達だろ? 経理も一応顔出して……ああ、あと絶対挨拶しておかないといけないのが、異界管理課だな」
「異界管理課?」
突然聞き馴染の無い部署名が出てきてそう問い返すと、神崎は説明してくれる。
「異世界から転移してくるアンノウンを可能な限りダンジョンという防衛システムへと転移させ、隔離する。言わばダンジョンの管理人だ」
「ダンジョンの……管理人」
「ああ。その人達の頑張りが無きゃ今頃とっくに世界は形を変えている。それだけ大事な部署だな。俺達前線に立つウィザードはあくまで零れ落ちた相手と戦っている訳で、重要度で言えば俺らよりよっぽど大事な世界を守る要だ」
「なあ、そもそもダンジョンって何なのじゃ? よく分からんのじゃが」
ユイが首を傾げて聞いてくる。
「そういやお前にはその辺の説明出来てなかったな。そういうのゆっくり話す前に物騒な事になったからな」
「そりゃ悪かったな」
「いや、別に良いですよその辺は」
そして今朝目が覚めてからもそういう話は出来ていない訳で、これを気に話しておかなければならないと思う。
あまりユイが聞いて楽しい話じゃないと思うけど。
「ざっくりと話すと、ユイがあの時道に突き刺さってたのはその、異界管理課? がミスった結果だ。ミスってなければダンジョンってところに辿り着いてた。そんな風に異世界から来るユイみたいなのを隔離しておくのがダンジョンだ」
「そこにもし辿り着いてたら、ワシはどうなってた?」
「それはお前…………」
答えにくい事を聞かれて言葉に詰まるが、それを見かねてか神崎が答える。
「お前が人間と接触する前の形態を長時間維持できないのなら、その内死ぬだろうな。当然の事ながら基本的にダンジョンには意図的に足を踏み入れる人間なんていないんだから」
「……」
「それに色々な世界からこの世界を侵略しに来た化物が放りこまれているんだ。環境もこの世の終わりみたいなもんだよ。地獄だ地獄」
「…………そうか」
それを聞いてユイは押し黙る。
だけどやがて恐る恐るという風に聞いてきた。
「ところでこれワシは異界管理課とやらに足を運んで良いのじゃろうか?」
「駄目な理由あるか?」
神崎の問いにユイは静かに答える。
「ワシは今此処にいられて良かったと思っている。そんな酷い所に辿り着かなくて、鉄平の近くに辿り着いて良かったと。そう思っている。じゃが……それは頑張って世界を守っている人達が失敗した結果じゃろ? その結果が自分達の前に来る。それはその人達にとってあまり良い気分じゃないのではないか?」
その言葉を聞いた神崎は静かに鉄平に視線を向ける。
何か言ってやれと、そういう視線。
分かっている。分からないことの説明は彼に頼るが、それは自分がやるべき事だ。
鉄平はユイの肩に手を起き言う。
「そういう事を言える奴が生き残ったんだ。そりゃミスった結果だろうけど、悪くは思わない筈だ。もしそれでも文句言ってくる奴がいたら……その時はちゃんと反論してやるから」
「鉄平……」
「とにかく自分が生き残った事を悪く思うのは止めよう。ポジティブに行こうぜポジティブに」
「……そうじゃな」
「じゃあうまく着地できたところで、先にそういう面倒そうなところから行っておくか」
そして神崎が次の目的地を口にする。
「行くぞ、異界管理課に」
日本に10箇所あるダンジョンの一つ。
北陸ダンジョンを管理する、その場所に。
「柚子なら明日の小テストに備えて寝るっす! とか言って帰ったのじゃ」
「いや小テストに備えて勉強しろよ」
「分かってませんね。テスト前日に今さら詰め込んでも結果なんて大して変わんないんですよ。普段から真面目にやっている奴が勝つんです」
「もっともらしい事を負けてた側の奴が言ってやがる……」
とまあそんなやり取りを交わしながら神崎と合流し、柚子が抜けた三人パーティで各所に挨拶回りを決行。
「ちなみに今からどういう所回るんですか? とりあえず昨日俺達と戦ってた人達のところですかね」
「いや、ウィザードの実働部隊に挨拶するってなったら、代表して俺か篠原さんにって感じになるだろうからそっちは良いだろ。他の連中には訓練の時にでも各々やって貰えれば……ああ、俺副隊長な。言ってなかったけど」
「急にカミングアウトしますね。滅茶苦茶上司じゃないですか」
「副隊長じゃなくても上司だろ。で、どこ回るかって話だな」
少し考えを纏めるように一拍空けてから神崎は答える。
「医務室の先生には書類色々書いてもらってた時に少し顔合わせてたな。だとしたら後は総務課に技術開発化のエンジニアさん達だろ? 経理も一応顔出して……ああ、あと絶対挨拶しておかないといけないのが、異界管理課だな」
「異界管理課?」
突然聞き馴染の無い部署名が出てきてそう問い返すと、神崎は説明してくれる。
「異世界から転移してくるアンノウンを可能な限りダンジョンという防衛システムへと転移させ、隔離する。言わばダンジョンの管理人だ」
「ダンジョンの……管理人」
「ああ。その人達の頑張りが無きゃ今頃とっくに世界は形を変えている。それだけ大事な部署だな。俺達前線に立つウィザードはあくまで零れ落ちた相手と戦っている訳で、重要度で言えば俺らよりよっぽど大事な世界を守る要だ」
「なあ、そもそもダンジョンって何なのじゃ? よく分からんのじゃが」
ユイが首を傾げて聞いてくる。
「そういやお前にはその辺の説明出来てなかったな。そういうのゆっくり話す前に物騒な事になったからな」
「そりゃ悪かったな」
「いや、別に良いですよその辺は」
そして今朝目が覚めてからもそういう話は出来ていない訳で、これを気に話しておかなければならないと思う。
あまりユイが聞いて楽しい話じゃないと思うけど。
「ざっくりと話すと、ユイがあの時道に突き刺さってたのはその、異界管理課? がミスった結果だ。ミスってなければダンジョンってところに辿り着いてた。そんな風に異世界から来るユイみたいなのを隔離しておくのがダンジョンだ」
「そこにもし辿り着いてたら、ワシはどうなってた?」
「それはお前…………」
答えにくい事を聞かれて言葉に詰まるが、それを見かねてか神崎が答える。
「お前が人間と接触する前の形態を長時間維持できないのなら、その内死ぬだろうな。当然の事ながら基本的にダンジョンには意図的に足を踏み入れる人間なんていないんだから」
「……」
「それに色々な世界からこの世界を侵略しに来た化物が放りこまれているんだ。環境もこの世の終わりみたいなもんだよ。地獄だ地獄」
「…………そうか」
それを聞いてユイは押し黙る。
だけどやがて恐る恐るという風に聞いてきた。
「ところでこれワシは異界管理課とやらに足を運んで良いのじゃろうか?」
「駄目な理由あるか?」
神崎の問いにユイは静かに答える。
「ワシは今此処にいられて良かったと思っている。そんな酷い所に辿り着かなくて、鉄平の近くに辿り着いて良かったと。そう思っている。じゃが……それは頑張って世界を守っている人達が失敗した結果じゃろ? その結果が自分達の前に来る。それはその人達にとってあまり良い気分じゃないのではないか?」
その言葉を聞いた神崎は静かに鉄平に視線を向ける。
何か言ってやれと、そういう視線。
分かっている。分からないことの説明は彼に頼るが、それは自分がやるべき事だ。
鉄平はユイの肩に手を起き言う。
「そういう事を言える奴が生き残ったんだ。そりゃミスった結果だろうけど、悪くは思わない筈だ。もしそれでも文句言ってくる奴がいたら……その時はちゃんと反論してやるから」
「鉄平……」
「とにかく自分が生き残った事を悪く思うのは止めよう。ポジティブに行こうぜポジティブに」
「……そうじゃな」
「じゃあうまく着地できたところで、先にそういう面倒そうなところから行っておくか」
そして神崎が次の目的地を口にする。
「行くぞ、異界管理課に」
日本に10箇所あるダンジョンの一つ。
北陸ダンジョンを管理する、その場所に。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた
八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』
俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。
レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。
「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」
レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。
それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。
「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」
狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。
その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった――
別サイトでも投稿しております。
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~
エール
ファンタジー
古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。
彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。
経営者は若い美人姉妹。
妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。
そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。
最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

はぁ?とりあえず寝てていい?
夕凪
ファンタジー
嫌いな両親と同級生から逃げて、アメリカ留学をした帰り道。帰国中の飛行機が事故を起こし、日本の女子高生だった私は墜落死した。特に未練もなかったが、強いて言えば、大好きなもふもふと一緒に暮らしたかった。しかし何故か、剣と魔法の異世界で、貴族の子として転生していた。しかも男の子で。今世の両親はとてもやさしくいい人たちで、さらには前世にはいなかった兄弟がいた。せっかくだから思いっきり、もふもふと戯れたい!惰眠を貪りたい!のんびり自由に生きたい!そう思っていたが、5歳の時に行われる判定の儀という、魔法属性を調べた日を境に、幸せな日常が崩れ去っていった・・・。その後、名を変え別の人物として、相棒のもふもふと共に旅に出る。相棒のもふもふであるズィーリオスの為の旅が、次第に自分自身の未来に深く関わっていき、仲間と共に逃れられない運命の荒波に飲み込まれていく。
※第二章は全体的に説明回が多いです。
<<<小説家になろうにて先行投稿しています>>>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる