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1-3 新しい日常 新しい非日常
5 辿り着くべき所、辿り着いた場所
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「風間は?」
「柚子なら明日の小テストに備えて寝るっす! とか言って帰ったのじゃ」
「いや小テストに備えて勉強しろよ」
「分かってませんね。テスト前日に今さら詰め込んでも結果なんて大して変わんないんですよ。普段から真面目にやっている奴が勝つんです」
「もっともらしい事を負けてた側の奴が言ってやがる……」
とまあそんなやり取りを交わしながら神崎と合流し、柚子が抜けた三人パーティで各所に挨拶回りを決行。
「ちなみに今からどういう所回るんですか? とりあえず昨日俺達と戦ってた人達のところですかね」
「いや、ウィザードの実働部隊に挨拶するってなったら、代表して俺か篠原さんにって感じになるだろうからそっちは良いだろ。他の連中には訓練の時にでも各々やって貰えれば……ああ、俺副隊長な。言ってなかったけど」
「急にカミングアウトしますね。滅茶苦茶上司じゃないですか」
「副隊長じゃなくても上司だろ。で、どこ回るかって話だな」
少し考えを纏めるように一拍空けてから神崎は答える。
「医務室の先生には書類色々書いてもらってた時に少し顔合わせてたな。だとしたら後は総務課に技術開発化のエンジニアさん達だろ? 経理も一応顔出して……ああ、あと絶対挨拶しておかないといけないのが、異界管理課だな」
「異界管理課?」
突然聞き馴染の無い部署名が出てきてそう問い返すと、神崎は説明してくれる。
「異世界から転移してくるアンノウンを可能な限りダンジョンという防衛システムへと転移させ、隔離する。言わばダンジョンの管理人だ」
「ダンジョンの……管理人」
「ああ。その人達の頑張りが無きゃ今頃とっくに世界は形を変えている。それだけ大事な部署だな。俺達前線に立つウィザードはあくまで零れ落ちた相手と戦っている訳で、重要度で言えば俺らよりよっぽど大事な世界を守る要だ」
「なあ、そもそもダンジョンって何なのじゃ? よく分からんのじゃが」
ユイが首を傾げて聞いてくる。
「そういやお前にはその辺の説明出来てなかったな。そういうのゆっくり話す前に物騒な事になったからな」
「そりゃ悪かったな」
「いや、別に良いですよその辺は」
そして今朝目が覚めてからもそういう話は出来ていない訳で、これを気に話しておかなければならないと思う。
あまりユイが聞いて楽しい話じゃないと思うけど。
「ざっくりと話すと、ユイがあの時道に突き刺さってたのはその、異界管理課? がミスった結果だ。ミスってなければダンジョンってところに辿り着いてた。そんな風に異世界から来るユイみたいなのを隔離しておくのがダンジョンだ」
「そこにもし辿り着いてたら、ワシはどうなってた?」
「それはお前…………」
答えにくい事を聞かれて言葉に詰まるが、それを見かねてか神崎が答える。
「お前が人間と接触する前の形態を長時間維持できないのなら、その内死ぬだろうな。当然の事ながら基本的にダンジョンには意図的に足を踏み入れる人間なんていないんだから」
「……」
「それに色々な世界からこの世界を侵略しに来た化物が放りこまれているんだ。環境もこの世の終わりみたいなもんだよ。地獄だ地獄」
「…………そうか」
それを聞いてユイは押し黙る。
だけどやがて恐る恐るという風に聞いてきた。
「ところでこれワシは異界管理課とやらに足を運んで良いのじゃろうか?」
「駄目な理由あるか?」
神崎の問いにユイは静かに答える。
「ワシは今此処にいられて良かったと思っている。そんな酷い所に辿り着かなくて、鉄平の近くに辿り着いて良かったと。そう思っている。じゃが……それは頑張って世界を守っている人達が失敗した結果じゃろ? その結果が自分達の前に来る。それはその人達にとってあまり良い気分じゃないのではないか?」
その言葉を聞いた神崎は静かに鉄平に視線を向ける。
何か言ってやれと、そういう視線。
分かっている。分からないことの説明は彼に頼るが、それは自分がやるべき事だ。
鉄平はユイの肩に手を起き言う。
「そういう事を言える奴が生き残ったんだ。そりゃミスった結果だろうけど、悪くは思わない筈だ。もしそれでも文句言ってくる奴がいたら……その時はちゃんと反論してやるから」
「鉄平……」
「とにかく自分が生き残った事を悪く思うのは止めよう。ポジティブに行こうぜポジティブに」
「……そうじゃな」
「じゃあうまく着地できたところで、先にそういう面倒そうなところから行っておくか」
そして神崎が次の目的地を口にする。
「行くぞ、異界管理課に」
日本に10箇所あるダンジョンの一つ。
北陸ダンジョンを管理する、その場所に。
「柚子なら明日の小テストに備えて寝るっす! とか言って帰ったのじゃ」
「いや小テストに備えて勉強しろよ」
「分かってませんね。テスト前日に今さら詰め込んでも結果なんて大して変わんないんですよ。普段から真面目にやっている奴が勝つんです」
「もっともらしい事を負けてた側の奴が言ってやがる……」
とまあそんなやり取りを交わしながら神崎と合流し、柚子が抜けた三人パーティで各所に挨拶回りを決行。
「ちなみに今からどういう所回るんですか? とりあえず昨日俺達と戦ってた人達のところですかね」
「いや、ウィザードの実働部隊に挨拶するってなったら、代表して俺か篠原さんにって感じになるだろうからそっちは良いだろ。他の連中には訓練の時にでも各々やって貰えれば……ああ、俺副隊長な。言ってなかったけど」
「急にカミングアウトしますね。滅茶苦茶上司じゃないですか」
「副隊長じゃなくても上司だろ。で、どこ回るかって話だな」
少し考えを纏めるように一拍空けてから神崎は答える。
「医務室の先生には書類色々書いてもらってた時に少し顔合わせてたな。だとしたら後は総務課に技術開発化のエンジニアさん達だろ? 経理も一応顔出して……ああ、あと絶対挨拶しておかないといけないのが、異界管理課だな」
「異界管理課?」
突然聞き馴染の無い部署名が出てきてそう問い返すと、神崎は説明してくれる。
「異世界から転移してくるアンノウンを可能な限りダンジョンという防衛システムへと転移させ、隔離する。言わばダンジョンの管理人だ」
「ダンジョンの……管理人」
「ああ。その人達の頑張りが無きゃ今頃とっくに世界は形を変えている。それだけ大事な部署だな。俺達前線に立つウィザードはあくまで零れ落ちた相手と戦っている訳で、重要度で言えば俺らよりよっぽど大事な世界を守る要だ」
「なあ、そもそもダンジョンって何なのじゃ? よく分からんのじゃが」
ユイが首を傾げて聞いてくる。
「そういやお前にはその辺の説明出来てなかったな。そういうのゆっくり話す前に物騒な事になったからな」
「そりゃ悪かったな」
「いや、別に良いですよその辺は」
そして今朝目が覚めてからもそういう話は出来ていない訳で、これを気に話しておかなければならないと思う。
あまりユイが聞いて楽しい話じゃないと思うけど。
「ざっくりと話すと、ユイがあの時道に突き刺さってたのはその、異界管理課? がミスった結果だ。ミスってなければダンジョンってところに辿り着いてた。そんな風に異世界から来るユイみたいなのを隔離しておくのがダンジョンだ」
「そこにもし辿り着いてたら、ワシはどうなってた?」
「それはお前…………」
答えにくい事を聞かれて言葉に詰まるが、それを見かねてか神崎が答える。
「お前が人間と接触する前の形態を長時間維持できないのなら、その内死ぬだろうな。当然の事ながら基本的にダンジョンには意図的に足を踏み入れる人間なんていないんだから」
「……」
「それに色々な世界からこの世界を侵略しに来た化物が放りこまれているんだ。環境もこの世の終わりみたいなもんだよ。地獄だ地獄」
「…………そうか」
それを聞いてユイは押し黙る。
だけどやがて恐る恐るという風に聞いてきた。
「ところでこれワシは異界管理課とやらに足を運んで良いのじゃろうか?」
「駄目な理由あるか?」
神崎の問いにユイは静かに答える。
「ワシは今此処にいられて良かったと思っている。そんな酷い所に辿り着かなくて、鉄平の近くに辿り着いて良かったと。そう思っている。じゃが……それは頑張って世界を守っている人達が失敗した結果じゃろ? その結果が自分達の前に来る。それはその人達にとってあまり良い気分じゃないのではないか?」
その言葉を聞いた神崎は静かに鉄平に視線を向ける。
何か言ってやれと、そういう視線。
分かっている。分からないことの説明は彼に頼るが、それは自分がやるべき事だ。
鉄平はユイの肩に手を起き言う。
「そういう事を言える奴が生き残ったんだ。そりゃミスった結果だろうけど、悪くは思わない筈だ。もしそれでも文句言ってくる奴がいたら……その時はちゃんと反論してやるから」
「鉄平……」
「とにかく自分が生き残った事を悪く思うのは止めよう。ポジティブに行こうぜポジティブに」
「……そうじゃな」
「じゃあうまく着地できたところで、先にそういう面倒そうなところから行っておくか」
そして神崎が次の目的地を口にする。
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