7 / 115
1-1 魔剣少女との出会いについて
ex 追走者達
しおりを挟む
「こ、これ相当マズい事になるかもしれないっすね」
「かもしれないじゃない。なっているんだ既に。大事件だ」
「そうっすよねぇ……うわぁ、マジ最悪っすよぉ!」
黒いスーツに身を包んだ異界管理局北陸第一支部所属の準一級ウィザードの女子高生、ポニーテールがトレードマークの風間柚子は頭を抱えてそう叫ぶ。
「風間、時間帯考えろ。静かにな」
「あ、すんません」
上司であり部隊長の三十代前半の男性、一級ウィザードの篠原に謝罪しつつも、目の前の何かが突き刺さっていた形跡のあるアスファルトに改めて注意を向ける。
この場所に異世界から転移されてくる物品が……彼女達ウィザードの中でアンノウンと呼ばれている何かが出現していた事は支部に設置された観測機で確認済だった。
危険度を表すグレードはSSS。
よりにもよってこれまで観測されて来た中でも最悪な脅威の一つとして分類されるそんな代物が、ダンジョンという隔離所の外に出現してしまった訳だが……この場所にはもう残っていない。
……そして反応も消えた。
「しかし一体どうなってんすか……最高クラスのアンノウンっすよ。まさか民間人が破壊したとは思えないし……だとしたら観測機に反応しない位に力を隠したって事っすかね」
「だとしてもあれだけの強い反応を隠せるものか? 普通に考えれば無茶なものだが」
「でも常識を超えた挙動をするのがアンノウンっす」
「何せ違う世界から来ているからな……頼んだぞ、お前が頼りだ。神童と呼ばれて来た力を此処で発揮してくれ」
「やれるだけやってみるっすよ」
言いながらアスファルトに空いた穴に手を触れる。
異界管理局に設置された観測機では一定以上の反応のあるアンノウンしか検知できない。故に地に足を付けた捜査というものが現場のウィザードには求められる。
その為に市民から情報提供を募るし……専門の技能も駆使する。
だがそれでも目の前に有った筈の何かの所在は掴めない。
もしそれを探せる可能性がある者が居るのなら……この支部においては彼女に他ならない。
(……反応が薄すぎる。辿れるっすかねこれ……)
異界管理局におけるウィザードの等級において準一級は上から三番目。
上澄み中の上澄み。
その階級に僅か16歳で到達する程の才能の持ち主が風間柚子だ。
諸々の都合上一級には上がれていないが、既にその実力はその域に……否、その先に到達しているかもしれないと評される程の天才。
彼女ならば……可能性がある。
「皆、すまないが一旦二人一組で足を使って探してくれ! 風間が辿れれば情報を回すからよろしく頼む!」
篠原の指示でひとまず探知を風間に任せたウィザード達が走り去っていく。
「……皆が見付けてくれると話早いんすけどね」
「望み薄だろう。現れたのがシンプルな化物ならともかくアンノウンだ。自分の意思を持って動くタイプでなければ民間人に寄生して好き勝手動く訳で。屋内に普通の人間とその持ち物として拠点を組まれてたら、一軒一軒虱潰しに調べなければならなくなる。潜伏先の家に近付いたら反応が……なんて単純に行ってくれるとも思わないからな」
「そうっすね。だとしたらほんと私だけが頼りって訳っすね」
「ああ。お世辞でもなんでもなく捜査も戦闘もお前が俺達の要だよ。だから頼むぞ」
「はい! そこまで言ってくれるならマジで頑張るっすよ私!」
「そこまで言わなくても頑張ってくれ……」
「もっと頑張るって意味っす! っしゃあ、やったるっすよ!」
「風間、だから夜なのにうるさいぞ」
「すみません。あ、でも篠原さんもさっき皆に大声で指示出してなかったっすか?」
「人の事を言える立場じゃなかったな」
「そうっすよ、どんな立場で私に注意してんすか」
「まあ一応……上司の立場か」
「……確かに。それ言われたら反応できねえっすね」
そんな軽口を叩きながら、より深くアンノウンの痕跡を辿っていく。
神童と呼ばれた魔術の才能を、最大限に生かして。
「かもしれないじゃない。なっているんだ既に。大事件だ」
「そうっすよねぇ……うわぁ、マジ最悪っすよぉ!」
黒いスーツに身を包んだ異界管理局北陸第一支部所属の準一級ウィザードの女子高生、ポニーテールがトレードマークの風間柚子は頭を抱えてそう叫ぶ。
「風間、時間帯考えろ。静かにな」
「あ、すんません」
上司であり部隊長の三十代前半の男性、一級ウィザードの篠原に謝罪しつつも、目の前の何かが突き刺さっていた形跡のあるアスファルトに改めて注意を向ける。
この場所に異世界から転移されてくる物品が……彼女達ウィザードの中でアンノウンと呼ばれている何かが出現していた事は支部に設置された観測機で確認済だった。
危険度を表すグレードはSSS。
よりにもよってこれまで観測されて来た中でも最悪な脅威の一つとして分類されるそんな代物が、ダンジョンという隔離所の外に出現してしまった訳だが……この場所にはもう残っていない。
……そして反応も消えた。
「しかし一体どうなってんすか……最高クラスのアンノウンっすよ。まさか民間人が破壊したとは思えないし……だとしたら観測機に反応しない位に力を隠したって事っすかね」
「だとしてもあれだけの強い反応を隠せるものか? 普通に考えれば無茶なものだが」
「でも常識を超えた挙動をするのがアンノウンっす」
「何せ違う世界から来ているからな……頼んだぞ、お前が頼りだ。神童と呼ばれて来た力を此処で発揮してくれ」
「やれるだけやってみるっすよ」
言いながらアスファルトに空いた穴に手を触れる。
異界管理局に設置された観測機では一定以上の反応のあるアンノウンしか検知できない。故に地に足を付けた捜査というものが現場のウィザードには求められる。
その為に市民から情報提供を募るし……専門の技能も駆使する。
だがそれでも目の前に有った筈の何かの所在は掴めない。
もしそれを探せる可能性がある者が居るのなら……この支部においては彼女に他ならない。
(……反応が薄すぎる。辿れるっすかねこれ……)
異界管理局におけるウィザードの等級において準一級は上から三番目。
上澄み中の上澄み。
その階級に僅か16歳で到達する程の才能の持ち主が風間柚子だ。
諸々の都合上一級には上がれていないが、既にその実力はその域に……否、その先に到達しているかもしれないと評される程の天才。
彼女ならば……可能性がある。
「皆、すまないが一旦二人一組で足を使って探してくれ! 風間が辿れれば情報を回すからよろしく頼む!」
篠原の指示でひとまず探知を風間に任せたウィザード達が走り去っていく。
「……皆が見付けてくれると話早いんすけどね」
「望み薄だろう。現れたのがシンプルな化物ならともかくアンノウンだ。自分の意思を持って動くタイプでなければ民間人に寄生して好き勝手動く訳で。屋内に普通の人間とその持ち物として拠点を組まれてたら、一軒一軒虱潰しに調べなければならなくなる。潜伏先の家に近付いたら反応が……なんて単純に行ってくれるとも思わないからな」
「そうっすね。だとしたらほんと私だけが頼りって訳っすね」
「ああ。お世辞でもなんでもなく捜査も戦闘もお前が俺達の要だよ。だから頼むぞ」
「はい! そこまで言ってくれるならマジで頑張るっすよ私!」
「そこまで言わなくても頑張ってくれ……」
「もっと頑張るって意味っす! っしゃあ、やったるっすよ!」
「風間、だから夜なのにうるさいぞ」
「すみません。あ、でも篠原さんもさっき皆に大声で指示出してなかったっすか?」
「人の事を言える立場じゃなかったな」
「そうっすよ、どんな立場で私に注意してんすか」
「まあ一応……上司の立場か」
「……確かに。それ言われたら反応できねえっすね」
そんな軽口を叩きながら、より深くアンノウンの痕跡を辿っていく。
神童と呼ばれた魔術の才能を、最大限に生かして。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!
どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入!
舐めた奴らに、真実が牙を剥く!
何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ?
しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない?
訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、
なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト!
そして…わかってくる、この異世界の異常性。
出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。
主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。
相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。
ハーレム要素は、不明とします。
復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。
追記
2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。
8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。
2024/02/23
アルファポリスオンリーを解除しました。

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。
異世界冒険少女
柊 亮
ファンタジー
生まれ付き病弱な少女『水汲 知園(みずくみ ちその)』が唯一持っていた夢である(外を歩いてみたい)を実現することなく命を落とす
それを見ていた神と名乗る者からもう一度新しい人生をプレゼントされる
こうしてか弱い少女の新しい人生が始まる

黄金蒐覇のグリード 〜力と財貨を欲しても、理性と対価は忘れずに〜
黒城白爵
ファンタジー
とある異世界を救い、元の世界へと帰還した玄鐘理音は、その後の人生を平凡に送った末に病でこの世を去った。
死後、不可思議な空間にいた謎の神性存在から、異世界を救った報酬として全盛期の肉体と変質したかつての力である〈強欲〉を受け取り、以前とは別の異世界にて第二の人生をはじめる。
自由気儘に人を救い、スキルやアイテムを集め、敵を滅する日々は、リオンの空虚だった心を満たしていく。
黄金と力を蒐集し目指すは世界最高ランクの冒険者。
使命も宿命も無き救世の勇者は、今日も欲望と理性を秤にかけて我が道を往く。
※ 更新予定日は【月曜日】と【金曜日】です。
※第301話から更新時間を朝5時からに変更します。
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

セリオン共和国再興記 もしくは宇宙刑事が召喚されてしまったので・・・
今卓&
ファンタジー
地球での任務が終わった銀河連合所属の刑事二人は帰途の途中原因不明のワームホールに巻き込まれる、彼が気が付くと可住惑星上に居た。
その頃会議中の皇帝の元へ伯爵から使者が送られる、彼等は捕らえられ教会の地下へと送られた。
皇帝は日課の教会へ向かう途中でタイスと名乗る少女を”宮”へ招待するという、タイスは不安ながらも両親と周囲の反応から招待を断る事はできず”宮”へ向かう事となる。
刑事は離別したパートナーの捜索と惑星の調査の為、巡視艇から下船する事とした、そこで彼は4人の知性体を救出し獣人二人とエルフを連れてエルフの住む土地へ彼等を届ける旅にでる事となる。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる