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四章 冒険者達の休日

ex 穴だらけのテストの真骨頂

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 係の人間に続行の有無を確認されたグレンはそれに頷く。
 ここからインターバル無しでAランクの試験が始まる。

(さて……次はどんなのが出てくる)

 EランクのテストからいきなりBランクのテストという、3ランクも上げての挑戦の後だ。
 1ランク上げる事によりどの位試験内容に差があるのかは分からない。
 とはいえどんな相手が出てこようと、全力でぶっ飛ばすという心意気だけは変わらない。

「続けて次、Aランクの試験に入りまーす」

 係の人間がそう言って、観客席からも歓声が飛んできて。

「気ぃ抜くなよグレン!」

「頑張ってください!」

「がんばっすよグレンさん!」

 仲間達からの応援も聞こえて来る。

(頑張る……そして気を抜かない。当然だ)

 このテストだけの話ではない。
 人生における大切な局面。
 自分が大切だと思う局面では気も手も抜かず、全力で頑張る。
 そんな当たり前の事を、当たり前に貫き通す。
 それが最低限崩さない。崩したくない信条だ。

(やるぞ)

 グレンは呼吸を整え、それから武器を構える。
 次の瞬間、再び試験官の幻術が発動。
 グレンの周囲に五体の黒い霧が浮かび上がる。
 そう……黒い霧。

(これはまあ……流行を捉えたビジュアルの奴出してきたな)

 そのスペックが同じかどうかは分からない。
 だが少なくとも姿形だけはラーンの村で戦った黒い霧に。
 恐らく魔獣討伐の依頼を受けた他の冒険者も会敵したであろう黒い霧に風貌が似ていた。
 実際会場がざわついているという事は、やはり戦った事のある冒険者は居るみたいだ。

(まさか一体一体あの化物と同じような強さって事はねえよな)

 実際に戦ったから分かっている。
 今の自分の実力は、三体同時に相手にして辛うじて勝てるかどうか。
 つまりもしそのクラスの相手が同時に五体も出てきたのだとすれば、かなり絶望的な状況な訳で。

(……流石にねえよな)

 いくらなんでもBランクのテストからAランクのテストという1ランクしか上がっていない状況の中で、それだけの変化は無い筈だと。
 そう思う。
 そう思いたい。
 思いたい……が。

(この試験、どうもそういうセオリー無視してきそうなんだよな)

 Bランクの試験もBランクにしては無茶苦茶な内容だった可能性もある訳で。
 こちらが危惧するシンプルな無茶苦茶を、悪気も無く実行してくるかもしれない。

 そして、そんな無茶苦茶かもしれない黒い霧は動き出す。

(ちょ、速……ッ!)

 その幻術の黒い霧の速度は、ラーンの村で戦った物より僅かに遅い。
 ……本当に、僅かに。
 そして急接近してきた黒い霧はその腕を振り下ろす。

「……ッ!」

 それをバックステップで躱すが、勢い余って地面に叩きつけられた腕の衝撃音で察する。

(おいおい……ふざけんなよなんだこれ)

 直感ではあるが、先程のBランクのテストに出てきた奴と同等程度の破壊力を持っているように思えた。
 つまり……つまりだ。

(あーくそ! やっぱこの試験無茶苦茶だわ!)

 先程の奴と同等の力とそれ以上のスピードを持った、現状何をしてくるか分からない敵が同時に五体。
 それが自身の戦う相手。


 そして今度は五体同時に動き出す。
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