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四章 冒険者達の休日

ex 疎い彼女らは気づかない

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「ど、どどどど、どうとは?」

 リーナの問いにアリサは露骨にそんな反応をする。
 どうとはと疑問系で返している割りには、顔を真っ赤にしている限り、大体何が言いたいのかは理解しているようで。
 ……それで大体の答えも察する事ができて。
 それでも聞かれたから補足はする。

「ほら、先輩は男の人な訳じゃないっすか。そういう風に見たりとかしてるのかなって。そういう話っす」

「そ、そういう話……ですか」

 アリサは表情を赤らめたまま、微かにうずくまって。
 それからリーナから僅かに視線を反らしつつ、静かに呟く。

「そ、そんなんじゃ……ないです」

 変に意識して露骨に恥ずかしそうに。

(あーこれは完全にそういうのだ)

 本人がそこまで自覚してないだけで。
 きっとそういう感情がそこにはある。

「そうっすか」

「な、なんでそんなにニコニコしてるんですか! 違いますよ! うん……違います」

「分かってるっす分かってるっす」

「ぜ、全然分かってない顔してますね!」

 ……分かってる。
 ……分かった。

(多分、少しアシストすればくっつくだろうな、先輩とアリサちゃん)

 クルージもあの様子で、アリサもこんな感じで。
 だとすれば多分それは間違いない。
 だとすればアシストしない理由もないだろう。

 アリサもクルージも自分にとってはとても大切な人で。
 その二人が幸せになれるのならば、それに越した事はない筈だから。

 何かすこしモヤっとするけれど。

「……?」

「どうしました?」

「あ、いや……なんでもないっす」

 言いながら、リーナ自身も何があったのかが良く分からない。

(……なんだろう、応援した方がいいと思うんだけどな)

 思うのだけれど。
 それは間違いないのだけれど……それでも。

(……なんか気が進まない)

 何故なのかは皆目見当付かないけれど。

「あ、そうだ」

 そしてその見当が付かないリーナに対し、アリサは半ば仕返しするように少しだけ悪い表情を浮かべて言う。

「それで、リーナさんはどうなんですか?」

「え、どうって何がっすか……?」

「クルージさんは男の人な訳じゃないですか……そういう意味でどう思ってるんですかっていう話です」

「え、どどど、どう思ってるか……っすか?」

 どう思っているのか。
 クルージという先輩は自身にとって大切な友達だ。

 話していると楽しくて。ノリがあって。
 誰かの為に動くことができるような。負わなくてもいい責任を抱え込んでしまうような。
 そんな優しい人で。

『少なくとも俺達は、お前の事を生きている価値の無い人間だとか思ってねえからな』

 そんな欲しかった言葉を言ってくれたような人で。

 可愛いと言って貰えた事が恥ずかしいけど嬉しいような人で。

「だ、大事な仲間で友達……っす。だからそういうのじゃ……ない…………っすよ」

「……」

「ない…………っす」

 違う筈だ。
 応援したい二人の間に入っていこうなんて考えは違う筈だ。
 ……きっと違う筈。

「そうですか。わかりました」

 アリサは少しリーナを見つめた後そう言った。

「な、なんでニコニコしてるんっすか」

「いえ……なんでもないです」

 そう言ってアリサは笑う。
 その意図は読めなかったけど、それよりも。

 自分の事が良く分からない。









 その後、リーナが帰った後の話。

(しかしなるほど……リーナさん、そういう感じか)

 自分が察しのいい方かどうかは分からないけれど、あそこまで露骨なら流石に分かる。

(これは……ボクがアシストした方がいいのかな)

 アリサにとって二人とも大切な人達で。
 その人達が幸せな関係性を築けるのならば、きっとそれに越した事はない。
 越した事はない……筈だけれど。

「……」

 すごく良く分からないけれど、酷く心がモヤモヤする。
 自分にとってクルージは仲良く親しくいたい相手で、本当に大切な人だけれど。
 ……多分それはそういう感情とは違う筈で。
 そうだと思っていて。
 それでも……だからこそ。

 ……自分が抱いている感情も。心のモヤも。

 その正体が分からない。 
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