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三章 人間という生き物の本質

32 疫病神の帰還

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 グレンに呼ばれてアリサ、リーナの順に下りていく。
 そして最後に俺が馬車から降りようとした所で、俺達に声を掛けて来る男がいた。

「おお、戻ったかグレン」

 当然の事ながら声の主は、聞き覚えのある声だ。
 村長だ。よりにもよって一番上の人間が態々直々に出迎えに来やがった。
 とはいえ誰が来ても顔を会わせにくいのは変わらないのだけれど。
 そして俺が馬車から出るのを少し躊躇う中、グレンが言う。

「態々どうも。それより手筈通り王都でギルドに依頼だして冒険者を雇ってきました」

「ああ、ご苦労だったな……と言いたいが、まさかその二人か?」

 村長は困惑気味にそう言う。
 多分村長からすれば、今村に起きている事態を解決する為に冒険者を雇ってこいと言ったのに子供を連れてきたみたいに見えるだろうし。
 そりゃ困惑の一つや二つ位はするだろう。
 それにだ。

「ん……キミはいつぞやの」

「あ、どうも。お久しぶりっす。いつぞやはお世話になりました」

 その片割が、少し前に旅人として村に滞在していた奴なら余計に困惑する事間違いなしだ。

「ああ、元気そうでなにより……で、グレン。まさかこの子達に依頼したのか?」

「まあパッと見選択ミスにしか見えないかもしれないですけど、それでもギルドに依頼内容査定してもらった上でその依頼を受注可能なパーティーを選んだんです。此処に来るまで何度か実力を見る機会はありましたが強いですよ。特にこっちの金髪の子は。あ、とりあえず自己紹介してもらってもいいか?」

「はい」

 グレンに促されてアリサが言う。

「アリサです。よろしくお願いします」

「あ、ああ。こちらこそよろしく頼む」

 村長はなお困惑気味にそう言った後、グレンに言う。

「それで……この二人だけか、連れてきたのは」

 この二人だけ、なんて言い方になったのはおそらくグレンの説明を聞いた上でも、やはりアリサに魔獣と戦える様な力があるように思えなかったのだろう。
 だから他にもいないのかという、期待と不安が混じった様なそんな言葉がグレンに掛けられたのだろう。
 そしてグレンは言う。

「いや、もう一人いる。コイツらは三人パーティーなんだ」

 言いながらグレンはこちらに視線を向ける。
 そして大丈夫だと言わんばかりに、こちらの目を見て頷いた。

「……」

 俺もそんなグレンに対して頷いた。
 ……さあ、一歩、踏みだせ。

 そして俺は馬車から飛び降りた。
 久しぶりに故郷の地を踏み、そして村長へ視線を向けて言う。

「お久しぶりです。お元気そうでなにより」

 そして。俺の登場に対し村長は……驚愕と困惑の表情を浮かべていた。
 ……そりゃそんな表情位するわな。まず絶対この場に出てくる様な奴じゃないもんな。
 そしてグレンはそんな驚愕の表情を浮かべる村長に言う。

「俺が今回雇ったのはこの三人だ。この三人と俺達で事に当たる」

 そんなグレンの言葉に対して、村長がすぐに何か言葉を返してくる事は無かった。
 だけどそれでも。やがて落ち着いて状況を理解していくと共に、浮かべられる表情は嫌悪に満ちたものになる。
 それに対し逃げだしたくなる気持ちを必死に抑えながら、何か言うべきかと考えていた所で、先に村長が口を開く。

「……なんのつもりだ、グレン」

 どうしてこんな奴を連れてきたと言わんばかりの。そんなグレンを責め立てる言葉。
 そんな言葉に対し、グレンはどこか涼しい表情で。それでもどこか好戦的な表情で返答する。

「なんのつもりも何も、この村を救ってくれる冒険者を雇う為に依頼を出した。そして大して条件も良くねえこの依頼を快く受けてくれたのはクルージだった。ただそんだけですよ」

 そしてグレンは強い口調で、言う。

「てめえらに散々虐げられて、それでも絞り出した善意だ。それにそんな悪意を向けんじゃねえぞクソジジイ」

「……お前に頼んだのは間違いだったか」

 村長は酷く重い声音でグレンに言う。

「やっていい事と悪い事があるだろ!」

「それアンタらが言える事かよ!」

 そして互いに睨み合う。
 そんな重い空気の中、俺に何か言える事があったかと言われるとある訳がなくて。
 多分俺が何か言った所で火に油を注ぐ結果になるだけで。
 そんな中でその空気に一石を投じたのは……アリサだった。

「ちょっと待ってください」

 アリサは強い意志が籠った声音で、グレンと村長の睨み合いに割って入る。

「その……村長さん達はきっと、クルージさんの事を誤解してますよ」

 動きだした。このタイミングで。
 アリサがSSランクの『不運』スキルであるが故に成立する、俺の誤解を解く為の手段。
 それをこのタイミングでアリサが決行に移し出した。
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