53 / 228
二章 ごく当たり前の日常を掴む為に
ex 価値のある人間である為に
しおりを挟む
雨が降りしきる午前の王都。
その頃墓場で起きている事など何も知らないリーナは、紙袋を手に自分の住むアパートの一室へと戻って来た。
「傘持ってって良かった。危ない危ない」
手にした紙袋が濡れなかった事にホッとしたリーナは、一旦テーブルの上に買ってきた紙袋を置いてから、キッチンへと向かう。
そしてしばらくして、紅茶を入れてテーブルの前へと戻って来たリーナは紙袋を開封。
買ってきたのは魔術教本である。
一応一般的な書店で流通している物の中では上級者向けとされるものだ。
「……うわぁ、これ絶対難しい奴だ」
その教本の中をパラパラとめくっていくと、やはりというか当然ではあるが、初心者向けのものとは遥かに習得難易度が違っていた。内容そのものもさることながら、書かれている文章そのものが小難しいものになっている。
(……これ明日までに何個覚えられるかなぁ)
最もそれらは通常一日で習得できるものではないのだが、少なくともリーナはそれを複数個習得していくつもりだった。
少なくとも、そうしようと思えるだけの熱意はそこにあった。
新しい何かを覚える事は、きっと自分の価値を高めてくれるから。
そして……仲間になった。友達になった人達の役に立ちたいから。
(……友達、か)
改めて昨日、自分が勝手に思っている訳ではなく、正式に友達になれた二人の事を脳裏に浮かべ……顔がほころぶ。
嬉しかった。友達ができた事が。
少し前に色々あって冒険者になる為に王都にやってきた。
それから出来た初めての友達。
そして……生まれて初めてできた友達。
(それにアリサちゃん……パーティーに寧ろ来て欲しいって。私が居たら楽しそうって。先輩も受け入れてくれたし)
そうやって昨日の事を思いだして笑みを浮かべ……そしてやがて、どこか皮肉めいた笑みを浮かべてポツリと呟いた。
「……生きてる意味の無い無価値な私でも、必要としてくれる人はいるじゃん……お母さんの嘘付き」
そしてそれから、気を取り直して魔術教本に目を通していく。
仲間に。友達に。自分を必要としてくれる人達の為になれるように。
ようやく見付けた居場所を守る為に。
その頃墓場で起きている事など何も知らないリーナは、紙袋を手に自分の住むアパートの一室へと戻って来た。
「傘持ってって良かった。危ない危ない」
手にした紙袋が濡れなかった事にホッとしたリーナは、一旦テーブルの上に買ってきた紙袋を置いてから、キッチンへと向かう。
そしてしばらくして、紅茶を入れてテーブルの前へと戻って来たリーナは紙袋を開封。
買ってきたのは魔術教本である。
一応一般的な書店で流通している物の中では上級者向けとされるものだ。
「……うわぁ、これ絶対難しい奴だ」
その教本の中をパラパラとめくっていくと、やはりというか当然ではあるが、初心者向けのものとは遥かに習得難易度が違っていた。内容そのものもさることながら、書かれている文章そのものが小難しいものになっている。
(……これ明日までに何個覚えられるかなぁ)
最もそれらは通常一日で習得できるものではないのだが、少なくともリーナはそれを複数個習得していくつもりだった。
少なくとも、そうしようと思えるだけの熱意はそこにあった。
新しい何かを覚える事は、きっと自分の価値を高めてくれるから。
そして……仲間になった。友達になった人達の役に立ちたいから。
(……友達、か)
改めて昨日、自分が勝手に思っている訳ではなく、正式に友達になれた二人の事を脳裏に浮かべ……顔がほころぶ。
嬉しかった。友達ができた事が。
少し前に色々あって冒険者になる為に王都にやってきた。
それから出来た初めての友達。
そして……生まれて初めてできた友達。
(それにアリサちゃん……パーティーに寧ろ来て欲しいって。私が居たら楽しそうって。先輩も受け入れてくれたし)
そうやって昨日の事を思いだして笑みを浮かべ……そしてやがて、どこか皮肉めいた笑みを浮かべてポツリと呟いた。
「……生きてる意味の無い無価値な私でも、必要としてくれる人はいるじゃん……お母さんの嘘付き」
そしてそれから、気を取り直して魔術教本に目を通していく。
仲間に。友達に。自分を必要としてくれる人達の為になれるように。
ようやく見付けた居場所を守る為に。
0
お気に入りに追加
610
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
妹の事が好きだと冗談を言った王太子殿下。妹は王太子殿下が欲しいと言っていたし、本当に冗談なの?
田太 優
恋愛
婚約者である王太子殿下から妹のことが好きだったと言われ、婚約破棄を告げられた。
受け入れた私に焦ったのか、王太子殿下は冗談だと言った。
妹は昔から王太子殿下の婚約者になりたいと望んでいた。
今でもまだその気持ちがあるようだし、王太子殿下の言葉を信じていいのだろうか。
…そもそも冗談でも言って良いことと悪いことがある。
だから私は婚約破棄を受け入れた。
それなのに必死になる王太子殿下。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる