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二章 ごく当たり前の日常を掴む為に

33 三人目

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「私がアリサちゃんと先輩のパーティーにっすか?」

 リーナは考えもしなかったという風な表情で言う。

「はい。それなら一人で魔獣に遭遇するような事も無いですよね」

「いやまあそうなんすけど……でもっすよ」

 そしてリーナが至極真っ当な事を指摘する。

「私駆け出しも駆け出しでほんと弱いっすよ。アリサちゃんは無茶苦茶凄いし先輩もまあ凄いじゃないっすか。そんな中に私が入ったらバランスがおかしいっていうか……パーティーの組み方としておかしいっていうか……完全に足手纏いっすよ」

 なんだか俺とアリサの評価に凄い差が付いている気がして胸にザクっと来るものがあったが、事実なので何もいわない。
 ……まあそれはともかく、確かにアリサの案はパーティーを組むときのセオリーとしては随分とおかしなものになっているのは間違いない。

「そんなのこれから強くなればいいじゃないですか。それに……仲良くなった友達とパーティーを組もうってのはそんなにおかしいですか?」

「えーっと……」

「ボクはそれでもいいなって思ってます」

 いや、きっとそれは良くない事だ。
 あまりに合理性に欠ける。トップを走る様な冒険者からすればそんなパーティーの組み方は舐めているとしか言いようが無いのだと思う。
 ……だけど、そんなのは別にいいんだ。

「俺もそれでいいと思う」

 というか今更なのだ、そんな事。
 確かに今は結果的にアリサの運気を俺が補い、足りない戦闘力をアリサが補うという合理的なパーティー構成になっているかもしれない。
 だけど俺がアリサの実力を知ったのは、パーティーを結成した後の話だ。
 つまりは元を正せば俺達のパーティーの結成理由は感情論から来ているんだ。
 そんな時点で……もう、今更だろ。

「お前がそうしたいってんなら来いよ、俺達のパーティーに。俺達はまあそういうノリでやってるパーティーだからさ」

「 ……え? 待って。これほんとにいい流れなんすか?」

 リーナが半信半疑でそう言うのを見て、アリサが笑って言う。

「むしろ来てくださいよ。リーナさんがいたら今よりもっと楽しそうですし」

「それにそもそも俺達二人共前衛だからな。ポジション的にはある程度真っ当な理由だろ」

 そう、だから。

「拒む理由は何もない」

「そんな訳です。どうですか? リーナさん」

 後はリーナの答え次第である。
 だけど……考える素振りを見せるリーナのどこか楽しそうな表情を見るに、答えは聞くまでもない様に思えた。
 そして一拍空けてからリーナは言う。

「正直、迷うっすよ。多分間違いなく迷惑かけるだろうなーってのは分かるっすから」

 でも、とリーナは笑みを浮かべて言う。

「それでも良かったら……お世話になってもいいっすか?」

「はい!」

「ああ」 

 そして当然、俺達はその言葉に頷いた。

「ありがとうっすアリサちゃん。それに先輩。これでぼっち脱出っすよ!」

「これからよろしくお願いします」

「改めてよろしくな、リーナ」

「はいっす!」

 こうして、俺達は二人から三人になった。
 その選択は何度考えたって、パーティーの組み方としては大間違いだ。

 だけど本当に嬉しそうな二人を見れば、この選択は間違いじゃ無かったんだって。
 心からそう思うよ。
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