236 / 274
三章 聖女さん、冒険者やります
30 聖女さん、再びマフィアの事務所
しおりを挟む
それからしばらくして私達はマフィアの事務所へと足を踏み入れた。
「二回目となると慣れたもんだね」
「そうっすね。もう全然怖くないっす」
「そもそもマフィア感全然ねえからな」
「ボスがあの部長さんですからね」
正直此処の人達に対する印象はもうそんな感じなので、少なくとも幽霊屋敷の中よりは足取りは軽い。
これで良いのかは分からないけど、まあいいでしょ。
そんな事より。
「ってそういえば此処に来たは良いけど、何処に向かえば良いんだろ」
「あーそういえばその辺話聞いてなかったっすね」
なんかもう顔パスで此処に入れちゃったもんだから、入り口に立っていた構成員の人とも軽い会釈しかしなかったし……情報が無い。
「まあ多分応接室みたいな所だと思うんすけどね。この前ボク達もそこに通されたし」
「でも一回誰か捕まえて聞いといた方が良いんじゃねえか?」
「見当違いな所に行って、見ちゃいけない物とかを見ちゃったら大変ですからね」
シルヴィのその発言に、少し間を空けてから四人共頷く。
うん、皆この場に全然ビビらなくはなったけど、そういうヤバい何かは有ってもおかしくないんだよね。
その辺の恐ろしさは、幽霊屋敷よりもよっぽど現実味があって怖い。
「何か有ってもお主らなら全員シバき倒せるじゃろ。何ビビっておるのじゃ?」
「いや、そういう問題じゃないんですよ」
私が苦笑いを浮かべながらレリアさんにそう言った所で、事務所の奥から声が聞こえた。
「あ、皆! お疲れ!」
手を振りながら歩み寄ってきたのはしーちゃんだ。
「あ、しーちゃん! 良かった無事だった!」
「ん? 今回ウチ危ない要素無くない?」
「いや、だって私の後任の聖女と会ってるんでしょ? あの人がヤバい人かもしれないからって心配してたんだよ!」
「あーそっか。そうだよね。実際そうかもしれないから一旦此処に連れてきてる。でもまあ今の所何も危ない事は起きていないよ。連れてくるまでも、連れて来た後もね」
「……そっか、良かった」
思わず胸を撫で下ろす。
本当にそれだけは良かったよ。
「で、ウチの方からも気になる事がいくつかあるんだけど……ステラが血塗れなのは聞くだけ野暮かな。まあ荒事に関わっていたらどれだけ強い人でもそこそこあるよねそういう事。私も良くあるしね、ハハハ」
笑いながら言うなそんな事ぉッ!
「それより……そこの新メンバーは? なんか少し透けてるんだけど」
「ああ、しーちゃんも見えるんだ」
しーちゃんに関してはあんまり驚かないな。
このトラブルメーカーなら普通に見えるでしょっていう、嫌な信頼感がある。
「見える……というと?」
「実はね──」
今日有った事を掻い摘んで説明する。
それをどこか楽しそうに聞いていたしーちゃんは、一通り聞き終えた後に言う。
「幽霊屋敷かぁ、折角だしウチも行きたかったなー」
「いやいや、大変だったんだって!」
「ほらこの通りな」
ステラは自身の額を指さして言う。
「せ、説得力が凄いねそのやり方……まあ、行きたかったって好奇心は否定しないけど、着いて行ってないって事が良かったってのは流石に分かるよ。今回のは比較的ヤバい系の案件だったと思うから」
何と比較しているのかが気になる。
絶対もっとヤバい事にも巻き込まれてるんだよなぁしーちゃん。
「ま、でも此処に来てるレリアさんは仲間って事で良いんだよね。そんな訳でよろしく、レリアさん」
そう言って手を差し出すしーちゃん。
「正直お主がどういう立ち位置の人間なのかは全然知らんが、こやつらの仲間という事で良いのじゃろう。とりあえずよろしく頼む」
そしてその手をレリアさんが握る。
「おぉ! なにこの……一方的に握られている感! ウチ全然触れられてないのに触れられてる!」
「ま、ワシには実体が無いからの。それよりお主……中々良い体をしとるの」
「え……へ? いや、あの……ごめん、ウチ普通に男の人好きだし……」
「は? 何を勘違いしておる。誰もそんな話はしておらんじゃろ」
……いや、結構際どい事言ってなかった今。
まあ一応言いたい事は分かるけど。
「あの、駄目ですよレリアさん。しーちゃんに変な事をしたら……マジで潰しますから」
良い体っていうのは丁度良い体って事だろう。
相性が良い的な。
「心配するな。それ以外にあの場を出る為にあの指輪を使ったんじゃからの。こんな形でお主らの敵に回るような事はせん」
……なら良いんだけど。
「あ、もしかしてウチの体に乗り移れるって感じ? 話に出てたシルヴィちゃんにやった時みたいに!」
「おい、このシエルとやら目がキラキラしておるぞ」
「……」
なんだろう、しーちゃんの場合乗り移られてもなんかこう……うまく事が進みそうな気がしてきたよ、うん。
「二回目となると慣れたもんだね」
「そうっすね。もう全然怖くないっす」
「そもそもマフィア感全然ねえからな」
「ボスがあの部長さんですからね」
正直此処の人達に対する印象はもうそんな感じなので、少なくとも幽霊屋敷の中よりは足取りは軽い。
これで良いのかは分からないけど、まあいいでしょ。
そんな事より。
「ってそういえば此処に来たは良いけど、何処に向かえば良いんだろ」
「あーそういえばその辺話聞いてなかったっすね」
なんかもう顔パスで此処に入れちゃったもんだから、入り口に立っていた構成員の人とも軽い会釈しかしなかったし……情報が無い。
「まあ多分応接室みたいな所だと思うんすけどね。この前ボク達もそこに通されたし」
「でも一回誰か捕まえて聞いといた方が良いんじゃねえか?」
「見当違いな所に行って、見ちゃいけない物とかを見ちゃったら大変ですからね」
シルヴィのその発言に、少し間を空けてから四人共頷く。
うん、皆この場に全然ビビらなくはなったけど、そういうヤバい何かは有ってもおかしくないんだよね。
その辺の恐ろしさは、幽霊屋敷よりもよっぽど現実味があって怖い。
「何か有ってもお主らなら全員シバき倒せるじゃろ。何ビビっておるのじゃ?」
「いや、そういう問題じゃないんですよ」
私が苦笑いを浮かべながらレリアさんにそう言った所で、事務所の奥から声が聞こえた。
「あ、皆! お疲れ!」
手を振りながら歩み寄ってきたのはしーちゃんだ。
「あ、しーちゃん! 良かった無事だった!」
「ん? 今回ウチ危ない要素無くない?」
「いや、だって私の後任の聖女と会ってるんでしょ? あの人がヤバい人かもしれないからって心配してたんだよ!」
「あーそっか。そうだよね。実際そうかもしれないから一旦此処に連れてきてる。でもまあ今の所何も危ない事は起きていないよ。連れてくるまでも、連れて来た後もね」
「……そっか、良かった」
思わず胸を撫で下ろす。
本当にそれだけは良かったよ。
「で、ウチの方からも気になる事がいくつかあるんだけど……ステラが血塗れなのは聞くだけ野暮かな。まあ荒事に関わっていたらどれだけ強い人でもそこそこあるよねそういう事。私も良くあるしね、ハハハ」
笑いながら言うなそんな事ぉッ!
「それより……そこの新メンバーは? なんか少し透けてるんだけど」
「ああ、しーちゃんも見えるんだ」
しーちゃんに関してはあんまり驚かないな。
このトラブルメーカーなら普通に見えるでしょっていう、嫌な信頼感がある。
「見える……というと?」
「実はね──」
今日有った事を掻い摘んで説明する。
それをどこか楽しそうに聞いていたしーちゃんは、一通り聞き終えた後に言う。
「幽霊屋敷かぁ、折角だしウチも行きたかったなー」
「いやいや、大変だったんだって!」
「ほらこの通りな」
ステラは自身の額を指さして言う。
「せ、説得力が凄いねそのやり方……まあ、行きたかったって好奇心は否定しないけど、着いて行ってないって事が良かったってのは流石に分かるよ。今回のは比較的ヤバい系の案件だったと思うから」
何と比較しているのかが気になる。
絶対もっとヤバい事にも巻き込まれてるんだよなぁしーちゃん。
「ま、でも此処に来てるレリアさんは仲間って事で良いんだよね。そんな訳でよろしく、レリアさん」
そう言って手を差し出すしーちゃん。
「正直お主がどういう立ち位置の人間なのかは全然知らんが、こやつらの仲間という事で良いのじゃろう。とりあえずよろしく頼む」
そしてその手をレリアさんが握る。
「おぉ! なにこの……一方的に握られている感! ウチ全然触れられてないのに触れられてる!」
「ま、ワシには実体が無いからの。それよりお主……中々良い体をしとるの」
「え……へ? いや、あの……ごめん、ウチ普通に男の人好きだし……」
「は? 何を勘違いしておる。誰もそんな話はしておらんじゃろ」
……いや、結構際どい事言ってなかった今。
まあ一応言いたい事は分かるけど。
「あの、駄目ですよレリアさん。しーちゃんに変な事をしたら……マジで潰しますから」
良い体っていうのは丁度良い体って事だろう。
相性が良い的な。
「心配するな。それ以外にあの場を出る為にあの指輪を使ったんじゃからの。こんな形でお主らの敵に回るような事はせん」
……なら良いんだけど。
「あ、もしかしてウチの体に乗り移れるって感じ? 話に出てたシルヴィちゃんにやった時みたいに!」
「おい、このシエルとやら目がキラキラしておるぞ」
「……」
なんだろう、しーちゃんの場合乗り移られてもなんかこう……うまく事が進みそうな気がしてきたよ、うん。
0
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる