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三章 聖女さん、冒険者やります

21 偉人の魔術師、評価

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「これはなんじゃ?」

「さっきステラが話していた、この前私達が戦っていた敵が持っていた道具です。これ使えば魔術の知識とかなくてもこの中に込められた魔術を使えるって感じの代物で……戦いの場に掛かっていた魔術と同じで、全く理解できない形式の術式が使われています」

「ほう、そういうのがあるならもっと早く出すべきじゃったの」

「すみません、普通に忘れてました」

 レリアさんに会えたって事でテンション上がってたしね。
 その辺はまあ、許してほしいかなって思うよ。

「まあ良い。とにかく見せてみい」

「あ、はい」

 そうして私はしーちゃんから預かった指輪をレリアさんに手渡そうとする。
 そんな私にレリアさんは言った。

「なんか浮かない顔じゃの」

「……まあ」

 元々暇な時に色々と教えてもらうつもりでいた。
 そしてもしシルヴィの体を貸す以外にレリアさんを連れて帰れる方法があるのなら、連れて帰ってあの地下へ行って魔術の解析をしてもらいたいとも思っていた。
 思っては……いたんだけど。
 これをレリアさんに見てもらう事に抵抗を覚える自分もいた。

「……その心意気は大事じゃぞ。今回のように事が事で早急に答えを知らねばならない場合は別じゃし、そうでなくとも既に答えを知る手段があるならそれに頼ってその先を目指すのも間違いではない。じゃが……研究者として、そういうプライドは捨てちゃならん」

 色々と見透かしたようにレリアさんは言う。
 そしてレリアさんが考えている事は、きっと的を得ている。

 私じゃこの指輪……つまり私達の敵が作り出した術式を解析できない。
 そしてレリアさんに答えを求めるという事は、自力で解析する事を放棄する事で。
 つまりは負けを認めるような事で。

 まあ事実私は研究者としてあの時の誰かに負けているのは間違いじゃないんだけど……いざこうして渡そうとするタイミングになって、思ったよりその辺にプライドみたいなのがあったんだなって分かった感じだ。
 負けを認めたくなかったんだなってわかった感じだ。

「捨てないように頑張ります」

「なら良い。歩みを止めるな。此処で答えが出るとするなら、その先に自力で行けるよう邁進せい」

「……はい」

 言いながらレリアさんに指輪を託す。
 ……うん、頑張らないと。
 此処で答えが出てきたとして、ただそれを聞いて満足するような人間でいちゃいけない。

そして指輪を受け取ったレリアさんは、一拍空けてから。
 たった一拍程度の時間で、口を開く。

「なるほど……どうやらこの時代にはとんでもなく優秀な研究者がおるらしい」

「何か分かったのか?」

 ステラの問いにレリアさんは言う。

「アンナ。お主がさっき言っていたオルフィル理論というのが、ワシの生前理解されなかった研究成果のどの辺りからの事を言っているのかは分からん。じゃが仮に理解されなかった全てがそうなのだとすれば……この指輪に使われているのはワシの理論じゃ」

「……え?」

「しかもワシの理論をベースに独自発展しておる。もしこの時代に至るまでワシの基礎理論すら理解されていないのだとすれば……これを作った誰かは、歴史上ワシと並ぶかそれ以上。とにかく最高峰の魔術師という事になるの……そんな相手を敵に回して、よく生きておったのお主ら」
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