上 下
209 / 274
三章 聖女さん、冒険者やります

4 聖女さん達、依頼を受ける

しおりを挟む
 色々あったけど気を取り直して私達は今日受ける依頼選びへ。
 クエストボードに張られた依頼書を眺め始める。
 うん、この前の時は駆け出しなのにとんでもない依頼を選んだんだよね。結果シズクが謹慎処分という……今思い返しても、結構申し訳ないよ。
 ちょっとでも報酬が良い感じなのを選ばないと。
 ……って、ちょっと待った。

「ねえシズク」

「なんすか? なんか良いのあったっすか?」

「いや、私達三人はこの前Aランクの冒険者になった訳だけど……シズクはその時に冒険者になった感じで……つまりFランクって事だよね」

「そうなるっすね……ああ、成程。言いたい事分かったっす」

 シズクは一拍空けてから言う。

「皆さんだけなら普通にAランク相当の依頼を受けれるけど、そこにFランクのボクが居た場合どうなるのかって話っすね」

「うん、そういう事」

 いや、まあこのメンバーなら此処にある様な依頼ならどれでもこなせるんだろうけどさ、システム的にそれはやっちゃいけない訳で。
 今の私達という条件で選べる依頼の基準という奴を頭に入れておく必要がある。
 そして流石は現役受付嬢。その辺りの事情をすぐに説明してくれる。

「一応ボクみたいなFランでも上のランクのパーティーに加わればある程度依頼の選びようが出てくるっす。上のランクの人のパーティーに入れるという判断が、そのままある程度の信用情報になるって事っす。まあ当然その場合でも初回はある程度の制限が掛かったりするんで……ちょっと待ってください。Aランクの冒険者三人の所に依頼達成回数0の冒険者が一人加入した場合の初回の上限は……」

 そこまで言って、少々言いにくそうにシズクは言う。

「Cランクっすね」

「Cランクか……このメンツでCランクか……」

「なんかこう、思っていた感じよりガクって落ちますね、難易度が」

「ご、ごめんっす。その辺はほんと申し訳ないなと……」

「いや、まあ構わねえよ。そもそもCランクでもそこそこ報酬出るしな」

「ちょっと拍子抜けしてるだけで、別に私達は強い敵を求める戦闘狂みたいな感じじゃないですらね。取り急ぎ生活費が危ないシズクさんがCランクの報酬額で大丈夫そうなら全然良いんじゃないですか?」

「よし、じゃあ選ぶのはCランクで報酬が良い感じの奴だね。そんな訳でシズクも探して探して」

「は、はいっす!」

 そんな訳で本日の仕事はCランクの依頼に決定。
 前回よりも大幅に楽な仕事だ。
 さっさと片付けて、報酬も信用情報も手に入れちゃおう。

 ……そして。

「とりあえずこれなんてどうですか?」

 シルヴィが指差した依頼書に皆で視線を向け、代表してステラがそれを読み上げる。

「えーっとなになに。廃棄した別荘に忘れ物をしたから取ってきて欲しい……なんだこれ」

「場所的に普通に魔物が出る所っすね」

「つまり以前は周囲に結界を張って使ってた場所なんだろうね。でも今はその結界が無くなっていて、普通に敷地内にも魔物が居るかもしれないから近づけないと」

「まあ道中も魔物が出るだろうからな。ちなみにシルヴィはなんでこの依頼選んだんだ?」

「ああ、私が見た感じで一番報酬が多かったんで。正直Cランク程度だったら、中身気にする必要ないかなって思ってよく見てなかったです」

「なるほど、雑な判断かもしれないけど一理あるね」

 正直、Cランクならどう転んでもこの前の依頼以上って事は無いだろうから。

「私はこの依頼でもいいかな。二人は?」

「まあ俺も良いと思うぜ」

「ボクも賛成っす」

「じゃあこれで決まり」

「四人での初仕事ですね!」

 そんな訳で私達四人の初仕事は、忘れ物を取りに行く事になった。

 ……なんか仕事っていうよりお使いみたいだよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

処理中です...