上 下
198 / 274
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

61 聖女さん達、事件の考察をする

しおりを挟む
「把握していたって……それ一体どういう……」

 ミカがやや動揺するようにそう言う。
 まあ二人共正体隠して秘密裏に動いていて、だからこそ私達とも争いが勃発した訳で。
 そりゃ把握なんてされていたら動揺の一つ位は当然すると思うよ。
 そしてルカは言う。

「まああくまでしているようだったってだけで確定した訳じゃありません。言葉の綾や単純に俺の解釈違いって可能性も否定できませんから」

 ただ、とルカは言う。

「それでも俺はアイツにこちらの行動を見透かされていると思った」

 ……多分ルカがこういう場でそこまで言うんだったら、本当にそう取れるような事を言っていたんだろうし、別の角度から考えるとその言葉の信憑性を上げる事ができるエピソードがある。

「確かにあの化物がルカの国でクーデターを起こした敵なら、国民のほぼ全員を洗脳するような事だってできるかもしれないね」

「ああ、それなら腑に落ちますね。さっきの説明聞いてて、そんな大規模に人を操ったりできるのかな? って思いましたから」

「俺やミカ様も最初はそう考えて、精々薄く暗示を掛けてうまく扇動されたんじゃないかと考えていた。だが確かにベルナールの言う通りだ。あの相手なら馬鹿げてはいるがシンプルに大規模な洗脳魔術を扱えるかもしれん」

 ほんと馬鹿げているけどね。

「つまり今回の敵がアンタらの国の敵って可能性が高くなる訳か……それで、同じ事が起きている俺達の国の敵の可能性も大いにあるって訳だな」

「そういう事になると俺は考えている」

「……って事はボク達が今回止めた計画も、それぞれの国で起きてる事と関係があるってことなんすかね」

「おそらくな」

「だったら」

 ルカの話を聞いて、ミカが言う。

「私達が逃げる時に、結界が良くない何かに変えられていったのって……もしかして今日の一件を起こすための下準備って事なのかな?」

「えーっと、つまりどういう事?」

 この場で一番魔術について詳しくないであろうしーちゃんの問いにミカは答える。

「魔術には自分の体内だとか周囲だけで完結する物以外に、ある特定のポイントにそれぞれ基礎となる術式を設置して発動させる大規模な物もあります。例えば各国を守る聖女の結界なんかがそうですね」

「へーそうなんだ」

 そう。
 私が国に張っていた結界も、国中の色々な所に基礎を作って、一つの大きな自立型の魔術を発動させて維持してる。
 それこそ国単位に効果をもたらす大きな術は、そういったやり方じゃないと無理。

「えーっとそれで下準備ってのは?」

「一国に張る結界規模の巨大な基礎を作って、その基礎を使って発動させる魔術の中心地があの地下だったかもしれないって事です」

「って事は……皆の国の結界が現在進行形でそんな風な物に変えられていってるって事!?」

「そういう事になってるんじゃないかなっていう……仮説です。あ。でも仮説だからあまり真に受けないでください」

 少々自信なさげにそう言うミカ。
 まああり得ない話じゃないよ。
 同じ規模の事をやれって言われたら無理だけどさ、あの化物ならそれもできると思う。

 だけど私達四人とルカは、ミカが語った仮説に対して乗っかる事ができない。
 特に私が一番ね。

「悪いけど、多分それは違うかもしれない。結構良い線行ってると思うし、実際ありえる話だとは思うよ。それができる位、私達が戦っていた相手は異次元みたいな力を持っていた訳だし」

 だけど。

「それだと私の国で何も起きていないのがおかしいと思うんだ」

「……え?」

「ああ、私人里離れた所に実家があったから、結界で隠蔽してまだそこに住んでるんだ」

「ボクんちに転移魔術の魔法陣を置いて、行き来してる感じっす」

「えぇ……だ、大丈夫なんですかそれ……」

「うん。もうかれこれ一週間近く経ってるけど、なんの問題も無いよ」

 ……そう、何の問題も無い。

「今日もお昼頃まで家に居たけど何も無かった。当然、私が張った結界に何か異常があった訳でもないし。私が家を出てから何かあったって可能性も全くないとは言わないけど、今回の一件の下準備に私を追放したんなら、もう何かが起きてないとおかしいと思う」

「……それなら私の仮説は外れって事ですかね」

「それこそ私が追放された理由が、本当に見て聴いた通りのアホな理由だったりしない限りはね」

「確かにそうだな。他国の王族を侮辱するような発言はしたくはないが、そこまでのアホがいるとは思えない」

「ま、滅茶苦茶アホだけどね。正直、ここまで皆が同じ条件で追放されてるって感じじゃなきゃ普通にアホがアホがやらかしたんだなって思うくらいには」

 でも、皆がこんな事になっている以上、今となっては流石にそれは考えられなくて。
 多分ハニートラップを絡めた洗脳魔術みたいなのを喰らってるんじゃないかなって思う。
 皆の国も同じような感じで。

 ……え、あの馬鹿本当に洗脳とかされてる感じだよね?
 それで私の後釜で来たエロいお姉さんが、連中の手先なんだよね?
 流石に……そうだよね、うん。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

追放された聖女の悠々自適な側室ライフ

白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」 平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。 そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。 そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。 「王太子殿下の仰せに従います」 (やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや) 表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。 今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。 マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃 聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。

「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】

小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。 これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。 失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。 無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。 そんなある日のこと。 ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。 『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。 そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?

仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。 そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。 「出来の悪い妹で恥ずかしい」 「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」 そう言ってましたよね? ある日、聖王国に神のお告げがあった。 この世界のどこかに聖女が誕生していたと。 「うちの娘のどちらかに違いない」 喜ぶ両親と姉妹。 しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。 因果応報なお話(笑) 今回は、一人称です。

聖女の姉が行方不明になりました

蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。

処理中です...