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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

47 聖女さん、四人揃ったら無敵+a 下

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 だけど一つ失念していた事があった。
 私達が優位な状況を保てている理由は数の力とシズクの強化魔術だ。
 そして男の攻撃は馬鹿正直に満遍なく全員にリソースを割く訳ではない。
 私へ向かってくる攻撃が少なかったように……ルカに攻撃の大半が向けられていたように。
 やろうと思えば、全てのリソースを必要な所だけに割く事もできる。
 その事実に気付かされた。

「うわッ!?」

 シズクの声が響いた。
 ……男の背後に周り込んでいた私からは、視界の先のシズクに何が起きているのかが見える。

 ありったけの影の棘をシズク一人に向けて。

「シズク!?」

 思わず声を上げるがシズクの表情は焦りはしていても、絶望感の様な物は浮かんでいなかった。

「だ、大丈夫っす!」

 次の瞬間、無我夢中という風に攻撃を回避しながら、強固な結界と水属性の魔術で回避できない分の攻撃を捌いていく。
 ……多分、察していた。
 一人だけ強化魔術を重ね掛けしていない、言ってしまえば比較的脆く、そして私達が優位に立ち回る為の要となっているが故に狙われる可能性が高い事を。

 だから一切攻撃には参加していなかった。
 時間、魔力。ありとあらゆる可能な限りのリソースを、こうした攻撃を回避し防ぎ切る為に費やしていた。
 そして影の棘とは別に、床から生えてくる物があった。

 影の巨人。
 ルカと一緒に二対六で戦っていた相手が使ってきた奥の手。
 それが影の棘と、そこから発せられる魔術攻撃を防いでいるシズクに追い打ちを掛けるように出現する。

 だけどそっちの心配は別にしなかった。
 確かに厄介な力なんだろうなと思う。
 この状況で追撃の為に出現させているのだから、その仕事ができるような強さをあの影の巨人は持っているのだと思う。
 だけど防いで回避する事だけが対処法の影の棘と違い、あのデカイのは的がある。
 壊すという避ける以外の対処法がある。

 そして……それができるであろ仲間が一人。

「シズクさん!」

 中段付近で待機していたシルヴィだ。
 次の瞬間、シルヴィの掌からエグい出力の電撃が槍のように放たれた。
 そしてそれに貫かれた影の巨人は、その一撃で消滅する。

 それこそ、さっき私が倒した奴よりも絶対丈夫な奴を一撃でだ。

 ……いや、マジで凄いよ。
 シズクの強化魔術は身体能力が上がるだけだろうから、魔術による攻撃は完全に自力だし。

 多分私達とシズクとの間で待機していた時も、もしかしたら此処に到達するまでの間も。
 時間を掛けてその強力な一撃を放つための術式を構築していたんだ。

 ……とにかく、全部のリソースをシズクへ向けた攻撃は失敗に終わった。
 次は打たせない。

「「おっらァッ!」」

 私とステラで同時に攻撃を加える。
 ステラは強力なローキックで。
 私は男の腕を抑えた膝蹴りで。

 片足片腕をへし折る!

 そして大きく隙が生まれた所に、ミカの腕が伸びる。

 狙うは顔面。
 そこに吸い込まれるように、綺麗なフォームの右ストレートが叩き込まれた。

 その瞬間だった。
 部屋を覆っていた黒い影が消滅する。
 ……つまり。

「……やった」

 目の前の化物の意識を奪った!
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