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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女、再会
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そしてマルコは男に問う。
「お前は操られてたって言ったな……っとその前に。とりあえず聞いてなかったな。お前、名前は?」
「ケニーだ。そういえばお前らにも名乗って無かったな」
そう名乗ったケニーに対しマルコは言う。
「じゃあケニー。一つ質問だ……お前が操られている時、どっかでニット帽被った若い男を見なかったか?」
「あーもしかしてそれニックの事? まさかいなくなったのってアイツ?」
シエルがそう言うとマルコは頷く。
「ああそうだ……で、消えた組員の中でアイツが一番口頭で特徴伝えやすいんだが……どうだ?」
「……そうだな」
記憶を掘り起こすようにそう言ったケニーはやがて思い出したように、そして大変言い辛そうに言う。
「そのニックという奴かは分からないが……操られていた時の俺が戦った一人だ」
「……!?」
マルコは一瞬驚いたような様子を見せるが、それでも一拍空けてから落ち着いた様子で言う。
「……お前はコイツらに止められるまで操られたままだった。一応確認しておくが殺してねえだろうな?」
「……少なくとも俺は殺していない。そして他の連中と同じなら、おそらく今は向うの駒にされていると思う」
「……まあ生きてるなら一安心だ。生きているならいくらでも助けようがある」
「ちなみに聞くけど……もし俺が殺していたら、アンタらは俺を殺していたか?」
「馬鹿か。お前に過失はどこにもねえだろ。お前は何がどうなっても情報を知っているだけの一般人だ」
「……そうか」
その一連の会話を聞いてシズクは思う。
(……すっげえまともっすね)
この事情説明が終わったころには、恐怖心のような物はほぼ無くなっていた。
視線をミカの方に向ければ、そちらも大分落ち着いたように思える。
此処まで普通に事情説明を済ませたケニーもそうだ。
元々マフィアという先入観だけで恐怖心を抱いていた訳で、その時点では人となりは分からなかった訳で。
だけど人となりが分かってくれば、一個人に対する恐怖心は薄れて来るし、この組織もそういう人たちが居る場所だと分かってくる。
もっとも此処までの会話でも人や組織のあくまで一面を見ただけに過ぎないのだけれど、それでも最初のような恐怖心が再燃する様子はない。
それが危機管理能力的な意味で、良いことなのか悪いことなのかは分からないけれど。
「まあとにかく」
話を纏めるようにマルコが言う。
「憲兵じゃなく俺達の所に話を持ってきたのは正解だったな。少しでも早く動いた方が良いし、俺達なら比較的早く動ける。こっから動ける奴集めて――」
と、そこまで言った時だった。
扉が勢いよく開かれ、金髪巨体サングラスの明らかに堅気じゃありませんという風貌の男が慌てた様子でこの応接室に入ってくる。
「悪いマコっちゃん取り込み中にすまねえ! だがそれどころじゃねえんだ! ニックが見つかって、更にその裏でとんでもねえ事……が?」
その男と目が合った。
そしてシズクも堅気っぽくない男もお互い黙り込み、その場が一気に静まり返る。
やがて数秒後、静寂を静かに打ち破ったのはシズクだった。
「ぶ……部長?」
見間違いでなければ。声音の効き間違いで無ければ。
その場に現れたのは冒険者ギルドの施設運営部部長でありシズクの上司。
「え……待て。なんでお前が此処に……は?」
クライド・エバンスである。
「お前は操られてたって言ったな……っとその前に。とりあえず聞いてなかったな。お前、名前は?」
「ケニーだ。そういえばお前らにも名乗って無かったな」
そう名乗ったケニーに対しマルコは言う。
「じゃあケニー。一つ質問だ……お前が操られている時、どっかでニット帽被った若い男を見なかったか?」
「あーもしかしてそれニックの事? まさかいなくなったのってアイツ?」
シエルがそう言うとマルコは頷く。
「ああそうだ……で、消えた組員の中でアイツが一番口頭で特徴伝えやすいんだが……どうだ?」
「……そうだな」
記憶を掘り起こすようにそう言ったケニーはやがて思い出したように、そして大変言い辛そうに言う。
「そのニックという奴かは分からないが……操られていた時の俺が戦った一人だ」
「……!?」
マルコは一瞬驚いたような様子を見せるが、それでも一拍空けてから落ち着いた様子で言う。
「……お前はコイツらに止められるまで操られたままだった。一応確認しておくが殺してねえだろうな?」
「……少なくとも俺は殺していない。そして他の連中と同じなら、おそらく今は向うの駒にされていると思う」
「……まあ生きてるなら一安心だ。生きているならいくらでも助けようがある」
「ちなみに聞くけど……もし俺が殺していたら、アンタらは俺を殺していたか?」
「馬鹿か。お前に過失はどこにもねえだろ。お前は何がどうなっても情報を知っているだけの一般人だ」
「……そうか」
その一連の会話を聞いてシズクは思う。
(……すっげえまともっすね)
この事情説明が終わったころには、恐怖心のような物はほぼ無くなっていた。
視線をミカの方に向ければ、そちらも大分落ち着いたように思える。
此処まで普通に事情説明を済ませたケニーもそうだ。
元々マフィアという先入観だけで恐怖心を抱いていた訳で、その時点では人となりは分からなかった訳で。
だけど人となりが分かってくれば、一個人に対する恐怖心は薄れて来るし、この組織もそういう人たちが居る場所だと分かってくる。
もっとも此処までの会話でも人や組織のあくまで一面を見ただけに過ぎないのだけれど、それでも最初のような恐怖心が再燃する様子はない。
それが危機管理能力的な意味で、良いことなのか悪いことなのかは分からないけれど。
「まあとにかく」
話を纏めるようにマルコが言う。
「憲兵じゃなく俺達の所に話を持ってきたのは正解だったな。少しでも早く動いた方が良いし、俺達なら比較的早く動ける。こっから動ける奴集めて――」
と、そこまで言った時だった。
扉が勢いよく開かれ、金髪巨体サングラスの明らかに堅気じゃありませんという風貌の男が慌てた様子でこの応接室に入ってくる。
「悪いマコっちゃん取り込み中にすまねえ! だがそれどころじゃねえんだ! ニックが見つかって、更にその裏でとんでもねえ事……が?」
その男と目が合った。
そしてシズクも堅気っぽくない男もお互い黙り込み、その場が一気に静まり返る。
やがて数秒後、静寂を静かに打ち破ったのはシズクだった。
「ぶ……部長?」
見間違いでなければ。声音の効き間違いで無ければ。
その場に現れたのは冒険者ギルドの施設運営部部長でありシズクの上司。
「え……待て。なんでお前が此処に……は?」
クライド・エバンスである。
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