139 / 274
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
36 聖女さん達VS影の男Ⅴ
しおりを挟む
「は? え? な、なんだよお前ら急に……」
困惑するように男が言うけど当然だよ。
平常心でいる方が難しい。
シエル……今シエルって言ったよね?
当然世界でシエルという名前の女の人がしーちゃんだけという訳ではない。
だから私の脳裏を過った光景と違う事が起きている可能性も。十分にある。
だけど。
しーちゃんは男が言う通り恐ろしく勘が鋭くて。
そして何より、これまで人生何週分かという位にトラブルに首を突っ込んだり巻き込まれたりしてきた実績がある。
そして…しーちゃんなら、例えば誘拐の現場でも目撃すれば、まず間違いなく首を突っ込む。
一人だった私を引っ張り上げて連れ出してくれたのは、そういう女の子だったから。
だからどうしたって、蹴り飛ばされたのがしーちゃんだという考えが頭から離れない。
目の前の男……いや、目の前の男を操っている頭のおかしい誘拐犯への怒りが、どうしたって抑えられない。
そしてそれは、ルカも同じ。
きっとコイツの所の王女様の名前はミカっていうのだろう。
しかも元聖女だから、精巧な結界だって作れる。
結界使いと言われてもなんの違和感もない。
……で、目の前の男を倒すのは、役割分担的にルカが担当だったよね。
そしてルカは怒りを極力抑えているような声音で私に言う。
「ベルナール。防御は任せていいか? 俺達の敵の事はうまくやる」
具体的に何をどうするのかは分からないけれど……向ける怒りの矛先は同じな筈だ。
いいよ……乗ってやる。
「分かった。任せるよ」
好きにすればいいよ。
「よし」
ルカはそう頷いた瞬間、一瞬で男との間合いを詰める。
そして右手を伸ばして……男の頭を鷲掴みにする。
アイアンクロー。
多分まともに食らったら身動き一つ取れなくなるんじゃないかなって思うよ。
だけど向こうの男は操られている。
痛覚なんて関係が無い。
「馬鹿がきかねえんだよ!」
普通に動いてルカの足元から棘を生やす。
腕を動かしルカに殴りかかる。
だけどそれは……僅かに遅れて接近した私の結界で全部防いだ。
そしてルカは動じることなくアイアンクローを続ける。
……大体やりたい事は分かった。
別にそれはダメージを与える為にやってる訳じゃない。
それをやっても私達の的には届かない。
だからアイアンクローみたいな形になったのは……怒りで普通に勢い余ってみたいな感じじゃないかなって思うよ。
本命は、きっと頭に触れている事。
そしてルカは静かに呟く。
「……見付けた」
静かに、その言葉に怒りを灯して。
困惑するように男が言うけど当然だよ。
平常心でいる方が難しい。
シエル……今シエルって言ったよね?
当然世界でシエルという名前の女の人がしーちゃんだけという訳ではない。
だから私の脳裏を過った光景と違う事が起きている可能性も。十分にある。
だけど。
しーちゃんは男が言う通り恐ろしく勘が鋭くて。
そして何より、これまで人生何週分かという位にトラブルに首を突っ込んだり巻き込まれたりしてきた実績がある。
そして…しーちゃんなら、例えば誘拐の現場でも目撃すれば、まず間違いなく首を突っ込む。
一人だった私を引っ張り上げて連れ出してくれたのは、そういう女の子だったから。
だからどうしたって、蹴り飛ばされたのがしーちゃんだという考えが頭から離れない。
目の前の男……いや、目の前の男を操っている頭のおかしい誘拐犯への怒りが、どうしたって抑えられない。
そしてそれは、ルカも同じ。
きっとコイツの所の王女様の名前はミカっていうのだろう。
しかも元聖女だから、精巧な結界だって作れる。
結界使いと言われてもなんの違和感もない。
……で、目の前の男を倒すのは、役割分担的にルカが担当だったよね。
そしてルカは怒りを極力抑えているような声音で私に言う。
「ベルナール。防御は任せていいか? 俺達の敵の事はうまくやる」
具体的に何をどうするのかは分からないけれど……向ける怒りの矛先は同じな筈だ。
いいよ……乗ってやる。
「分かった。任せるよ」
好きにすればいいよ。
「よし」
ルカはそう頷いた瞬間、一瞬で男との間合いを詰める。
そして右手を伸ばして……男の頭を鷲掴みにする。
アイアンクロー。
多分まともに食らったら身動き一つ取れなくなるんじゃないかなって思うよ。
だけど向こうの男は操られている。
痛覚なんて関係が無い。
「馬鹿がきかねえんだよ!」
普通に動いてルカの足元から棘を生やす。
腕を動かしルカに殴りかかる。
だけどそれは……僅かに遅れて接近した私の結界で全部防いだ。
そしてルカは動じることなくアイアンクローを続ける。
……大体やりたい事は分かった。
別にそれはダメージを与える為にやってる訳じゃない。
それをやっても私達の的には届かない。
だからアイアンクローみたいな形になったのは……怒りで普通に勢い余ってみたいな感じじゃないかなって思うよ。
本命は、きっと頭に触れている事。
そしてルカは静かに呟く。
「……見付けた」
静かに、その言葉に怒りを灯して。
0
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる