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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

29 聖女さん達、順応力が高い

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 そこから、お互いの戦いっぷりを賞賛しあったりという事は無かった。

「行くぞ」

「分かってるよ」

 攻撃が止んだ事を確認してからすぐに結界を消滅させ、私達は子供の反応がある方向に向けて走り出す。
 ……向うは多分こっちの位置情報を掴んでいる。
 つまり悠長にしていると、また新しい敵がやってきてその度に戦いになるだろうし、それを繰り返せば繰り返す程こちらの手の内は晒すし、相手に対策を取られるかもしれないという隙を作る事になる。

 だから、走った。
 そして気を失っている恐らく操られていた誰かの横を通り過ぎ、しばらく走って曲がり角を曲がった所で開かれた扉が視界に映る。
 その先に見えるのは……なんか大広間っぽい空間。
 そこで流石に立ち止まり、小声で言う。

「……で、此処はどうする?」

「どうせ敵がいるだろう。だったら倒していくしかあるまい」

 基本、私達レベルになれば敵の気配を感じ取ったりはできる。
 だけど露骨に敵が居てもおかしくないこの目の前の部屋からは、そういうのは感じられない。
 もしかしたら張り巡らされた魔術が、そういう感覚を鈍らせているのかもしれない。
 ……でも多分居る。
 まさかさっきので終わりって事は無いと思うしね。
 その辺は私もルカも共通認識みたいだった。

 ……さて、どうしたもんかな。
 対策はいくつか思いつくけど、何をするのが適切かな?

 そう考えていると、ルカの手にスティック状の結界が数本握られていた。
 ……あれだ。無茶苦茶光ったり煙幕とかになったりする奴。

「それどうするの?」

「煙幕を張ってから一気に叩く。コイツの煙は探知魔術や対象を指定した上でのホーミング効果を狂わせる事もできるからな。部屋に入った瞬間の迎撃もある程度の対策になる筈だ」

 なるほど。
 相手がこちらの位置掴めなくなってる間に一網打尽にする訳だ。
 うんうん……ってアホかな?

「いやちょっと待って私の視界も無くなるんだけど?」

「分かってる。だから――」

 そう言ってルカはプレート状の結界を作り出して、差し出してくる。

「これは?」

「俺の術式の煙幕の中で視界を保つ事のできる特殊仕様の結界だ。

「これ持って戦えって事?」

「いや、コイツの27番と143番のコードをそのまま強化魔術の伝達系の該当箇所にマニュアルで組み込み最適化しろ。どこかしらに間違いなく不具合が出るとは思うが、そこは微調整でなんとかしてくれ」

「……それ私じゃなきゃ組み込むだとか微調整云々の前に何言ってんのかさっぱり分かんないと思うんだけど。というかこんな急ぎのタイミングで言う?」

「お前なら分かるし20秒も掛からないだろう」

「舐めないでよ、五秒でできるしもうできた」

「流石だ。できる事ならもう敵には回したくないな」

 言いながらルカはスティック状の結界を部屋の中に放り投げる。
 そして次の瞬間、結界から勢いよく煙幕が発生する。
 だけど……視界良好だ。
 何も変わらず綺麗に見える。

「これで誰も居なかったらちょっと滑稽で笑えてくるよね」

「そういう笑いなら大歓迎だ」

 言いながら私達は大部屋の中に突入する。

 ……まあ残念だけど笑えない。
 煙幕も、それの自衛手段も役に立った。

「うへぇ……ちょっと多すぎない?」

 なんか五十人位居るんだけど……マジか。
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