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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
16 聖女さん、共同戦線
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皆は今頃何をやっているんだろう。
そんな事を考えながらコーヒーに口を付けたその時だった。
「あの、すみません!」
突然通路から女性に声を掛けられて、私達は声の主に視線を向ける。
声の主は二十代後半位の女性だ。
……酷く顔が青ざめている。
私は防音の結界を解除して言う。
「あ、あの、大丈――」
「五歳位の女の子、見ませんでしたか!?」
「「……え?」」
……子供?
「何かあったんですか?」
私と話している時とは口調を変えて男は女性にそう問いかける。
「その、さっきまで娘と居たんですけど、私がお手洗いに行ってる間にいなくなって!」
そう言われた瞬間、私達は思わず反射的に立ち上がり店内を見渡す。
……これで見つかるならこのお母さんもこんなに慌てていない訳で、当然子供の姿は見えない。
元々客が大勢入っているような店でない事もあり、気が付けば今店内にいる客はそのお母さんと私達位になっていた。
……入店した時にどの位お客さんが居たのかは分からないけど、その誰かが連れ出した?
いや、でもちょっと待って。
「えっと、レジの店員さんとかに話しとかって聞いた?」
「はい。それがその……誰も出入りしていないらしくて……」
……まさか店員さんがそんな嘘はつかないだろう。
なんなら今、店員さん数人が店内を探してくれているみたいだし。
「……と、とにかく見ていないんですね。すみませんお騒がせしました」
そう言ってそのお母さんは軽く私達に会釈して、その場を去ろうとする。
……そんな後ろ姿を、止める事にした。
「「ちょっと待ってください!」」
そう言って、全く同じ事を言った男と思わず顔を見合わせる。
「どうやら考えてる事は同じみたいだな」
「そうだね。どうする? とりあえず私が言っちゃえばいい?」
「別に構わん。競ってる訳では無いからな」
その言葉に頷き、代表して私が言う。
「娘さん探すの、協力させて貰って良い? 私達なら娘さんを探し出せるかもしれない」
「え、良いんですか?」
「困った時はお互い様って感じで。とりあえず座ってた席に案内して貰っていい?」
「あ、はい! こっちです!」
そう言って先導するお母さんに私達は着いていく。
そして私達から少し離れた席に辿り着いた。
「直前まで此処に座ってたんですけど……あの、どうやって探すんですか?」
「ちょっと魔術を使う」
「魔術? ……お二人は魔術が使えるんですか?」
「無茶苦茶使えるよ。私もコイツも」
一度相対したから分かるけど、それは間違いない。
そしてコイツも私と同じ事を言おうとしたのなら、何かしらの手立てはある筈。
つまり……私達位の魔術師が二人も居れば、いなくなった子供を一人見付ける位は余裕って訳だ。
「で、どうする? 何か役割分担でもする?」
「いや、お前も分担しなければ探せないようなレベルの低い魔術師ではないだろう。お互い各々の手段で娘さんを探す。それで出た答えを擦り合わせていくんだ。それが効率も良くて確実だと思うが」
「じゃあまずは各々で」
そう言って私は各々娘さんの座っていた椅子に手を当てる。
……やり方は同じか。
まあいいや。
そして魔術を発動させる。
此処に座っていた人間がどういうような動きをしたか。しているのか。
それを探っていく。
そして十数秒後、その足取りを掴んだ。
「「……下!?」」
二人して驚愕の声を上げる。
そして同じタイミングで同じような反応をしたという事は、得られた情報も同じという事だと思う。
「下? え、一体どうなったんですか?」
「意味が分からないとは思いますが、娘さんはこの席に座ったまま下に……この床下に当たる部分に移動しています」
「え、そんな事が……え……?」
「しかも今急速に移動している。お前はどんな感じだ」
「私も同じ感じ……まずいよ、これ以上離れられると追えなくなる」
それだけ離れた距離を移動している。
足元程度。僅かに低い位置で。
そして突然地下に移動するような動きも、既にこれだけの距離を離しているという事も、到底普通の子供に出来るとは思えないし。
……つまり。
「ちょっと落ち着いて聞いてもらっていい?」
「え、あ、はい……」
「間違いなく娘さん、誘拐されてるよこれ」
「え……そ、そんな……ッ!」
娘さんのお母さんは酷く動揺したような声音でそう言う。
「わ、私が目を離したばっかりに……」
「いや、具体的な手口は分かりませんが、多分目を離していなくても結果は変わらなかったかもしれません。少なくともあなたは悪くない」
この男の言う通りだ。
少なくともこの人は悪くない。
悪いのは、目的も手段も分からないけどこれを実行している犯人だ。
……そしてこの状況で。
いつ足取りが掴めなくなるか分からないような状況で、後は憲兵にでも相談してね、なんて突き放した事を言う訳にもいかない訳で。
だからとりあえず男に言う。
「「ちょっと助けに行くから協力――」」
そして再び顔を見合わせ頷いて、そして言う。
「「よし!」」
そう言って私達は立ち上がる。
「あなたは此処で待ってて」
「俺達が娘さんを救出してきます」
「え、い、良いんですか!? いや、でも危な――」
「私達(俺達)なら大丈夫!」
そう言って私達は速攻で会計を済ませて店を飛び出す。
「位置情報は掴めてるな?」
「まだなんとか!」
「よし! なら急ぐぞ! だが気を付けろよ! さっきも言ったかもしれんがどこかで一般人とぶつかりもでもしたら大惨事だ!」
「確かに……よし、なら目的地まで飛ぼう!」
「飛ぶってお前……ここでやるのか!?」
「その方が安全でしょ。というかアンタは飛べるんだっけ?」
「飛べはしないが跳んで着いていく!」
「なんか知らないけど分かった!」
そう言って私は風属性の魔術を発動させ、上空へ向けて飛ぶ。
これで今娘さんが居る座標まで一気に飛んでいく。
そしてふと視線を下へと向けた。
そこには器用に結界を張り足場として飛びつつ、それと同時に短距離の空間転移魔術を使って距離を稼ぐ男の姿が有った。
「どうだ、跳んでいるだろう」
なるほど、そういう事。
それは分かったから……分かったからさあ!
「とりあえず同じ高さまで上がってくるまで上見るなぁ!」
「ならお前もそんな恰好で飛ぶとか言うな馬鹿か!?」
仕方ないじゃん状況が状況なんだから!
オフにスカート履いて何が悪かったのかなぁ!?
……全部誘拐犯が悪いわ。
そして目的地へと距離を詰めながらも同じ標高まで上がってきた男は言う。
「……見てないからな」
「極力今の一件忘れたいからその話はもう無しで」
「……了解」
……とにかく。
このまま距離は確かに詰めている。
このペースで行けば追いつける。
そして追いついたとして。
戦いになったとして。
私ら二人ならまず負けないでしょ。
そんな訳でまだ敵なのかどうかは分からないけど、一時休戦だ。
共同戦線で行こう!
そんな事を考えながらコーヒーに口を付けたその時だった。
「あの、すみません!」
突然通路から女性に声を掛けられて、私達は声の主に視線を向ける。
声の主は二十代後半位の女性だ。
……酷く顔が青ざめている。
私は防音の結界を解除して言う。
「あ、あの、大丈――」
「五歳位の女の子、見ませんでしたか!?」
「「……え?」」
……子供?
「何かあったんですか?」
私と話している時とは口調を変えて男は女性にそう問いかける。
「その、さっきまで娘と居たんですけど、私がお手洗いに行ってる間にいなくなって!」
そう言われた瞬間、私達は思わず反射的に立ち上がり店内を見渡す。
……これで見つかるならこのお母さんもこんなに慌てていない訳で、当然子供の姿は見えない。
元々客が大勢入っているような店でない事もあり、気が付けば今店内にいる客はそのお母さんと私達位になっていた。
……入店した時にどの位お客さんが居たのかは分からないけど、その誰かが連れ出した?
いや、でもちょっと待って。
「えっと、レジの店員さんとかに話しとかって聞いた?」
「はい。それがその……誰も出入りしていないらしくて……」
……まさか店員さんがそんな嘘はつかないだろう。
なんなら今、店員さん数人が店内を探してくれているみたいだし。
「……と、とにかく見ていないんですね。すみませんお騒がせしました」
そう言ってそのお母さんは軽く私達に会釈して、その場を去ろうとする。
……そんな後ろ姿を、止める事にした。
「「ちょっと待ってください!」」
そう言って、全く同じ事を言った男と思わず顔を見合わせる。
「どうやら考えてる事は同じみたいだな」
「そうだね。どうする? とりあえず私が言っちゃえばいい?」
「別に構わん。競ってる訳では無いからな」
その言葉に頷き、代表して私が言う。
「娘さん探すの、協力させて貰って良い? 私達なら娘さんを探し出せるかもしれない」
「え、良いんですか?」
「困った時はお互い様って感じで。とりあえず座ってた席に案内して貰っていい?」
「あ、はい! こっちです!」
そう言って先導するお母さんに私達は着いていく。
そして私達から少し離れた席に辿り着いた。
「直前まで此処に座ってたんですけど……あの、どうやって探すんですか?」
「ちょっと魔術を使う」
「魔術? ……お二人は魔術が使えるんですか?」
「無茶苦茶使えるよ。私もコイツも」
一度相対したから分かるけど、それは間違いない。
そしてコイツも私と同じ事を言おうとしたのなら、何かしらの手立てはある筈。
つまり……私達位の魔術師が二人も居れば、いなくなった子供を一人見付ける位は余裕って訳だ。
「で、どうする? 何か役割分担でもする?」
「いや、お前も分担しなければ探せないようなレベルの低い魔術師ではないだろう。お互い各々の手段で娘さんを探す。それで出た答えを擦り合わせていくんだ。それが効率も良くて確実だと思うが」
「じゃあまずは各々で」
そう言って私は各々娘さんの座っていた椅子に手を当てる。
……やり方は同じか。
まあいいや。
そして魔術を発動させる。
此処に座っていた人間がどういうような動きをしたか。しているのか。
それを探っていく。
そして十数秒後、その足取りを掴んだ。
「「……下!?」」
二人して驚愕の声を上げる。
そして同じタイミングで同じような反応をしたという事は、得られた情報も同じという事だと思う。
「下? え、一体どうなったんですか?」
「意味が分からないとは思いますが、娘さんはこの席に座ったまま下に……この床下に当たる部分に移動しています」
「え、そんな事が……え……?」
「しかも今急速に移動している。お前はどんな感じだ」
「私も同じ感じ……まずいよ、これ以上離れられると追えなくなる」
それだけ離れた距離を移動している。
足元程度。僅かに低い位置で。
そして突然地下に移動するような動きも、既にこれだけの距離を離しているという事も、到底普通の子供に出来るとは思えないし。
……つまり。
「ちょっと落ち着いて聞いてもらっていい?」
「え、あ、はい……」
「間違いなく娘さん、誘拐されてるよこれ」
「え……そ、そんな……ッ!」
娘さんのお母さんは酷く動揺したような声音でそう言う。
「わ、私が目を離したばっかりに……」
「いや、具体的な手口は分かりませんが、多分目を離していなくても結果は変わらなかったかもしれません。少なくともあなたは悪くない」
この男の言う通りだ。
少なくともこの人は悪くない。
悪いのは、目的も手段も分からないけどこれを実行している犯人だ。
……そしてこの状況で。
いつ足取りが掴めなくなるか分からないような状況で、後は憲兵にでも相談してね、なんて突き放した事を言う訳にもいかない訳で。
だからとりあえず男に言う。
「「ちょっと助けに行くから協力――」」
そして再び顔を見合わせ頷いて、そして言う。
「「よし!」」
そう言って私達は立ち上がる。
「あなたは此処で待ってて」
「俺達が娘さんを救出してきます」
「え、い、良いんですか!? いや、でも危な――」
「私達(俺達)なら大丈夫!」
そう言って私達は速攻で会計を済ませて店を飛び出す。
「位置情報は掴めてるな?」
「まだなんとか!」
「よし! なら急ぐぞ! だが気を付けろよ! さっきも言ったかもしれんがどこかで一般人とぶつかりもでもしたら大惨事だ!」
「確かに……よし、なら目的地まで飛ぼう!」
「飛ぶってお前……ここでやるのか!?」
「その方が安全でしょ。というかアンタは飛べるんだっけ?」
「飛べはしないが跳んで着いていく!」
「なんか知らないけど分かった!」
そう言って私は風属性の魔術を発動させ、上空へ向けて飛ぶ。
これで今娘さんが居る座標まで一気に飛んでいく。
そしてふと視線を下へと向けた。
そこには器用に結界を張り足場として飛びつつ、それと同時に短距離の空間転移魔術を使って距離を稼ぐ男の姿が有った。
「どうだ、跳んでいるだろう」
なるほど、そういう事。
それは分かったから……分かったからさあ!
「とりあえず同じ高さまで上がってくるまで上見るなぁ!」
「ならお前もそんな恰好で飛ぶとか言うな馬鹿か!?」
仕方ないじゃん状況が状況なんだから!
オフにスカート履いて何が悪かったのかなぁ!?
……全部誘拐犯が悪いわ。
そして目的地へと距離を詰めながらも同じ標高まで上がってきた男は言う。
「……見てないからな」
「極力今の一件忘れたいからその話はもう無しで」
「……了解」
……とにかく。
このまま距離は確かに詰めている。
このペースで行けば追いつける。
そして追いついたとして。
戦いになったとして。
私ら二人ならまず負けないでしょ。
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