118 / 274
二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。
ex 受付聖女達、スケールの大きな事件に直面する
しおりを挟む
「世界が……滅ぶ?」
思わず聞き返すと男は言う。
「そういう話を聞いた」
「え、もっと具体的な話教えてくれる!?」
「そうしてえ。そうしてえが……残念ながら聞いただけだ。専門用語らしい言葉だらけで俺には理解できなかった」
と、男がそう言った時だった。
「二人共大丈夫!?」
ミカが走って戻ってきた。
「ああ、うん。大丈夫」
「いやビジュアル的に全然大丈夫に見えないんですけど」
「とりあえずシエルさんはボクが応急処置中っす」
「そ、そっか……それで」
ミカがゴミを見るような視線を男に向けて言う。
「これどういう状況?」
「……本当に最低限だが伝えることは伝えられた。口封じみたいな魔術が掛けられていた様子も無い……一旦、そうだな。これは言っとかねえと」
そう言って男は言う。
「色々と悪かった。特に一発蹴り入れちまったアンタと……死んでてもおかしくない大怪我負わせたシエルさんには本当に申し訳ないと思ってる」
そう言って男は謝罪するが……。
「え、なんでウチの事しってんの? ……まさかストーカー?」
「人攫いで女子供殴るのが趣味でストーカーとか最悪……!」
「いや、最後の以外はなんか違うっぽいっすよ?」
「最後のもちげえよ……アンタ結構有名人だぞ」
「え? そうなの?」
(……いやだからどんな私生活送ってるんすか!?)
まあとにかく。
「と、とりあえずミカさんだけ全然状況把握してないと思うんで、一旦情報共有しとくっすよ!」
と、一旦今の男の話をミカにも伝える。
「なるほど……確かにあの時感じたヤバい雰囲気はしないし……というか世界が滅ぶって……!」
「もう一度言うが事の詳細までは説明できねえ」
だけど、と男は言う。
「アイツらのアジトの場所は把握している」
「……」
そう言われて、先の男の言葉を思い出す。
『さっきの俺を倒せたアンタ達位にしか託せる相手がいないんだ……頼む……ッ』
この男は自分達に託すと言った。
……つまりだ。
「……つまりボクらにそのアジト叩き潰してくれって言いたいんすか?」
「……そういう事になるな」
男は申し訳なさそうに言う。
「誰かがやらなきゃいけねえ。だけど俺には協力することはできても、一人でどうこうする力がねえんだ……だから……ッ!」
本当に申し訳なさそうに男は言う。
(……さあ、どうするっすかね)
当然どうにかしないといけない。
この話を憲兵にした所で多分それをどうこうできるだけの戦力を動かすとなれば、それ相応の時間が掛かるだろう。
憲兵だけでなく、公務員には良くも悪く感情だけで動けないような大きな縛りがあるから。
ではそういう時にうごけるのはどういう人間か。
(すぐ動けるのはボクら位っすか……)
自分達冒険者やシエルのような一般人のような、大きなしがらみの無いフリーランスだ。
……とはいえ。
(でもボクら三人でどうにかできるスケールじゃ……)
と、そこで浮かんでくる。
この状況で最も頼れそうな三人の顔が。
(でも巻き込んでいいんすか……かなりヤバそうな匂いがするんすけど……)
でも、何もしなければ全員が被害を被りそうでもあって。
……どうする?
と、そこでシエルが言った。
「……分かった」
そう言って頷く。
「そのアジトはウチが潰す」
踏み込んだ。
そしてミカも言う。
「私も賛成」
そう言って頷く。
「今の私がどこまで戦力になるかは分かんないけど、やれるだけの事はやりたい。いや、やらないといけないと思う」
……そして、巻き込む巻き込まないはともかくとして。
「ボクも行くっすよ」
自分が参加しないという考えはない。
これは自分の倫理観的に、行かなければならない事だ。
「……これでひとまず四人だな」
「四人っすか?」
「俺も行く。さっきまでのは俺の力じゃねえが、一応は戦える」
「いや、四人じゃない」
シエルが男の言葉を否定して言う。
「正直四人でどうこうできる程、小さい相手じゃないんでしょ?」
「……奇跡が起きればって所だ」
「やっぱり」
そう言ってシエルは言う。
「極力人を巻き込んだりはしたくないけど、だからといって目に見えて無謀な事を無策でやる程自暴自棄になるつもりは無い。失敗したら世界が滅ぶっていうなら尚更」
だから、とシエルは言う。
「頼れる所に全部頼って全力で潰す。総力戦で行こう」
そして。場所は某喫茶店へと移り変わる。
時刻は少し遡り……丁度シエルが影の男を止めた頃。
アンナとルカも、別の事件に巻き込まれていた。
思わず聞き返すと男は言う。
「そういう話を聞いた」
「え、もっと具体的な話教えてくれる!?」
「そうしてえ。そうしてえが……残念ながら聞いただけだ。専門用語らしい言葉だらけで俺には理解できなかった」
と、男がそう言った時だった。
「二人共大丈夫!?」
ミカが走って戻ってきた。
「ああ、うん。大丈夫」
「いやビジュアル的に全然大丈夫に見えないんですけど」
「とりあえずシエルさんはボクが応急処置中っす」
「そ、そっか……それで」
ミカがゴミを見るような視線を男に向けて言う。
「これどういう状況?」
「……本当に最低限だが伝えることは伝えられた。口封じみたいな魔術が掛けられていた様子も無い……一旦、そうだな。これは言っとかねえと」
そう言って男は言う。
「色々と悪かった。特に一発蹴り入れちまったアンタと……死んでてもおかしくない大怪我負わせたシエルさんには本当に申し訳ないと思ってる」
そう言って男は謝罪するが……。
「え、なんでウチの事しってんの? ……まさかストーカー?」
「人攫いで女子供殴るのが趣味でストーカーとか最悪……!」
「いや、最後の以外はなんか違うっぽいっすよ?」
「最後のもちげえよ……アンタ結構有名人だぞ」
「え? そうなの?」
(……いやだからどんな私生活送ってるんすか!?)
まあとにかく。
「と、とりあえずミカさんだけ全然状況把握してないと思うんで、一旦情報共有しとくっすよ!」
と、一旦今の男の話をミカにも伝える。
「なるほど……確かにあの時感じたヤバい雰囲気はしないし……というか世界が滅ぶって……!」
「もう一度言うが事の詳細までは説明できねえ」
だけど、と男は言う。
「アイツらのアジトの場所は把握している」
「……」
そう言われて、先の男の言葉を思い出す。
『さっきの俺を倒せたアンタ達位にしか託せる相手がいないんだ……頼む……ッ』
この男は自分達に託すと言った。
……つまりだ。
「……つまりボクらにそのアジト叩き潰してくれって言いたいんすか?」
「……そういう事になるな」
男は申し訳なさそうに言う。
「誰かがやらなきゃいけねえ。だけど俺には協力することはできても、一人でどうこうする力がねえんだ……だから……ッ!」
本当に申し訳なさそうに男は言う。
(……さあ、どうするっすかね)
当然どうにかしないといけない。
この話を憲兵にした所で多分それをどうこうできるだけの戦力を動かすとなれば、それ相応の時間が掛かるだろう。
憲兵だけでなく、公務員には良くも悪く感情だけで動けないような大きな縛りがあるから。
ではそういう時にうごけるのはどういう人間か。
(すぐ動けるのはボクら位っすか……)
自分達冒険者やシエルのような一般人のような、大きなしがらみの無いフリーランスだ。
……とはいえ。
(でもボクら三人でどうにかできるスケールじゃ……)
と、そこで浮かんでくる。
この状況で最も頼れそうな三人の顔が。
(でも巻き込んでいいんすか……かなりヤバそうな匂いがするんすけど……)
でも、何もしなければ全員が被害を被りそうでもあって。
……どうする?
と、そこでシエルが言った。
「……分かった」
そう言って頷く。
「そのアジトはウチが潰す」
踏み込んだ。
そしてミカも言う。
「私も賛成」
そう言って頷く。
「今の私がどこまで戦力になるかは分かんないけど、やれるだけの事はやりたい。いや、やらないといけないと思う」
……そして、巻き込む巻き込まないはともかくとして。
「ボクも行くっすよ」
自分が参加しないという考えはない。
これは自分の倫理観的に、行かなければならない事だ。
「……これでひとまず四人だな」
「四人っすか?」
「俺も行く。さっきまでのは俺の力じゃねえが、一応は戦える」
「いや、四人じゃない」
シエルが男の言葉を否定して言う。
「正直四人でどうこうできる程、小さい相手じゃないんでしょ?」
「……奇跡が起きればって所だ」
「やっぱり」
そう言ってシエルは言う。
「極力人を巻き込んだりはしたくないけど、だからといって目に見えて無謀な事を無策でやる程自暴自棄になるつもりは無い。失敗したら世界が滅ぶっていうなら尚更」
だから、とシエルは言う。
「頼れる所に全部頼って全力で潰す。総力戦で行こう」
そして。場所は某喫茶店へと移り変わる。
時刻は少し遡り……丁度シエルが影の男を止めた頃。
アンナとルカも、別の事件に巻き込まれていた。
0
お気に入りに追加
713
あなたにおすすめの小説
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
聖女の姉が行方不明になりました
蓮沼ナノ
ファンタジー
8年前、姉が聖女の力に目覚め無理矢理王宮に連れて行かれた。取り残された家族は泣きながらも姉の幸せを願っていたが、8年後、王宮から姉が行方不明になったと聞かされる。妹のバリーは姉を探しに王都へと向かうが、王宮では元平民の姉は虐げられていたようで…聖女になった姉と田舎に残された家族の話し。
【完結】聖女が性格良いと誰が決めたの?
仲村 嘉高
ファンタジー
子供の頃から、出来の良い姉と可愛い妹ばかりを優遇していた両親。
そしてそれを当たり前だと、主人公を蔑んでいた姉と妹。
「出来の悪い妹で恥ずかしい」
「姉だと知られたくないから、外では声を掛けないで」
そう言ってましたよね?
ある日、聖王国に神のお告げがあった。
この世界のどこかに聖女が誕生していたと。
「うちの娘のどちらかに違いない」
喜ぶ両親と姉妹。
しかし教会へ行くと、両親や姉妹の予想と違い、聖女だと選ばれたのは「出来損ない」の次女で……。
因果応報なお話(笑)
今回は、一人称です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる