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二章 聖女さん、新しい日常を謳歌します。

11 黒装束の男、提案する

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「……そういえば聖女の加護云々などと余計な事を言って墓穴を掘っていたな。あの状況的に隠すのは無理か」

 苦笑いを浮かべて男は言う。

「確かにその通りだ。身元が割れるから何処の国かとは言えないが……あの人は聖女だ」

「そっか……やっぱりあの子も聖女なんだ」

 予想通り、あの子は聖女だった。
 ……そしてあの子が聖女だとすれば、何処かの国の中で結界の維持をしているんじゃなくて、あんな場所で何かをしていたのなら、きっと現役じゃない。
 そして現役ではないとすれば……あの子も私達と同じパターンな可能性もある。

 そしてその事を深く掘り下げようとした所で、男はこれまでの冷静で落ち着いた表情を崩して言う。

「……あの子も?」

「……」

 しまった思わず他にも聖女を知っているというか、私が聖女ですって取れるような事言っちゃったよ。
 まあ隠す事でもないし……それに、今気付いた。

「……実は私達も聖女なんだ」

 今この状況では、私達が聖女である事をオープンにした方が良いという事に。
 だってそうだ。

 今までの私と目の前の男との関係性は何かをやっていた実行犯と偶然見かけた目撃者だとか、命懸けで戦った相手だとか、関係性としてはとても遠い物になる訳だけど。
 それは今私達で共有されている情報での話。

 もし私達四人が追放された理由があんなアホみたいな理由じゃなくて、大きな問題が裏で起きていたとして。それと同じ事が目の前の男と一緒に居た女の子にも起きていたとして。
 ……私達が同じ問題を抱えている元聖女という情報を出せば、私達は偶然トラブルに巻き込まれた被害者から同じ問題を抱える関係者へと変わる。
 そうすれば私が知りたい情報だって、流れてきてもおかしくない。
 そして……目の前の男が本当は善人だと仮定して、同じ問題を抱えているのだとすれば、共有すべき情報は共有するべきだと思う。

 だから……私達の情報を、此処で前に押し出す事にする。

「……」

 そして男は私の突然のカミングアウトに黙り込むも、やがて考えが纏まったかのように呟く。

「……なるほど、そう来たか。いや、来てしまったというべきか」

 そんな明確に良くない事が起きたと思わせるような不穏な言葉を。
 そして一拍空けてから男は言う。

「すまないが一つ、図々しい提案がある」

「どうぞ? 言ってみてよ」

「……当然此処から先もお前の質問には答えられる範囲で応える。だが、いくつか俺からも質問させてはくれないか? 僅かな可能性として考えていたお前らが聖女なのではないかという話が本当なのだと確定してしまった以上、どうやら俺にもお前達から得なくてはならない情報があるらしい」

 そして、と男は言う。

「それを聞いた上で俺からも伝えなければならない事が見えてくるかもしれない」

「つまりお互いが持ってる情報の擦り合わせをしようって事だね」

「……そういう事だ。お互い全ての事を話せるわけでは無いだろうが……少なくともこちらは、こうなった以上多少は開示できる情報の幅が広がった……で、どうだ? こちらからも少し質問してもいいか?」

「どうぞ。私はもう一回聞いたしね。次はそっちの番」

「では第一の質問だ」

 男は私に問いかけてくる。

「お前らがなんらかの理由で国を追われているか否か。そしてそうなるに至った経緯を、話せる範囲で話して欲しい」

 まずはそんなこれまで色々な人に何度も話してきた、こちらの身の上事情について。
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