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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

55 聖女さん達、一旦解散?

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 さて、冒険者ギルドを後にした私達が真っ先に向かったのはステラが住み込みで働いているあのお店だ。
 当然、ギルドへの報告も終えてしまえば優先順位はそこになる。
 私やシルヴィの場合待ってる人はいないんだけど、ステラには居るからね。

「しかし絶妙に良いタイミングで帰ってこれたな。ランチタイム終わってから夜の営業までは店閉めてんだよ」

「確かに。それなりに話長引いたのが良い感じの時間調整になったって感じかな」

「ああ。流石に忙しい時に仕事の邪魔する訳にはいかねえからな……っと」

 お店が見えてきた所でステラが立ち止まる。

「それで俺は一旦戻るけど、三人はこれからどうするつもりだ? もし四人で何かしようって事なら俺ちょっと時間掛かるかもしれねえんだけど」

 うーん、そうだね。

「んーじゃあ今日の所は一旦解散って事にしとく? 全員暇なら色々考えるけど、別に明日以降も頻繁に集まると思うし」

「確かにその方が良いかもしれませんね。今日はステラさんも帰ったらそのままゆっくりしたら良いんじゃないですか?」

「まあステラさんに限らず、皆色々と疲れてると思うんで、今日はゆっくり休んだ方がいいっすよ」

 と、意見が一致したのを確認してからステラは言う。

「おう、じゃあそうさせてもらうわ……で、それだったら明日以降の話ざっくり決めといた方が良いか」

「そうですね。ちなみにステラさん、お店のシフト的に次の休みいつですか?」

「ん? 明日。定休日なんだよ」

「そうなんだ。じゃあさ、皆暇なら明日、終わってればだけどランクの査定と……シズクの処遇を確認して、それからちょっと遊びに行かない? 多分皆この国来て日が浅いだろうし観光も兼ねて」

「あ、いいですねそれ」

「俺も一回ゆっくり観て回ろうって思ってたんだよな……っと、そういえばシズクはいつからこの国に居たんだ? あの馴染みようをみる感じだと俺らより結構早いんじゃねえの?」

「ああ、ボクは一か月半程前っすかね。なので簡単になら案内できると思うっすよ」

「お、頼もしいね」

「そうっすか!」

 そう言ってシズクは少しドヤ顔を浮かべる。
 別にドヤる程の事じゃないと思うよ。色々あったけど元気そうで何よりだと思うけど。

「じゃあ明日何時くらいに集まる? 今朝くらいの時間にしとく?」

「俺はそれでいいけど二人は?」

「あ、私もそれでいいですよ」

「ボク三人が何時に集まってたのか知らないんすけど……まあ受付来る少し前って感じっすよね」

「ああ、うん。そんな感じ」

「了解っす」

 ……とまあ、そんな風に雑な打ち合わせをした所で。

 今日は解散って事になった。



 ……筈なんだけど。



「あ、そうだ今日の宿探さないと」

 ステラと別れた直後に私とシルヴィは全然解散できないのを思い出す。

「そうですね。まあ今日は時間早いんで結構早く見つかると思いますけど」

 私達は昨日のように宿を探さないといけないんだよね。
 まあ別に解散して各々探しても良いんだけど、別にそれは二人でも良い訳で。
 というか仮にシルヴィが一人で宿を借りるにしても、せめてシルヴィが良い感じに眠れそうな枕だけは確保しないと……宿泊先の宿が大変な事になるかもしれない。
 色々とヤバい一面を知ってしまったからには、責任を持って安眠に導かないと。

「あ、そういえば二人はまだ部屋借りてないんすね」

 私達のそんなやり取りを聞いてシズクがそう言う。

「そういえばシズクは今どうしてるの?」

「ああ、ボクは冒険者ギルドに就職決まった辺りで先輩方からアドバイス貰いながら不動産屋で良い感じの物件見付けたっすよ。1Kのアパート。今そこ借りてるっす」

「へぇ……」

「正直宿転々としてたら落ち着かないんで、早めにどこかと契約した方がいいっすよ」

「ああ、私はそのまま実家に住んでるからそれは必要ないんだ」

「成程実家住まいなら……って実家!? それはつまりアンナさん出身この国なんすか? いやでも宿探さないとって……」

「ああ、アンナさんまだ追放された国にある自宅に住んでて、借りた宿から転移魔術で行き来してるんですよ」

「えぇ!? す、涼しい顔してとんでもねえ事してるっすね……怒られるっすよ?」

「大丈夫大丈夫。何かあっても返り討ちにするし」

「冗談のように思えて有言実行できそうなのがヤバイっすよね……」

 シズクはそう言って苦笑いを浮かべる。
 私が言うのもなんだけど、立場逆だったら私もそんな表情浮かべるだろうなーって思う。
 まあそれでも家を出る気無いんだけど。

 ……今のところは。
 実を言うと昨日シルヴィを自宅に招いた時と今では、自宅をそのまま使っている事に対する心境の変化が生まれてきていた。

 あの国に戻って色々と調べたりするのは流石にリスクが大きいとは思うし、迂闊にやれないしやらないけど、それでも見つからないように厳重に細工を施した自宅周辺なら出入りしてもノーリスクだと私は思う。

 思うけど……とはいえ裏で糸を引く誰かがいるのだとすれば。
 私を追い出す事を馬鹿みたいな理由以外で狙った奴がいるんだとしたら。
 それを成功させた奴がいるんだとしたら。
 少しは警戒した方が良いと思う。

 あのアホ達相手なら見付かる事すら無いとしても、事情が変わった。
 あまり軽々しく事を考えられないのかもしれない。

 だから流石に色々とはっきりするまでは誰かを泊めたりとかはしない方がいいのかもしれないね。
 何かトラブルに巻き込む事になるかもしれないし。

「ん? どうかしたっすか?」

「何か考え事ですか?」

 どうやら少し悩んでいたのが表情に出ていたみたいで、シルヴィとシズクがそう尋ねてくる。

「うん。返り討ちにするとか言ってすぐこんな事言うのもおかしな話だけど、私達が思っていたのと違う理由で追放されたんだったら、私の自宅って若干危ないんじゃないかなーって思って」

 私の言葉を聞いて、納得したようにシルヴィは頷く。

「ああ、そういう事ですか。確かに少し事情が変わっちゃった感じはしますね。まあ昨日私が泊まりに行った感じだと、全然大丈夫だと思うんですけども……っとそうだ。良い事思いつきました」

 シルヴィが笑みを浮かべて言う。

「勿論アンナさんが良ければなんですけど……アンナさんの家の隠蔽、私も手伝いましょうか?」

「……え?」

 そんな思いもしなかった提案を。
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