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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。
49 聖女さん達、クエストクリア
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「では確認させていただきます……っと、少々お待ちください。おーい、誰か手ぇ空いてる奴で薬草に詳しい奴いるかー? 冷静に考えたら俺薬草の判別とか付かねえんだけどー!」
あ、判別効かないんだ……。
シズクの説明だと、そんな色した草なんてこの世に黄金草しかないって話だけど……大丈夫かなこの人。
新人のシズクでも知ってたよそれ。
「はいはい私見ますよ」
あ、さっきの受付嬢さん戻ってきた。
そして一目見ただけで言う。
「うん、これ間違いなく黄金草ですよ。黄金に光ってる草なんてこの世に黄金草しか無いですから。というかこの辺り周りの知識は依頼が持ち込まれた時に受付嬢皆に共有されてるのに……なんで部長知らないんですか」
「俺が受付嬢じゃないからじゃねえかな」
「……確かに」
確かに。
私達三人と受付嬢さんは全員納得がいったように頷く。
短いながらに凄い説得力だ。
「まあでも今日その受け取りもするって流れになったんなら、あらかじめ誰かに確認しておいてくださいよ」
「……確かに」
確かに。
流石にちょっと失礼かもしれないから頷きはしなかったけど、ごもっとも過ぎる。
「まったく、そういう事は部下に言われなくても気付いてくださいよ。ほんと私達が居ないと何もできないんですから」
「んな事ねえだろ。この前台風来てる中、屋根登って雨漏り修理しただろうが!」
「あ、その節は……何も手伝えなくてすみませんでした」
「お、おう。俺もなんか色々ごめん」
……なんだこの人達。
私達は一体何を見せられてるんだろうか。
「で、私にまだ手伝える事あります?」
「いや、流石に此処から先は俺の仕事だ。大丈夫」
「はーい。じゃあ休憩入りまーす」
そう言って受付嬢さんは再び奥の方へ消えていく。
なんかよく分からないけど、明るい職場なのは分かったよ。
少なくとも私の元職場より空気良いんじゃないかな。
「……さて。では改めまして」
そう言ってクライドさんは私達三人にそれぞれ封筒を渡してくる。
「とりあえずこちらが今回の報酬となります。事前に依頼書に書かれていた報酬額を三人分で割った所に、今回の件の慰謝料として多少色を付けさせてもらってます」
渡された封筒には改めて見ても結構な枚数の札束が詰められている。
いや、なんというか……黒装束の二人と戦った以外は本当に楽な仕事だったんだけど、それでこんなに貰っても良いのだろうかって、謎の良心が痛んで来るんだけど。
……まあ、これを貰わないと困る人がいるから良いんだけどさ。
とにかくこれでクエストクリア!
で……それよりも。
「えーっと……慰謝料って、私達を今回の依頼に送り出した事についてのって事で良いのかな」
正直私達全然余裕だったから、そんなの貰うの悪いんだけど……シズクがなんか大変な事になってそうなのを考えると、その辺はキッチリしてそうだし、多分そういう事なんじゃないかなって思う。
そして予想は的中。
「はい。内半分は送り出した事そのものに関する分ですね。結果がどうであれ、我々が本来危険と判断して止めなければならない依頼へと向かわせた。それは無事に帰ってきたから良かったねで済ませる訳にはいかないんですよ。それが送り出す側の責任という奴です」
「……半分?」
……なんだろ、半分って。
「もう半分は、明らかにこちらの想定している状況を超えた危険度のある依頼になってしまった事についてですね……異常ですよ、今回のような事は。ただ不運でしたねで終わらせられる話じゃない」
……ああ、なるほど。
私達が受けた依頼は、ハーレムパーティーさん達が普通に対象を保護できるレベルの危険度だった筈で……でも実際は生き残る事すら困難な状況に追い込まれる事態になって。
それは自分達で基準を設けて冒険者を送り出している冒険者ギルドからすれば、由々しき事態なんだと思うよ。
そして……だからこそ受付嬢じゃなくて、お偉いさんが前に出てきた。
「そこで……よろしければ今日あった事について、色々と伺いたいのですがよろしいですか? 勿論強制ではありませんが……どうでしょう」
「うん、私は大丈夫だけど……二人は? この後急ぎの予定とかある?」
「元々思ったより早く終わってる訳だからな。俺は全然大丈夫」
「あ、私も大丈夫です。今日は予定何もないんで」
いや、シルヴィは自分に合った枕を探すっていう今日中にやらないといけない大事な予定はあるよ?
自覚症状無いだろうけど、その予定熟さないと私の家泊まるにしてもどこかの宿を借りるにしても大惨事になりかねないからね?
ん……いや、そういえば良く考えてみればステラはシルヴィの寝相の悪さ知らないのか……うわぁ、見せたい。
これは前情報無しで見せたいんだけど!
……まあその辺をどうするかは、後々決める事にして。
私達三人、今日の事の話で多少の時間を持っていかれる事についてはなんの問題も無くて。
「……大丈夫そうですね」
「何処から話せばいい?」
「できれば皆さんがおかしいと思った所からで」
「つまりほぼ全部だ……じゃあ――」
私達は冒険者ギルドに少し協力する事にした。
あ、判別効かないんだ……。
シズクの説明だと、そんな色した草なんてこの世に黄金草しかないって話だけど……大丈夫かなこの人。
新人のシズクでも知ってたよそれ。
「はいはい私見ますよ」
あ、さっきの受付嬢さん戻ってきた。
そして一目見ただけで言う。
「うん、これ間違いなく黄金草ですよ。黄金に光ってる草なんてこの世に黄金草しか無いですから。というかこの辺り周りの知識は依頼が持ち込まれた時に受付嬢皆に共有されてるのに……なんで部長知らないんですか」
「俺が受付嬢じゃないからじゃねえかな」
「……確かに」
確かに。
私達三人と受付嬢さんは全員納得がいったように頷く。
短いながらに凄い説得力だ。
「まあでも今日その受け取りもするって流れになったんなら、あらかじめ誰かに確認しておいてくださいよ」
「……確かに」
確かに。
流石にちょっと失礼かもしれないから頷きはしなかったけど、ごもっとも過ぎる。
「まったく、そういう事は部下に言われなくても気付いてくださいよ。ほんと私達が居ないと何もできないんですから」
「んな事ねえだろ。この前台風来てる中、屋根登って雨漏り修理しただろうが!」
「あ、その節は……何も手伝えなくてすみませんでした」
「お、おう。俺もなんか色々ごめん」
……なんだこの人達。
私達は一体何を見せられてるんだろうか。
「で、私にまだ手伝える事あります?」
「いや、流石に此処から先は俺の仕事だ。大丈夫」
「はーい。じゃあ休憩入りまーす」
そう言って受付嬢さんは再び奥の方へ消えていく。
なんかよく分からないけど、明るい職場なのは分かったよ。
少なくとも私の元職場より空気良いんじゃないかな。
「……さて。では改めまして」
そう言ってクライドさんは私達三人にそれぞれ封筒を渡してくる。
「とりあえずこちらが今回の報酬となります。事前に依頼書に書かれていた報酬額を三人分で割った所に、今回の件の慰謝料として多少色を付けさせてもらってます」
渡された封筒には改めて見ても結構な枚数の札束が詰められている。
いや、なんというか……黒装束の二人と戦った以外は本当に楽な仕事だったんだけど、それでこんなに貰っても良いのだろうかって、謎の良心が痛んで来るんだけど。
……まあ、これを貰わないと困る人がいるから良いんだけどさ。
とにかくこれでクエストクリア!
で……それよりも。
「えーっと……慰謝料って、私達を今回の依頼に送り出した事についてのって事で良いのかな」
正直私達全然余裕だったから、そんなの貰うの悪いんだけど……シズクがなんか大変な事になってそうなのを考えると、その辺はキッチリしてそうだし、多分そういう事なんじゃないかなって思う。
そして予想は的中。
「はい。内半分は送り出した事そのものに関する分ですね。結果がどうであれ、我々が本来危険と判断して止めなければならない依頼へと向かわせた。それは無事に帰ってきたから良かったねで済ませる訳にはいかないんですよ。それが送り出す側の責任という奴です」
「……半分?」
……なんだろ、半分って。
「もう半分は、明らかにこちらの想定している状況を超えた危険度のある依頼になってしまった事についてですね……異常ですよ、今回のような事は。ただ不運でしたねで終わらせられる話じゃない」
……ああ、なるほど。
私達が受けた依頼は、ハーレムパーティーさん達が普通に対象を保護できるレベルの危険度だった筈で……でも実際は生き残る事すら困難な状況に追い込まれる事態になって。
それは自分達で基準を設けて冒険者を送り出している冒険者ギルドからすれば、由々しき事態なんだと思うよ。
そして……だからこそ受付嬢じゃなくて、お偉いさんが前に出てきた。
「そこで……よろしければ今日あった事について、色々と伺いたいのですがよろしいですか? 勿論強制ではありませんが……どうでしょう」
「うん、私は大丈夫だけど……二人は? この後急ぎの予定とかある?」
「元々思ったより早く終わってる訳だからな。俺は全然大丈夫」
「あ、私も大丈夫です。今日は予定何もないんで」
いや、シルヴィは自分に合った枕を探すっていう今日中にやらないといけない大事な予定はあるよ?
自覚症状無いだろうけど、その予定熟さないと私の家泊まるにしてもどこかの宿を借りるにしても大惨事になりかねないからね?
ん……いや、そういえば良く考えてみればステラはシルヴィの寝相の悪さ知らないのか……うわぁ、見せたい。
これは前情報無しで見せたいんだけど!
……まあその辺をどうするかは、後々決める事にして。
私達三人、今日の事の話で多少の時間を持っていかれる事についてはなんの問題も無くて。
「……大丈夫そうですね」
「何処から話せばいい?」
「できれば皆さんがおかしいと思った所からで」
「つまりほぼ全部だ……じゃあ――」
私達は冒険者ギルドに少し協力する事にした。
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