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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

48 聖女さん達、帰還

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「さてと、到着だね」

 あれからしばらくして、私達は冒険者ギルドの前へと戻ってきていた。

「えーっと、とりあえず目的の品を受付に持ってきゃいいんだったっけ?」

「そうですね。依頼を受けた時と同じ感じで受け付けてくれる筈です」

 と、そんなやり取りをしながら冒険者ギルドの中へ。

「お、無事戻ってきたっすね。ボクの見込み通りっす!」

 そんな私達を出迎えたのは、なんでか分からないけど入り口付近のベンチに座っていた色々と心配なシズクだった。

「うん、見込まれた通りちゃんと仕事してきたよ」

「じゃあとりあえず受付カウンターへどうぞっす。ああ、今回色んな意味で特殊なケースになるっすからね、一番端の方の受付に行って貰えるっすか? その内三人共帰ってくると思って空けてあるんすよ」

「特殊なケース……ね」

 多分私達が向かった北の山方面が異様な事になっているのは、ハーレムパーティーの皆さんが説明してくれてるだろうし、それに……なんというか、依頼を受ける段階から特殊なケースだったよね」

「あのその前に……大丈夫だった?」

「え、ボクっすか?」

「うん……なんというか、私達の無茶を半ば無理矢理通してくれた訳じゃん」

「ああ、その件っすね」

 そう言ったシズクは一拍空けてから……視線を反らして言う。

「……その件はまた後でで良いっすか」

「あ、うん……分かった」

 分かったよ……これ絶対何かあった奴じゃん。
 そして予想は付いたけど、シルヴィとステラも無茶苦茶気まずそうな表情を浮かべている。
 うん……き、気まずい。

「じゃ、じゃあボク此処で待ってるんで、向こうのカウンターへどうぞっすよ」

 改めてそう言うシズクの声には全く覇気がない。
 あの、まだ具体的に何も話効いてないんだけどさ……その……ごめんね。

 と、心中で割と必死に謝りながら、促されるように一番端のカウンターへ。
 そこで別の受付嬢さんが待っているものだと思ったんだけど……現実は違った。

「お待ちしてました。話はおそらくお三方の保護を依頼したSランクの冒険者パーティーの方々から聞伺っております……本当に無事で戻ってきてくれてありがとうございました」

 そこに居たのは私達を見るなりに立ち上がって、深々と頭を下げた金髪で黒スーツ黒サングラスで巨体な、堅気じゃありませんと言われたら納得するような風貌の男が立っていた。

「え、えーっと……」

「受付嬢……っち感じじゃねえよな」

「ぎ、ギルドの方ってのは分かるんですけど……えーっと……」

 困惑する私達三人に男は言う。

「申し遅れました。私は当冒険者ギルドの施設運営部部長をやっております、クライド・エバンスと申します」

「あ、ど、どうも」

 なんだかよく分からないけど、お偉いさんって事は分かった。
 風貌凄いのにえらく腰低いよこの人……なんというか、社会人って感じだ。

「ウチの馬鹿……いや、今回の依頼を受け付けた者から話は伺っているとは思いますが、今回は色々と複雑な事情が絡んでいる為、私が本件の処理と……諸々の事を担当させて頂く事となりました」

 今一瞬素が漏れたね。

 と、そんな素を漏らしつつもクライドさんは言葉を続ける。

「さて、まず改めてになりますが……無事戻ってきていただきありがとうございました」

 そう言って改めて頭を下げてくるクライドさん。
 ほ、本当に腰低いよこの人。

「あ、頭上げてください」

「ほら、俺らどちらかというと普通は無理な依頼をゴリ押すつもりで持ってきた訳だからさ」

「そ、そうだよ。何かあっても私達の自己責任って感じで……えーっと……」

 私達がそんな風にやや困惑していると、手が空いていた隣のカウンターの受付嬢さんが言ってくる。

「ほら、あなた達が無事戻ってくるかどうかでシズクちゃんの処遇が結構変わってきちゃうからさ、いくらSランクの冒険者パーティーさん達からの報告が有ったとはいえ心配してたのよ」

「ちょ、おい、余計な事言うな。それじゃあまるでコイツらの心配はしてねえ見てえだろうが!」

「はいはい、お客さんにコイツらは無いですよ。いっつも私達には色々厳しい癖に自分は無茶苦茶なのどうにかした方がいいんじゃないですか?」

「お前が口挟まなきゃうまくやれてたよな俺。つーかいつもなんだよ上司にその口の利き方は! 俺だから良いが上層部のお偉いさんにそんな口聞いたらお前……」

「いやいや、部長じゃなきゃこんな口聞きませんよ」

「お前はっ倒すぞ!」

「うわーパワハラだー」

 そう言って隣の受付嬢さんはそそくさと自分の席からいなくなっていく。

「ったく、どいつもこいつも俺の事舐めやがって……っと、すみません。では話を戻しましょうか」

 ……なんかアレだね。
 一悶着あったおかげで、明らかに堅気じゃないけど腰低すぎる良く分からない人から、近所の気のいいチンピラ風の兄ちゃんみたいな印象に変わってきた。
 これは割り込んできた受付嬢さん、中々ナイスなアシストしてたのかもしれない。
 ……まあそれはともかく、話しやすい印象を持てるようになったところで。

「そうだね。あ、これ採取以来の黄金草」

 話を戻そうか。
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