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一章 聖女さん、追放されたので冒険者を始めます。

44 聖女さん、ついでのように薬草採取

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 改めて今回の依頼についておさらいしておこうと思う。
 この山のドラゴンの巣の近くで極めて少数だけ採取できる、万能薬と呼ばれる程の薬草。
 通称、黄金草の採取。

 ……うん、これだね。
 金色に光ってるし間違いない。これが目的のブツだよ。

「うーん。見付けた事自体は良い事な筈なんだけど……なんだろう、すっごいモヤモヤする」

 いや、さ。一応これ私達の冒険者としての初仕事だった訳だよ。
 それがなんというか、本来の目的とは全く関係の無いトラブルに振り回されていたら、ついでに見付けちゃいましたって感じで……えぇ。
 すっごく締まらないというか、これでいいの?
 なんか達成感が全く沸かないんだけど……。

「……まあ採取するけどさ」

 イマイチ腑に落ちないけど、とりあえず結果オーライって事で前向きに考えよう。
 実際此処で偶然見つけた事で、私達に不利益な事は全くないんだから。
 ……むしろ結果論だけで言えば、此処に生えていて良かったと考えるべきなのかもしれない。

 結局、黒装束の二人の目的は謎で、そしてきっとその謎の目的の過程でこの山は異様な状況になっていて。
 ……その事を冷静に考えれば、ただでさえ希少な黄金草がちゃんと生えているかも分からなかった訳で。
 だから、これで良かったと思うよ。

 そんな事を考えながら、早々と黄金草の採取を終える。
 少数を採取してくれば良かった今回の依頼だけど、求められている必要数よりも多い位にはこの場所に黄金草は生えていた。
 だからちょっと作業すれば規定数は簡単に超えた。

 うん、薬草絡みの事は本当に簡単に終わっちゃったよ。
 ……終わっちゃったなぁ。

「……さて」

 図らずしも薬草採取が終わっちゃった訳で、此処に私一人で立っている理由なんて無い。
 二人と合流しようと思う。
 とりあえずさっきの場所に戻って……ってちょっと待った。

「なんか二人共移動してそうだよね」

 あの黒装束の女の子は明らかに誰かとの戦闘を終えた後だった。
 そしてあれだけの強さを感じさせる相手を気絶寸前にまで追い込めるのなんて、高確率でシルヴィやステラに決まっている。
 だからきっと黒装束の女の子と激闘が繰り広げられていた事は容易に想像できて……そうなったら元の位置にそのまま居るなんて大人しい戦いにはならないと思う。
 だから何処かに移動してると思う。

 ……ていうか二人共大丈夫だよね?
 あの黒装束の女の子、意識った持って出てきたけど、二人共やられてないよね?

 なんだかすごい不安になってくるんだけど。
 ……いや本当に大丈夫?

 し、心配だし早い所合流を目指そう。
 ……とりあえず合図を送ろうかな。
 闇雲に探しても入れ違いになりそうだし、向こうから合図送ってくる気配も無いし……一応高所からは結構下りて戦ってた訳だから、飛ばなくても二人ならこれるでしょ。

 そう考えながら魔術を発動させる。
 こういう時に私が使うのは結界の聖属性魔術の応用だ。

 結界を強度とか無視して馬鹿みたいに空高く長く伸ばしていく。
 それを視認しやすいような色合いで着色。とりあえずそうだね……レインボーにしておくか。
 目立つでしょ。派手だし。

 それをすると出来上がる……地上から空に向かって生える虹のような何か。
 私が此処にいるという目印で……あと、こういうのを作れる位には大丈夫な状況ですよっていうサイン。

 シルヴィやステラなら私のやっている事が無駄に難易度が高くて、片手間で出来るような事じゃ無いという事が分かる筈。
 こんなの余裕が無いとやってられない。

 というか本当にしんどい! なにこれ!?
 維持するのも大変だけど、この無駄にレインボに光らせてるのが死ぬ程疲れるんだけど!?
 誰だよこんな馬鹿な事を軽い気持ちでしようと思ったの私だったよ!
 十数秒前の私をぶん殴りたい!

 ま、まあこういうのをこっちから出せば、打ち合わせとかはしてないけど向こうもサインを出してくれるかもしれない。
 この場所では空を飛べる私が一番機動力があるから、効率的に私が向かった方が早い訳だし。
 そもそも私がこっちの狙撃主潰して戻ってくるような流れだった訳だから、私から動くのが自然な流れなんだよね。

 というかマジで合図出してくれないかな。
 早いところ二人の無事を確認したいんだけど。
 ……それだけ今回の相手はヤバい奴らだったしね。

 と、心配していると。

「お、なんかそれっぽいの出てきた」

 視界の先に狼煙のような物が上がっている。
 何かを燃やして煙上げてるのか、それとも直接魔術で煙を出しているのか……とにかく多分ステラじゃないかな?
 だとすればとにかくステラは無事。
 ……シルヴィも一緒だといいなぁ。

「……よし」

 それがあがれば、もう此処に留まっている理由はない。
 こんなアホみたいな前衛的アート作品を維持し続ける必要も無い。
 私はすぐさまレインボーな結界の柱を消滅させる。

 ……早く二人の所に向かおう。

「行くか」

 そうして私は走り出し崖から跳躍。
 そのまま風を操り空へと飛び立つ。

 一応は周囲を警戒しながら。
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